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NETFLIX 『NO RULES』に倣った修正的フィードバックの効用

1. はじめに

弊社のValueに「チームから修正的フィードバックをもらおう」という記載があります。この言葉の解釈やなぜそれを重要だと捉えているかを社内用にdoc化すると共に、shizaiに少しでも興味・関心をお持ちの方にもあらかじめご覧いただけたらという趣旨で整理しています。

2. 自己紹介

株式会社shizaiという会社の鈴木と申します。

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3. 導入-『NO RULES』を読んで

NO RULES(ノー・ルールズ) 世界一「自由」な会社

最初に『NO RULES』を読み修正的フィードバックの概念を社内に周知してくれたのはshizaiのエンジニアメンバーの足立さんでした。足立さんは『NO RULES』を読み以下のnoteをまとめてくれています。

前提として私は周囲からフィードバックが欲しいと感じる人間です。 エンジニアメンバーがよく口にしている「you are not your code」という言葉も好きでした。人格否定はしない前提で、とはいえアウトプットに至らないところがあればそこには適切な指摘が極力即時性をもってなされるべきだと考えます。その方が、個々人及び組織の成長を加速させる、という考え方を持っています。一方、フィードバックが「攻撃」と受け取られ、発信者/受信者が感情的になるシーンも時折発生するように思われます。

では「フィードバックすること」は「感情」との天秤によって棄却されるべきかと言われると、否です。フィードバックは自分では想像もしなかった角度で自身の課題を発見しこれをシューティングする機会を提供してくれると考えるためです。重ねて、「感情」は「受信者が感情をおさえる/コントロールすること」によって、あるいは「発信者の属人的なコミュニケーション能力」に依存して管理されるべきものかと言われるとこれも否だと考えます。話者の違いでフィードバックの質が変わる状態が正しいとは思いません。

『NO RULES』に掲載されている修正的フィードバックの概念はこれを仕組みとして体系的に処理することを可能にする手段です。フィードバックの発信者・受信者それぞれに一定の態度/思考変容を求めるものとなりますが、後天的にキャッチアップ可能なスキルとして整理されています。shizaiではこれを組織に実装したいと考えvalueとして採用しており、その目的は上述の通りフィードバックにより「個々人の成長、組織の成長を加速させる」為です。

4. 修正的フィードバックの為の、2つの前提

2つの前提

前述の通り人間はフィードバックをされると自分が攻撃されたとみなす傾向にあり、これを所与とした上でフィードバックを円滑に流通させるために以下2点が前提として組織内に定着していることが望ましいです。

1. 「最大の成長機会は周囲の優秀なメンバーからのフィードバックによってなされる」という考え方。
2. チームメンバーへのリスペクトが根底に存在する状態の維持。

1点目から補足します。
多くのスタートアップと同様、私たちshizaiも成長意欲のある方と一緒にチームを創りたいと考えています。こうした方はおそらく日々自分を成長させる機会を探し、自己成長をしようと「既にしている」傾向があると考えます。この、そもそも成長意欲の高い個にとってより飛躍的な成長機会が提供されるのは、

(a) 自分では想像のつかない角度から課題点を指摘されるケース
(b) そうした課題に遭遇する未体験ゾーンに進出するケース

等だと考えます。 (b) はスタートアップが不確実の高いゲームであるという前提からその環境に身を置けば遭遇しやすいケースであり(あくまでも遭遇し”やすい”のであって約束されたものではありません。)、(a) はチームメンバーを含めた周囲からのフィードバックによってもたらされ得るものです。これを最大限活用することが個にとっても組織にとっても望ましい状態であると考えます。

2点目は言葉にしてみれば当たり前ですが実行には成熟した精神性を要求するものと捉えています。チームメンバーを1人の人間としてリスペクトしているという相互認識を、維持する必要があります。重要なのは”維持”です。事業がうまくいかないとき、自分がストレスフルなときであっても相手へのリスペクトを維持できるでしょうか?なかなかむずかしいことだと思います。しかしこの前提がチームの中で深く浸透していない限り、フィートバックがポジティブに回る可能性は下がるでしょう。

