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プロのエクスプロイト術〜

〜ベッティングサイズを用いたエクスプロイト戦略の構築〜


前回の記事はこちら↓
SB Flat Call 2部作



◇はじめに

現在のポーカーにおいて、GTOwizard等のPresolved StrategyソフトによってのGTO戦略の再現ということを行う学習が一般的になってきています。
一方、エクスプロイト戦略について、明確な根拠が立てづらく感覚値によってしまう戦略への評価が下がっているように思えます。
ポーカーというゲームの性質上、GTOをベースにしたセオリーの動きを把握し再現を求めるのは非常に有効な学習方法です。
さらに、そこに加えてエクスプロイト戦略の構築することがいかに有用なのかを紹介したいと思います。
今回の記事ではGTO戦略を再現することが難しいスポットを作り出しかつ、どのようにエクスプロイトが可能になるかをSolverを用いて、Presolved Strategy学習者とエクスプロイト戦略の架け橋になるように書いていきたいと思います。
このような学習者が増えることを願い、本記事で使うソフトは全てフリーで使用できるものです。


◇特定の条件付によるエクスプロイト戦略例

設定: Cash Game/500NL /ES 100bb 

▽BB vs BTN でのハイペアボード

上記のようなハイカードペアボードを例として取り上げます。
QQ5rのようなハイボードペアの場合、BTNのレンジ全体のEQは約54%ほどを持っているシチュエーションです。
BTN側は、レンジ全体のEQが高いため高頻度で安いCBを打つ戦略を採用するシーンです。
多くのプレイヤーは、この簡易的な戦略が既知のため、Bet33%をほとんどの場面で使ってくるでしょう。では、BTNのCBに対するBBディフェンスをみていきましょう。
条件づけをします。

BTN戦略

BBのDF戦略

BBのDF戦略

特徴的なのは、BBはレンジ全体で21%ほどでレイズを返していることがわかります。
BBのレイズに対するBTN側の反応としては、レンジ全体で3.2%ほどで3betを返しています。


BBのレイズに対するBTN側のアクション

ここで実践のことを考えてみましょう。
BB側のCheck Raiseに対して、BTN側が3betを正しく返せているでしょうか?
そうです、ほとんどの場合、BTNがQのトリップスを形成していたとしても3betを返せる人間はいないでしょう。

つまり、ここで、

「BBのCheck Raiseに対する3betが返ってこない」

と条件づけをすることができます。

まとめると

戦略①
BTN/ Bet33%→ BB/ Raise Pot50% → BTN/ 3bet or Call or Fold

という戦略ですが
戦略②
BTN/ Bet33%→ BB/ Raise Pot50% → BTN/ Call or Fold


という条件づけをするということです。

この条件づけをするために今回はFreeSolverを使います。
下図がFreeSolverでの条件づけ前後の解析結果です。

BBのディフェンスレンジ vs BTN Bet33%(条件づけ前 戦略①)

BBのディフェンスレンジ vs BTN Bet33%(条件づけ後 戦略②)

条件づけ前後のデータをまとめてみました。
BeforeとAfterでみると明らかに、Raise頻度が増加しています。
つまり、
「BB vs BTNでの、BTN CBに対するCheck RaiseにBTN 3betが来ないという条件づけをすることで BBのCheck Raiseが増加する」
ということです。
要するに、こちらのCheck Raiseに対して相手が正しく3betを返せないのなら、Check Raiseするレンジを広げることで相手をエクスプロイトできそうだということですね。
このことより、特定の条件づけをすることで数学的に相手をエクスプロイトすることができます。
では、本当にエクスプロイトしているのかということをEVの観点から確かめてみましょう。
▽EV差
どれくらいExploitできているかEVの変化を見てみましょう。今回BBが実際に持っていたハンドは、As5hでした。Solverで両者がGTO戦略であった場合はCALLが最頻値で、その場合のEVは19.7です。しかしBTNの戦略をこのように条件づけすると、As5hでRaiseをする場合のEVが21.0に上昇し、BTNを簡単かつ強力にエクスプロイトできていることが分かります。
GTO戦略を理解した上で行うエクスプロイトは、究極的に利益を追求するものです。

Before

After


※注意
ここからのプリフロップレンジはGTObase(simple poker社)を使用したため、GTObaseを使用します。

▽SB vs BTN 3BP

あなたは、ライブポーカーにおいて自称ルースアグレッシブというAさんのリークを見つけました。Aさんのリークは、3betが多く、Lowボードであっても全レンジでBet33%を行うという一見エクスプロイトするには難しいとも思えるリークでした。
しかし、Bet33%に対してRaiseをするとさらにRaiseをするように思えません。

このシーンを前述のようなアクションを加味して解析していきましょう。
設定: Cash Game/500NL /ES 100bb

上記のシチュエーションを想定します。
SBが98s4で、Bet33%を全レンジで打ってきました。

Before(条件づけなし)
GTObase Solution

Solver solution

上記が、BTN vs SB の98s4のSolutionになります。

この結果に対して相手の情報を加味して条件づけを行います。

・条件①相手が全レンジで33%CBを使う

・条件② 条件①に加え、SB全レンジ33%CBに対するBTN RaiseにSBが3betを返さない

▽条件①相手が全レンジで33%CBを使う

After①(条件①)

