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【サッカー考察論②】「サッカーのトレーニング」を構造的に考えるということ。


皆さんこんにちは。西田です。

今回は私がバルセロナの指導者学校で習ったこと、及び、サッカーのトレーニングプロセスについて書かれいた論文を参考に、トレーニングメニューを考えるときに考慮する事、その定義や区分などについて書いてみたいと思います!最後まで読んでいただけると幸いです!

そして、まだ前回の記事を読んでいない方がおられましたら、こちらも今回の記事に関連する内容になっているので、読んでみてください!



【プレー(Juego)を構成する構造】

前回書いた記事でも紹介しました、フランシスコ・パコ・セイルーロ(自ら唱えた「構造化トレーニング」によって、FCバルセロナでトレーニングの礎を築いた人物)は、トレーニングを考えるにあたり、以下のよう言っています。

トレーニングは組むにあたり、そのスポーツを理解することはもちろん重要だが、まずは、サッカー選手を一人の人間として理解することがとても重要である。


つまり、私たち指導者はサッカーを理解することはもちろん、まずはサッカー選手を一人の人間として理解しなければならず、そのためには選手がサッカーをする時にどのようなことを考え、実行しているのかを理解する必要があります。
そして、この「プレーを実行する」ことには以下のような要素が関わり、一つの構造を形成していると彼は定義しています。


それは、主に6つの要素から成り立っています。

Juego(プレーする)ことに関わる構造

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左上:条件付き構造
左真ん中:社会的感情構造
左下:コーディネーション構造
右上:認知構造
右真ん中:創造-表現構造
右下:感情的-意識的構造

つまり、このような「感情、情動、情報プロセス、社会的関係、知性」などが相互に関連し合っている構造から、選手たちは常にプレーを行なっているということになります。

そして、この構造を考慮したうえで、トレーニングとは「Situaciones Simuladoras Preferenciales」=「優先的にシュミレーションする状況」のもと作られるべきだと彼は言っています。

Situaciones Simuladoras Preferenciales→


1、そのスポーツにおいて伸ばしたい能力を、試合に似た状況の中で優先的に行うこと。

2、いくつかの他のものより優れた構造、いくつかのシステムの最適化を目指すのに必要な解決策となるような、相互作用する試合の状況に似たメニューを考えること。


さらに、『サッカー選手は常に進化と適応を求めることをやめない人間であるべきであるため、したがって、私たちの考えるトレーニングは、「組織化された全体」(一般システム理論)に焦点を当てなければならない』


このような事が「構造化トレーニング」を行ううえで大切だということですが、これらは、前回の記事でも書いたような「サッカーは、様々な要素が複雑に相互作用し合う一つの構造として捉える」という考えの「構造化主義」への理解がより深まるものになるのではないでしょうか?



【一般的なメニューから専門的なメニューへの定義】

セイルーロが唱える、サッカーという一つの構造、そして、選手らのプレーの実行に関わる構造を見てきましたが、ここからは、バルセロナで定義されている「一般的なメニューから専門的なメニューへの流れ」を紹介したいと思います。

私が学んでいた指導者学校でも、今回の論文の筆者でもあるAlbert Roca(現FC Barcelona フィジカルコーチ)でも同じような定義がなされていたため、バルセロナではおそらく、かなり前からトレーニングの定義、組み方などがしっかりと確立されていたということが伺えます。


 そのAlbert Roca は La tarea(サッカーの練習メニューのことを指す)を次のように定義しています。

La tareaとは、ゲームの状況をシミュレートしたもので、改善したい選手やチームに影響を与えるために、修正や受け入れが行えるものである。
そして、それはコンテンツ(1つまたは複数のエクササイズ)と、その実行に伴ういくつかの条件で構成されており、例えば、繰り返しの回数、強度、休息、実行時に尊重すべき指示などがその条件にあたる。
そして、これらすべての構成要素がゲームに類似しているかどうかで、タスクの特異性のレベルが決まる。

そして、練習メニューは、その状況の特徴の優劣によって、以下のように区別されてます。

a) 汎用性のあるTarea:
負荷の性質と組織は、競技で現れるものとは全く異なる。
例えば、過渡期のサッカー選手であれば、マウンテンバイクで持久力を高めるなど。

b) 特徴を持つ一般的なTarea:
負荷の性質と組織は試合で見られるものと多少似ているが、意思決定は伴わない。
例えば、サッカー場でボールを使わずに行うファルトレックトレーニング(負荷やペースがこまめに変わる)をするなど。

c) 特徴付けられたTarea:
負荷の性質と組織は、試合で見られるものと似ている。これらには、そのスポーツ特有のコーディネーション的要素と明確ではない意思決定が含まれる。
例えば、ジャンプ、コンタクト、ランニング、シュートなど、強さを構成する要素とボールが含まれたテクニカルサーキットなど。

d) 専門性を伴うTarea:
 負荷の性質と組織は、競争の場合と同様。意思決定はより明確になる。
例えば、4対4×3フリーマンのボールポゼッションなど。

e) 競争、試合感のあるTarea:
競争のある内容で構成されているもの。
 例えば、特定の戦術的原則とそのサブ原則を伴う8×8の試合+ゴールキーパー(チーム分けは普段どおり)



【まとめ】

今回はトレーニングに関する構造、理論、そして定義などを論文や授業で学んだことから書かせてもらいました。

スペインが、FCバルセロナやレアル・マドリードのような世界的なクラブや世界的なトップレベルの選手を多く輩出しているサッカー大国と呼ばれている理由には、このような「そのスポーツにとっての適切なトレーニング」という事に焦点を当て、多くの人物によって「サッカーにおける、サッカーのためのトレーニング論」とは何かを考え、確立してきたというサッカーを深く研究した事実があったからではないかとお思います。


参考にさせてもらった論文はこちらになります。


こちらの論文にはまだまだ「サッカーのトレーニング」に関しての面白いことが多く書いてあるので、今後もこのような形で紹介していきたいと思っています。

それではまた次回の記事でお会いしましょう!
最後まで読んでいただきありがとうございました!

Hasta luego!

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