この2点がチームの根底にあって初めて、フィードバックは攻撃ではなく「自分のために他者が支援をしてくれている」という認識のもとに受け取られる素地が整います。

5. 修正的フィードバックを成立させる4つの「A」

4つのA

では具体的なフィードバックシーンで発信側と受信側はどういった態度で向き合うべきでしょうか。『NO RULES』はこれを「4つのA」という表現で鮮やかに言語化しています。※以下、本文抜粋したものに一部事例を追記。

発信側への要求

1. Aim to assist(相手を助けようという気持ちで)※事例はshizaiで記載
フィードバックは前向きな意図をもって行う。自分のイライラを吐き出すため、意図的に相手を傷つけるため、あるいは自分の立場を強くするためにフィードバックをすることは許されない。相手自身あるいは会社にとってフィードバックがどう役立つのかを明確に説明しよう。

NG例「外部パートナーとのmtg中あくびをするのはやめたほうがいいよ!」
OK例「外部パートナーとのmtg中あくびをするのを辞めた方がパートナーは貴方のことをよりプロフェッショナルにみるかもしれない。是非試してみてください!」

2. Actionable(行動変化を促す)・・事例はshizaiで記載
フィードバックはそれを受けた相手が行動をどう変えるべきかにフォーカスすべき。
NG例「テストコードのないコードは最悪だ!」
OK例「テストコードを追加して堅牢にしましょう!」

受信側への要求

3. Appreciate(感謝する)・・原文ママ
批判されると誰だって自己弁護や言い訳をしたくなる。反射的に自尊心や自分の評価を守ろうとする。フィードバックをもらったらこの自然な反応に抗い、自問しよう。「このフィードバックに感謝をしめし、真摯に耳を傾け、とらわれない心で相手のメッセージを検討し、自己弁護をしたり腹を立てたりしないためにはどうふるまったらいいのか」と。

4. Accept to Discard(取捨選択)・・原文ママ
あらゆるシーンでフィードバックを受けたとしても、常にそれに従う必要はない。心から「ありがとう」と言ったら(=つまり、「受け止め」たら)、受け「入れ」るかどうかは本人次第だ。それはフィードバックを与える人、受ける人の双方が理解しておかなければならない。

運用していて、2(Actionable)が特に重要だと感じます。2(Actionable)は発信者が受信者の行動まで具体的に想起する必要がある点で一定の思考を必要する他、相手のおかれた立場に対する理解/洞察も求められる点で他に比べて複雑性が高い感覚があります。

6. shizaiでの運用

ここまでは書籍の記載に準じた整理ですが、以下にてshizaiで実際に運用する際に特にケアしている点について触れます。

創業者が率先してフィードバックを求める。
フィードバックに限らずvalueや行動指針全般に対して言えることですが、言葉が存在しているだけだと組織内での体現につながりません。それゆえshizaiでは創業者自身がメンバーにフィードバックを頻繁に求めるスタンスをとっています。(個別mtg・1on1などいつでも)。やや瑣末なことではありますがフィードバックを求める際のニュアンスも重要に感じています。「何かフィードバックない?」では有益なフィードバック機会につながりません。「XXXさんの目線で、鈴木がもっとこうしたらよくなる/法人に今足りていないと思うことはありませんか?」など、前向きな意志を持っているスタンスを伝達できる方が機会を最大限活かせる実感があります。創業者/マネジメントメンバーほど裸の王様になりやすいとも思います。誰の意見にも成長のヒントがあると考える方が得でしょうし、組織にも良い空気を生むと考えています。

創業者がフィードバックされた内容をどう受け止めたかオープン化する
極力メンバーからもらったフィードバックやそれを自分がどう受け止めたか開示しています。(4AのAccept to Discard(取捨選択)の観点で、Discardの場合も開示します。)フィードバック内容やその受け止め方を開示することの価値は、組織全体のフィードバックループをより高速化していくことにあります。創業者が、自分が受けたフィードバックを開示することで「自分もやってみよう/自分が受けたら4Aを意識してみよう」とメンバーが思考する頻度があがる感覚があります。

