今さら聞いてもいいIT用語 #22: 「ERP」

ERPとは「Enterprise Resource Planning」の略で、日本語では「企業資源計画」と訳されます。

なんだそりゃ?という感じですが、企業が持つ資源、つまり「ヒト・モノ・カネ」が、いつ・どれだけ・どこにあるかを可視化し、効率よく使うための考え方をいいます。

この考え方を実現するには、「データ」が重要で、そのデータを集めて、可視化するには、システムが必要。それを具現化したものがERPシステムといいますが、このERPシステムを今では単純にERPというようになってきています。

たとえば、営業部門で商品が売れて売上が上がったとき、営業さんは売上管理システムに入力します。しかし、その情報は経理システムにも入力が必要なので、経理部門も必要としています。データを渡すという作業が必要になります。また、在庫にも動きがあるので、製造部門もそれを必要としていて、工程管理システムにも入力しなければいけません。

このようにシステムがバラバラだと、資源の状況をいっぺんに把握できなかったり、タイムラグが生まれてしまったりします。

経営会議が月1回で、それも締まってからだいぶ時間が経ったあと…ということが起こり得ます。

ちなみに、少なくない小規模事業者はこれをExcelでやっているのではないかと思います。

これらすべてのシステムを統合して、一元管理することで、資源の状況を、素早く可視化しようという考え、またはそれに用いるシステムがERPです。

ERPを作るには主に2つの方法があります。

①ERPパッケージ
必要であろう機能があらかじめすべてパッケージングされたERP。多くの顧客に同じパッケージを販売するのでコストが安く済みますし、ありものなので導入期間が少なくて済みます。

また、多数の企業にひとつのパッケージを提供するわけですから安定性や、良いアップデートが頻繁に行われることも期待できます。

②フルスクラッチ
ゼロからすべてを作る受託開発型のERP。コスト、導入期間、安定性、アップデートについてはパッケージに劣りますが、自社独自のERPを自由に構築できます。

さて、これに関連して、4月に発生した江崎グリコのERP移行時のシステム障害のニュースを紹介します。

4年がかりで構築したERPへの全面的な移行を実施したところ、切り替えに伴うシステム障害が発生。全国の物流センターで出荷業務に遅滞が生じてしまいました。

「プッチンプリン」をはじめとする同社製品と、同社が物流・販売を請け負っていた他社チルド食品の出荷ができなくなり、正常な出荷再開まで少なくとも2か月を要すると報じられました。

ERPの導入失敗で大きな損害が生まれてしまいました。

導入しようとしていたERPは、ドイツの大手ERPパッケージメーカーSAP(エスエーピー)社のもの。

もともと完成品のERPパッケージの導入で、なぜ「4年がかりの構築」が必要で、なぜ失敗をしてしまったのか、わかりますか?

これはSAP社製ERPに限らず、よくある話なのだそうですが、ERPパッケージが自社の業務プロセスに合わないときがあります。

業務をERPパッケージに合わせるという選択肢もあるのですが、少なくないケースで、自社の業務に合わせてERPにアドオンと呼ばれる追加開発やカスタマイズを施してしまうのだそうです。

その結果、その追加開発部分の障害、もしくは、ERPパッケージ本体とのデータ整合性が採れなくなることの障害が発生しまうリスクが上がってしまうのです。

SAPのクリスチャン・クラインCEOはこのように伝えています。

「変化への抵抗は複雑な業務プロセスを生み出し、その結果、アップグレードに高額な費用のかかるERPを生み出す」

業務プロセスを変更して、ERPの良さをそのまま味わってほしい、そういうメッセージです。

業務をERPパッケージに合わせると、これまでのやり方を変えるため現場には負荷がかかります。場合によっては、研ぎ澄まされてきた自社の強みをスポイルしてしまうかも知れない。

しかし、一方で安易にアドオンやカスタマイズに頼るなら、コストの増加、システム障害のリスクの増加、アップデートの恩恵に預かれなくなるといったデメリットも多く発生します。

「ERPを安く実現できる、でもアドオンがあるので業務を変えなくてもいい」と甘い言葉で提案してくるERPベンダーもいるらしいですが、そんなにうまい話はないのです。

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