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セラーノ通り

毎日よく晴れて、乾いて、少しほこりっぽくて、いつまでも暑い日が続くかと思っていたのに。
秋は突然やってくる。
それはマドリードでも同じらしい。

夏休み最終週の息子と、考古学博物館へ出かけた。
前日、マドリードは久しぶりに雨が降った。その前の晩から明け方にかけて、雷が鳴り響き、眠れないほどだった。今朝もまだ断続的に降っていたが、出かける前にやんでいた。

博物館の最寄りであるセラーノ駅で地下鉄を降り、狭い階段を登って地上に出る。
すると、雨上がりの透きとおった空気があった。
青空の下で、すべてがさっぱりとしている。店の看板一つ一つ、街路樹の葉一枚一枚に、ごく薄い青のベールがかかっているみたいだ。
それにしてもこの透明感はなんだろう、と考えて、きっと光が弱いのだと気づく。太陽が力を失った。
秋だな、と思った。

コロン広場で、そこを通りかかる時はいつもそうしているように、息子が走り出す。巨大なモニュメントの石段を登ったり降りたり、飛んだり跳ねたり。
彼の気が済むまで待つことにして、私は段の端に腰掛ける。セラーノ通りのプラタナス並木の影になっている。見上げると、黄緑の葉をすかして木漏れ日がまぶしい。
秋はこのきらめきから始まると思う。

博物館では、息子は古代エジプトの展示を熱心に見ていた。神々の絵やブロンズ像を前に、私は一つ一つ説明を読んで名前と特性を説明した。太陽神ラーについてのアニメーションがあった。ラーは昼間は船に乗って天空を旅し、夜は羊に姿を変えて冥界のオシリス神の元へ向かう。そして、日の出とともにコガネムシの姿で再び地上に現れる。
エジプトの太陽がどんなものか知らないが、太陽を中心に考える古代エジプトの感覚に、今日は素直に共感した。1日も1年も、太陽の変化で巡っていく。

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