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胃袋

 俺は自らの胃袋を半ば自棄糞にむしりとった。そして、やったこともないペタンクを想像しながら、凡そ1メートル先の泥濘に投げた。胃袋の次に、前頭葉を、そして肝臓を投げて、飽きて、心臓を放った。

 雨雫が屋根から軒を伝って茂みに落ち、或る雨蛙の背中を打った。それに驚いたように蛙は一度跳ねて、次に三度跳ねた。梅雨が木の葉を狙って、自己陶酔的なリズムを奏した。そのタイミングで俺は、やり残した仕事を思い出した。

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