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【インタビュー】僕は占いで問題提起しかできない

ニシーさんの占い(≒U)は楽しい。話すといつも元気が出て、自分らしさを取り戻せるような時間になる。そんなUの魅力やおもしろさを伝えるべく、#占う男・ニシーさんにインタビューしました! (編集・執筆:はとだ



ニシー(西井鏡悟/kyg)は3ピースロックバンド・STAN(スタン)の元ボーカル&ギター/ソングライター。1999年結成、2005年にメジャーデビュー。FUJI ROCK FESTIVALなどの大型ロックフェスにも出演。2011年に活動休止した。

2018年春から“#占う男”として活動開始。ニシーがバンドのフロントマンから#占う男になるまでを綴ったnoteはこちら



占いで何かを当てることに重きを置いていない


――STANでのバンド活動や会社員経験を経て、2018年春から“#占う男”として活動しているニシーさん。「いまどんな活動をしていますか?」と聞かれたらどう答えますか?

ニシー:「占い師っぽくない占い師をやってます」と答えます。SNSで宣伝して依頼を受けてどこかで落ちあって占う、またはオンラインで占う、というスタイルでずっとやっています。やっていることは命術とタロットなので普通に占いっぽいのですが。でも、かなり占い師っぽくないスタイルで活動してるな、と思うんです。
世間でイメージされるようないわゆる占い師を目指していないですし、あと、占い師というジャンルの方も僕をカウントしないんじゃないか。その両方の気持ちがあります(笑)。

――ニシーさんが思ういわゆる占い師とはどんなもの?

ニシー:テレビで占い番組ってあるじゃないですか。そういう番組が求める占い師の所作ってだいたい決まっているように思うんです。例えば「あなたはこういう星のもとに生まれたので、何年後にこういうことが起こります!」とか、何かを言い当てるような占い。それは世間が持つ占い師に対するイメージ通りにやっていて、仕事としては立派だと思うんですけど、僕はそれを目指してないんです。
占いとか占い師に対する世間のイメージや偏見ってすごいんですよ。例えば僕が「占いやってるんです」と言うと「へぇ、占いやってるんだ〜!」って結構盛り上がることがある。でも逆に「え、この人大丈夫......?」みたいな目をする人もいる。そういう極端な反応があることは最初からわかっていましたけどね。もちろん僕のことを昔から知ってる親しい人達はそんなことありませんが。
僕がやっていることは、一般的にイメージされる占いとか占い師という像とは、結構違うと思います。2018年に#占う男を始めてからそこは変わってないです。だから僕は占いのメインストリームにはいない。超どインディーズ!

――超どインディーズ(笑)。

ニシー:ちなみに、テキトーな服を着ているように見えるかもしれないですけど、なるべく占い師と思われないような服を着たいんですよ。占い師っぽい服装ってあると思うんです。そういう服装の占い師の知り合いもいますし、ディスりたいわけじゃないんですけど。僕の服装は「めっちゃ普通じゃん!」みたいな(笑)。「隣のお兄さんみたいな」と言われたこともあります。
「なんかおもしろそうな、普通じゃない変な占い師いないかな?」と思っている人や、ストレンジな興味を持っている人にとっては、僕みたいなタイプはおもしろいかもしれないです。

――わたしもそのひとりです。ニシーさんは自身の占いのことを「U」(ユー)と 表現していますね。

ニシー:1年くらい前から言いはじめて、模索しているアイディアの一つです。 占いという言葉が世間に想起させてしまうイメージを回避するために、ローマ字の「URANAI」の頭文字をとって「U≒(ニアリーイコール)占い」と言っています。僕は占いで何かを当てることに重きを置いてないし、世間がイメージするような占い師ではないので、自分のことを占い師と名乗っちゃダメなのかもって思ったんですよ。名乗ることでほかの占い師の人に迷惑がかかるし、自分としてもいわゆる占い師になりたくないわけだから。なるべく占い師や占いって言わないようにしよう、という意図があります。


Uは「その物語をどう生きるか」を問うファンタジックな作業


――いまのお話に出てきた「当てることに重きを置いていない」に、Uの独自性がありそうです。

ニシー:僕は「何の星が何座にあるときは、こういうふうに言われています」という定説は話すけど、それは当てようとしているわけじゃないんです。ある意味、占いってその人が何を求めているのかを本人に気付いてもらう作業だと思ってるんですよ。僕も含め、誰もが自分がどんな人間で、何をやりたくてどうやって生きていきたいのかをたぶんハッキリとはわかってない。だけどホロスコープや命式から言えることはある。そこから描き出される物語をどう感じるのか。どう生きるのか。しっくりくるのか。反発するのか。それを問うファンタジックな作業をやっているんです。
僕はよくお客さんに「占いを信じすぎるのはよくないですよ」と伝えるんですけど、それは、一番重要なことはお客さんが元気になったり勇気を持てたりすることなんだと思っているので。

