アドリブ・ブルースが現代人を救うとき。1
ブルースを初めて聞いたのはいつだっただろう。
覚えているのは、その時の父との会話だ。
ということは、両親と同居していたときだから、10代のどこかだろう。
その刺激的な音楽がラジオから聞こえてきたのかレコードから聞こえてきたのか覚えていないが、父に
「お父さん!この音楽聴いて!」
と興奮しながら話したことを覚えている。
父は
「すごいな。ロックみたいだけど、ボンボンと鳴るベースはジャズみたいだな。」
と話した。
その旋律は若かったぼくを完全に魅了しきった。コード進行がとてもシンプルだということは当時のぼくにも分かった。
でもそのコード進行に乗る音の連なりは聞いたことのないものだった。
・・・音は乾いていた。こんなに乾燥した音楽は聞いたことがなかった。
ぼくはブルースに一耳惚れしたのだった。
今、予想すると、その時聞いたのはMuddy Watersだったのではないかと思う。
なぜなら、おそらく30年近く経った今Muddy Watersを聴いても同じように乾いた感覚が得られるからだ。
この時、将来、ぼくがブルースを弾くようになることは自覚できた。
でも、そのときのぼくには、ブルースで人を救うことに取り組むことなど想像さえできなかった。
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