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「ほしい」の吠え声

ある日、子どもたちが大福を取り合っていた。
はじめにあったのは、草大福がふたつ、豆大福がひとつ。10才の姉はまず草を取った。5才の弟は豆を取った。
そして、残りの草ひとつを巡って争いになった。

なぜそんなことで毎回もめるのか、と思う。
「また今度食べられる」とは考えないのは分かる。彼らはいつも、その瞬間に集中しているから。しかし、うちでは普段、大福は花形のお菓子ではないのに、なぜ。
競争相手がいることで、気持ちに火がつくのかもしれない。

ところで、私は今、新しいネイルカラーを買いたいと思っている。
その品物は、SNSで発色がよいと紹介されていた。ブランドサイトを見てみたら、すぐにいくつかほしいカラーが見つかった。ただ、プロユースということで、手持ちのネイルより高価だ。

ほしいけど、どうしようか…

自分の中で、買わない理由を探してみる。

ついこの前、いくつか買ったばかりじゃない。そんなに必要?だいたい、その色、仕事につけて行けない。週末にだけ塗るようなマメなことする?

しかし、ほしい気持ちを抑えることは難しい。「ほしい!」という吠え声が、背中あたりで猛り狂っている。ぐいぐい押してくる。否定的な声はだんだん小さくなる。
ほとんど購入ボタンを押しそうだった。

その時思った。
あの子たちも、取り合いをしている瞬間、こんな気持ちかもしれない。

私の競争相手は、「我慢させようとする自分」だ。それが無駄遣いであることを論証しようとする自分の声。それに対し、所有の満足感を得ようとする「ほしい!」。

そして、私がそのネイルカラーをどうするかというと、来月まで保留にすることにした。ほしい色の画像を毎日眺めては、楽しみにしている。

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