――「その物語をどう生きるか」を問うファンタジックな作業という言葉に納得です。わたしはコーチングを学んでいるので、問いのパワフルさを実感しています。

ニシー:昔R.E.M.(アール・イー・エム)というアメリカのバンドがいたんですけど、ボーカルのマイケル・スタイプの言葉にこんなものがあるんです。「ロックにできることは問題提起だけだ。」僕がやってることも一緒だと思ってるんです。僕は占いで問題提起しかできない。つまり、問いですね。本で読んだ言葉だけど、「正しく問いを立てた人は、ほぼ答えを見つけたようなものだ」と。重要なのは正しく問いを立てることだと思っています。イメージとしては、ホロスコープや命式を用いながら「あなたはどうなったら楽しくなる?」「どうしたら幸せになれる?」という問いをひたすら投げかけている感じなんですよ。


「実際のところ、君はどう?」と深部へ掻き分けていく


――Uを受けたことがあるのでそのイメージは伝わってきます。まだ受けていない人に向けて、どんな対話をしているのか具体的な例を聞かせてください。

ニシー:例えば、ホロスコープで金星が牡牛座や天秤座の位置にあるのは結構いい配置と言えます。金星は恋愛や美しいと感じるものを表していて、恋愛運を占うことが多い星だから。なのですご〜〜〜〜くベタにざっくり言ってしまうと、金星が牡牛座や天秤座にあると「恋愛運がいい」とも言えるわけです。
そこで、まず僕はジャブとして「恋愛運、そんなに悪くないと思いますけどね〜」と伝える。そうすると「全然そんなことないです!!」と返ってくることがあります。結局、言葉の定義なんてめっちゃ雑なので「恋愛運がいい」と言ってもモテればいいのか? モテても成就しない場合もあるし、人生でひとりにしか好かれなかったけど、その人と結ばれて最期まで幸せに暮らすこともある。人によって「恋愛運がいい」の定義はさまざまですよね。だから僕は最初から当てる気なんてないんです。
で、「恋愛運がいい配置ではありますよ」と伝えたあとにその人がどんな反応をするのかを見ています。「そんなことないです!」と言う人のほうが多いです。めちゃくちゃ調子いいときに占いを受ける人はあまりいないから否定する人が多い。その否定の仕方を見たり、言葉を聞きながら進めていくんです。
つまり、会話をして輪郭を掴んでいく。ホロスコープや命式を使って「一般的にはこういう配置だと言われています」と伝えて、 その人の反応を見ながら「実際のところ、君はどう?」という問いを繰り返していくイメージです。その過程で本人が「こう生きたいのかな」「こうすると楽しいのかな」 と自ずと気付けたら最高ですよね。その点にはかなり意識的だと思います。

――そういうスタイルはどこから生まれたのでしょう?

ニシー:もともと僕は音楽が大好きで、ロック的メンタリティーで育ったからなのか、とにかく説教臭い人とか指図する人がすごく嫌いなんですよ。自分はそうなりたくなくて、なるべく本人に気付いてもらいたいなと思っています。 問題提起をして、その人自身で何かを掴みとってもらえたらいいな、と。
一方で、占いで説教みたいなことをされたい人や何かを当てるようにはっきり言ってほしい人もいます。でも「簡単に答えが欲しい」「どうしたらいいのか教えてほしい」という要望には容易に答えないようにしています。たまには答えることもありますけどね。
でも、その人が本当に求めていることは、自分の人生を誰かに決めてもらうことじゃなくて、どうやったら幸せになれるのか、楽しくなれるのか、その方法や道筋だと思うんです。その一番の近道は自分で気付くこと。僕に何かを決めてもらうことじゃないはず。
「急がば回れ」ですよね。自分で気付かなきゃいけないってのは遠回りしているように感じるかもしれないけど、結果的にはそれが一番早いし確実なんです。リアルに効率的な方法なんです。もっと言えば、人生は自分で問いを立ててトライし続けていくことだと思うので。


占いに対して「は?」って思っている人の気持ちもわかる


ニシー:いい占い師と言われている人には、たぶんそういう対話が上手い人が多いんだと思います。僕もそういう系譜にいると思いたいですね。
僕は......なんていうんですかね、言葉にするのは難しいんですけど、占いに対して距離を置いている感じがあるんです。そもそも若い頃は占いに対してアンチだったので、占いに対して「は?」って思っている人の気持ちがわかる。信じてるっちゃ信じてるし、信じてないっちゃ信じてないみたいな、曖昧な感じなんです。星のことをものすごく信じている人にはなれない。だからいわゆるちゃんとした立派な占い師さん側には行けないんです。

――占いアンチだったニシーさんが、どんなプロセスを経て占いに惹かれていったのでしょう?

