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AV新法における出演契約の解除

AV新法における出演契約の解除について考えます。

①任意解除

AV新法の規制を守ってアダルトビデオが制作された場合、出演者は、公表から1年間(2024年6月22日までに締結された契約については2年。AV新法附則3条1項)に限り、任意に、出演契約を解除できます(AV新法13条1項)。

②「1ヶ月4ヶ月ルール」違反による解除

AV新法には「契約から撮影まで1ヶ月、撮影から公表(販売)まで4ヶ月」という規制(AV新法7条1項、9条。以下「1ヶ月4ヶ月ルール」とします。)があります。

「1ヶ月4ヶ月ルール」違反があると、出演者は、1年の期間制限がある任意解除に加えて、解除権を行使することができることを知った時から時効によって消滅するまでの5年間、無催告で、出演契約を解除できます(AV新法12条1項1号、3号、5条1項2号、民法166条1項1号)。

解除権の催告による消滅

「1ヶ月4ヶ月ルール」違反による解除権は、時効によって消滅するまで行使できる性質である旨がAV新法に明記されています(AV新法5条1項2号)。時効で消滅するまで行使できることからすると、当該解除権は、行使について期間の定めがない解除権であると考えられます。

解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができます(民法547条前段)。この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は消滅します(民法547条後段)。

解除権の行使について期間の定めがない場合には、解除権を有する者の相手方は解除されるかどうか不安の状態におかれるので、これを保護するために、相手方に相当期間を定めて催告することを認める趣旨です(「新版 注釈民法(13) 債権(4) [補訂版]」 903頁)。

「1ヶ月4ヶ月ルール」違反による解除権は、行使について期間の定めがない解除権です。そのため相手方であるメーカーは、解除権を有する女優さんに対し、相当の期間を定めて、解除するかどうか催告をすることができます。期間内に解除の通知を受けないときには解除権が消滅するので、メーカーは不安定な状態から脱することができます。

ここで、民法547条の「相当の期間」がどの程度であるのかが問題になります。

「相当の期間」は、一般的には2週間から1ヶ月程度と考えられます。もっとも「1ヶ月4ヶ月ルール」違反による解除権(AV新法12条1項1号、3号)が、任意解除(AV新法13条1項)に加えて女優さんを保護し、性に関する自己決定に配慮する規定であることを踏まえると、少なくとも任意解除による解除権の行使リミットである「公表から1年」よりも後になるように、「相当の期間」の終期を設けた方がよいでしょう。

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