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バイクと三笠とひとり旅

相も変わらずバイクに乗っている。どうやら数年前と比べると大分旅好きな人間になったらしい。
とはいっても僕のバイク旅はとんと無計画で、下手したら当日に「なんかバイク乗りたいな…」からスタートして、そこから目的地を決めたりする。なんなら目的地もないまま4時間くらいバイクを飛ばして、ただただ海を眺めて帰ることもある。同行者がいたら迷惑がられるような雑なプランでも良いし、電車移動じゃ到底行けないような辺鄙な場所にでも行けるし、車移動だったら躊躇するような道にもどんどん入っていける。これくらいの行き当たりばったり具合が心地いい。
伊集院光のエッセイ『のはなし』の「バイクの話」という項に「柄杓でガソリンを撒いてるようなもん」という表現が出てくるのだけど、完全にそれだ。

↑名著。


昨日は横須賀に行って来た。目的は三笠記念館だ。


三笠は日露戦争の頃の日本海軍の戦艦で、紆余曲折を経て今は記念館として保存されている。
中身は殆ど作り変えられているとは言え、ざっと120年前の船にそのまま乗れるんだから面白い。

丁度昼間から始まったガイドの時間と上手く噛み合って、艦内を解説付きで回ることができた。結構三笠については中学時代に読み漁った資料とかで知ってるつもりではあったけど、現地で初めて知ることもあったりして、中々面白い。
機械的な構造は「割と現代でも通用するなぁ」と思ったり、かと思ったら当時の海軍のお偉方は大体が薩摩藩上がりだったりとか、この時代は近代的な要素と大昔の要素が混じり合ってて面白い。
200年間鎖国してた国がたかたが40年弱でロシアに勝っちゃうんだもんなぁ、面白えよなあ。


去年のやつ、パールハーバーにて。

昨年初めての海外旅行でハワイに行った時に、似たように退役後に記念館に改装された米海軍の戦艦ミズーリも見てきたんだけど、これと比較して見てみるのも中々面白い。
三笠の方は1900年代に活躍した鋼鉄艦としては最初期の戦艦で、ミズーリの方は1940年代〜1990年代まで近代化を繰り返しながら活躍していた"最後の戦艦"なので、比較するには好対照だ。

ぼーっと眺めていたら「船の脇の方についてる迎撃用の小さめの砲台」だけど、1900年代の三笠にとって迎え撃たなきゃ行けない相手は魚雷艇で、1990年代のミズーリにとってはジェット戦闘機やり対艦ミサイルやらだ。

三笠のほう。
ミズーリのCIWS。


三笠が活躍しているのと同じ頃にライト兄弟が発明した飛行機は、ミズーリが進水する頃には戦艦を沈められる程の戦力と戦略が生み出されて、ミズーリが退役する頃にはあれやこれやとハリボテな現代装備を積まないとやってやれなくなった。
鋼鉄戦艦を保有して居ることが国のステータスだった大艦巨砲主義の時代からの栄枯盛衰を見届けた気分になって、ひときしり物思いに耽る。

「横須賀に来たんならやらなきゃいけないことがまだあるだろう!」
そう、米軍払い下げの軍服である。

どぶ板通りには、超老舗のミリタリーショップやら、スカジャン発祥の店やらが並ぶ。「モノホンのスカジャンってすげぇ…」とか思ってたら、妙にしっくりくる一着。肩には「USS RONALD REGAN」、原子力空母ロナルド・レーガン配備の物だ。若干前のめりで試着。ビックリするくらいシンデレラフィットだ。僕の体格だと、この手の軍物の古着はサイズが合わなくて寂しい思いをすることが多いんだけど、本当にびっくりするくらいシンデレラフィットだ。

鼻息を荒くしながらセーラー服を購入する男性の誕生である。おい、中学時代の自分、ミリタリー趣味を拗らせるといくとこまで行くぞ。サイドのジッパーがカッコいいんだよ。しょうがないだろ。

帰り際、バイクを走らせたら、近くの自衛隊学校の子達がバス停で立っていた。4月だというのにすっごく日焼けしていて、黒のセーラー服を着ていた。
「所詮おれはコスプレおたくやろうだな。」と思った。
湾岸沿いを走った。4月の潮風は気持ち良かった。
花粉でめちゃくちゃくしゃみをしながら帰った。

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