ニシー:僕の親父が宮大工をやっていたんですが、神社や寺の建物を立てる大工にとって、暦(こよみ)は重要なものなんですよね。あたりまえのように「大安」「土用」などは気にするし、暦に関する話は日常会話でした。僕の「鏡悟」という名前も、親父の知り合いの偉い姓名判断師の方が付けてくれたものなんです。そんな環境だったので、小さい頃は占いと認識していないくらい占いが普通にありました。でも、僕はそれが嫌だった。当時はまだ若かったのもあって、 寺や神社の世界観とは真逆の外国のロックにハマっていったんです。それは僕にとっては水を得た魚のように楽しいものでした。でもおもしろいことに、僕が若い頃一番夢中になったバンド、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジという人は占いがめっちゃ好きなんですよ(笑)。ジミー・ ペイジは太陽星座が山羊座、月星座が蟹座、アセンダントが蠍座で、その3つのマークが衣装に入ってるんです。それに、レッド・ツェッペリンの音楽には神話とか神秘的なものがふんだんに取り入れられている。若い頃はそんなこと詳しく知らなかったけど、なんだかんだ言ってそういう世界に惹かれてたのか、と(笑)。

――抵抗して離れたはずが、自然と戻ってきてる。自分にとって必要なものは何度も立ち現れてきますからね。

ニシー:そうなんです。なんだかんだ言って占いが好きだし、興味を持っちゃってた。大人になってそこは認めざるを得なかったですね。とはいえ、昔は「男が占いをやるなんて」という風潮や雰囲気があったので、 占いの本を隠れて読んだりしていました。いまはそんなことないと思いますけどね。そのうちにどんどんハマっていって、本を読んだりノートに自分なりのデータを集積したりしていました。勉強のつもりはなく、ただ楽しいので趣味としてやっていました。


これをやるために生まれてきたのかもしれないって思う


――その後、#占う男の活動が始まった経緯は?

ニシー:その後バンドが立ち行かなくなり、結婚して社会保険万全なサラリーマンをやっていました。まさか自分が占いをやるとは思ってなかったんです。 当時の意識としては普通に幸せに暮らしていたから。身近な人には占いが好きなことは話していたので、次第に「占って」と頼まれることが増えてきたんです。最初は無料でやってたんですけど、占った相手によく言われてたんですよね。「占い師になればいいのに」って。いま思えばテキトーに言ってたのかなって思うんですけど(笑)。「サラリーマンとしての仕事を続けたいのか? いや、やりたくないな......」という気持ちが出てきたときに、仕事を続けながら占いの学校に通いはじめたんです。そこには同じように占いが好きな人がたくさんいて、もちろん先生もプロだから詳しくて「うわぁ〜! こんな世界があるんだ!」と、ますます楽しくなっちゃって。そこで「やっぱり占いっておもしろい!」と完全にスイッチが入って、仕事を辞めて占いをやることにしました。

――いま、Uをやっていていちばん楽しい瞬間は?

ニシー:それはものすごくシンプルで、お客さんに喜んでもらえたとき。最初は趣味だった占いが、覚えた技術や知識を使って占うことでお客さんが喜んでくれるわけですよね。「良かったです」と口に出されなくても「この人には伝わったな」っていうのはなんとなくわかりますから。楽しくなってるムードとか喜びのオーラみたいなものが出ていて......めっちゃスピリチュアルみたいなこと言ってるけど(笑)。そういうときに「よっしゃ!」って思う。これをやるために生まれてきたのかもしれないなって思います。

――「使命」という言葉が浮かんできました。

ニシー:自分にしかやれないんじゃないかって思うんですよ。僕みたいな占い師っぽくない占い師を求めている人はいる。それは最初の1〜2年で確信しました。実際に喜んでくれるお客さんがいる。だとしたら、まだ出会ってないけど潜在的にUを求めている人が世界のどこかにいるだろう、そう思ったら辞められなくなりました。だから使命といえば使命かもしれないですね。僕にはこれしか残ってなかった。バンドマンからサラリーマンになり、それも辞めて、離婚もして、占いみたいなことを始めるなんて、変な話、普通の人はやらないです(笑)。そういう意味で僕はイカれてると思いますが、それだけの覚悟は持っているんじゃないかな、とは思います。



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