さらに、この条件に加えて「SBは高頻度でFlop3betを返さないだろう」と条件づけをします。

▽条件②SB全レンジ33%CBに対するBTN RaiseにSBが3betを返さない

After②

上記の条件①,②の結果を下記の表にまとめました。

図1

まず、条件①のSBが全レンジ33%CBを行うとした時の結果(After①)をみていきましょう。

▽条件①

条件①において、図1よりFold頻度の減少、Call頻度の増加、Raise頻度の減少ということが分かりました。これはSB側が全レンジで33%CBを打ってきているため、その分BTN側が幅広くディフェンスをしていかないといけないということが論理的に理解できます。
注目するべきはRaise頻度の減少です。SB側が全レンジで33%CBを使っているためナッツ級に強いレンジも存在しています。このことにより、SB 全レンジCBが起因してRaise頻度が減少していることが予測されます。
このように条件づけによりソルバーは構築した論理を数値的・視覚的に証明してくれています。

図2(条件①)

また、図2を使って実際のレンジ変化をみていきましょう。
98s4ボードにおいて、1オーバー、2オーバーカードのようなハンドレンジはFold頻度がかなり多いです。しかし、SBが全レンジCBを使ってきていると条件をつけることによって、DF頻度が多くなることが分かります。
つまり、相手が全レンジCBを使ってきている時は1.2オーバーハンドをDFしていくことができるということです。

次に条件②の 相手が全レンジ33%CB+ BTNのRaiseに対してSB側がRe-Raiseをしない
とした時の結果(After②)をみていきましょう。

▽条件②

条件②において、図1よりFold頻度の減少(18.7%→9.1%)、Call頻度の減少、Raise頻度の増加(11.4%→23.9%)ということが分かりました。注目するべき点は、「Raise頻度が2倍にもなった」ということです。条件①の場合、劇的な戦略差異がありませんでしたが、条件②の場合、かなり戦略差異が現れたと言っていいでしょう。
では、具体的にどのような戦略的変化があったのかを確認していきます。

まず、Raise頻度が11.4%から23.9%に増加した理由としては、
相手SBから3betが返ってこないという条件が起因しています。これは、相手が本来3betをするべきレンジをCallし、それ以外をFoldするということになります。このRaise頻度の増加は、BTN側からするとSBのFoldEQ(Foldさせることで生じるEQ)を求めつつ、こちらのRaiseに対してRe-Raiseが返ってこないため、BTN Raiseに対するFoldEQが生じないことが理由と考えられます。
言い換えると、BTN側は降ろされる心配がないため、Raiseし得ということです。

下図が、Before本来のSB 33%CB→BTN Raise50%に対する、SBのアクションです。
GTObase

Solver

図のようにSBはBTN Raiseに対して、Re-Raiseをかなり幅広くしています。実際のプレイヤーはAQsやAJsを3betに入れていないプレイヤーが多いと感じます。
つまり、実際SBがCall/Re-Raiseを多くの部分で行わないといけないが、Over Foldし3betがこないリークにより、BTNのRaise頻度が増加するということは合理的でしょう。
では、BTN側はSB 33%CBに対してどのようなレンジでRaise頻度を増加させるのでしょうか。

図③(条件②)

図3はBefore/After②です。

これを見るとBTN側は

・SB 3betレンジにおけるAAなどをブロックしているレンジ
・QJ,QTなどのQQ,TTをブロックしているレンジ
・Over ペア
・Top ペア
・Too Weakペア

上記のようなレンジ構成でRaiseをするようです。ここで重要なのは、TopペアがValueとしてRaise、TooWeakペアがブラフとしてRaiseをすることでしょう。

このような条件づけによるRaise頻度の増加は、Flop3betレンジをしっかりと把握していない相手へのエクスプロイトということが言えます。

以上のことより相手へのエクスプロイト戦略を

「条件づけ(Node Lock)することでソルバー的エクスプロイト戦略を組み立てることができる」

と言えます。

このようなエクスプロイト戦略を構築するために、相手にどのようなリークが存在するのか、さらにはもしこうしたら相手は適切にアクションをできるのか、ということを少し考えながらプレイしハンドレビューをするとより上達の助けになるでしょう。

◇まとめ

自分にとって理解が難しい場面は相手にとってもそうなので、相手がどのようにGTO戦略から乖離するかを常に意識することで、最大限にExploitする方法を考えることができます。
これがエクスプロイトへの近道でしょう。
このnoteをきっかけにPreSolved学習からSolver学習への架け橋になれたら幸いです。

自分のプレイしたハンドのアクションだけ見てソルバーを答え合わせのように使うのは学習効率が非常に悪いです。重要なのは局面におけるレンジ全体の戦略をどのように配置するかを常に意識してプレイし、その考え方をソルバーで確認していくことでエクスプロイトを含め上達への近道となります。

・今回使用したソルバー
ばいなりさん開発ソルバー

こちら

(Piosolverを持っている方はPioでnode Lockをしてください。今回の主旨として、フリーでも学習できることを目指しています)

・FreeSolverの設定の仕方

今回の記事は終了です。
今後も様々なスポットにおける戦略考察記事を作成しますので、是非フォローしていただければと思います。最後までご覧いただき、ありがとうございました。




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