発信側は相手をリスペクトしているという前提を声にする
「前提に相互リスペクトがある」とはいえ、声にして相手に伝えることを推奨します。心底にリスペクトがあっても相手には伝わらないケースもありますし、多忙な時ほどフィードバックが攻撃と受け取られやすくなります。
※もし相手へのリスペクトを口にできない場合は自分が感情的になっていることをメタ認知する良い機会かもしれません。

発信側は発信前に自身が感情的でない状態を作る仕組みを用いる
「4A」と並んで重要なこととして、発信側が感情バイアスを排除することが挙げられると思います。受け手が「これは支援だ」と感じるには、怒りをはじめとする負の感情を0に近づける必要があります。発信者が感情を排するためのhowをいくつか記載します。

  • それは賞賛されるフィードバックか

あなたのフィードバックが全社にも開示されたとしたら、そのフィードバックは受信者を支援する素晴らしいフィードバックだと賞賛されるでしょうか? yesなら問題ないです。noであれば4Aを意識した再設計をしましょう。

  • 受信者の良いところも1:1で想起する

あなたがフィードバックをしようとする場合、おそらく受信者に「足りない何か」を伝達するはずです。しかし、受信者の日常的なパフォーマンス全体を俯瞰すれば素晴らしいスキルもみえるでしょうし、あなた自身が助けられたシーンも想像できるのではないでしょうか。フィードバック時点では焦点が短期/足元の事象、に偏ります。受信者の全体像を俯瞰し良い面も1:1で理解したうえで、”支援”をする目的にたちかえりましょう。(メンバーの素晴らしい面、メンバーに助けられたシーンをメモしておき、フィードバックする前に読み返すと1:1に持ち込みやすい体感があります。)

また非常にシンプルなことですが「一回寝てみて、翌日フィードバックしてみる」などはクリティカルだと感じます。寝て起きたら意外とフレッシュな気持ちで、前向きにフィードバックできることもあります。(目が覚めてみてフィードバックするコトが思いのほか無いとなれば、昨日時点ではその場の感情だけだったということかもしれません。)

7. 注意/留意

以下は事象として発生したものではありませんが周辺情報からみる注意/留意点です。

共感性が高いリーダーは注意
最近みた記事で興味深いものがありました。

相手への共感度が高いリーダーほどフィードバックを行うことに負担を感じやすいという内容でした。こんなこと言ったら相手が傷つくのではないかという思いが発生するとそれをコストに感じるのかもしれません。「相手が傷つくかもしれないと考えてしかるべきフィードバックをしないのは本当の優しさではない」といった最もらしい反論もありそうですが、人によって共感力・感受性は異なりますしそう単純な話でもないと思います。shizaiとしてはこうした個別性を理解しつつも、組織全体として修正的フィードバックの流通量/速度を向上させ、個人・組織が成長しつづけられるような仕組みにしたいと考えています。

フィードバックすることに酔わない
フィードバックを良しとするカルチャーによって、フィードバックが乱用される状況には注意すべきだと考えています。どれだけ注意してもフィードバックは攻撃に受け取られる要素をもった諸刃の剣であるという認識でいたほうが適切です。フィードバックをすることが目的化したり、フィードバックをする自分に酔ったりするメンバーが生まれることを抑止する必要があるでしょう。目的は相手の支援であって発信者の心地よさを満たすものではありません。正常な4Aの運営がされていれば避けられる事象ですが、気をつけて運用していくべきでしょう。

8. 最後に

長くなりましたが、まだshizaiでもvalueにいれたばかりなので実行しながら改善/最適化を続けていくものとなります。理想的な運用となるようチームでトライしていきたいですし、さまざまな意見を取り入れながら最適化していきたいです。今回掲載している「修正的フィードバック」にも触れた形で、shizaiのrecruit deckをまとめています。事業・組織の詳細がございますのでぜひご覧いただけますと幸いです。

ご覧いただいた方、ありがとうございます!

NO RULES

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