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客の接待と風営法違反の無許可営業

赤羽の飲食店経営者らが従業員に客の接待をさせ、風営法違反の無許可営業容疑で逮捕されました。

JR赤羽駅近くの繁華街で客引き行為を行ったとして中国人の女ら17人が逮捕された事件で、警視庁は14日、風営法違反(無許可営業)容疑などで中国籍の飲食店経営、〇〇〇被告(52)(横浜市磯子区)ら24~58歳の男女計10人を再逮捕し、新たに客引きの男(56)ら2人を逮捕したと発表した。
発表によると、12人は2~5月、都公安委員会の許可がないのに、赤羽駅周辺の飲食店3店で、従業員の女(24)(風営法違反容疑で逮捕)らに客の接待をさせるなどした疑い。○被告は否認している。
警視庁は3店が2017年9月以降、約4840万円を売り上げたとみている。

出典:読売新聞(2022年7月15日)

接待とは

ここで問題となっている「接待」とは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)2条3項が定める接待です。

この法律において「接待」とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことをいう。

出典:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 2条3項

警察庁の通達(「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について」令和4年4月1日付)によると、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」(風営法2条3項)の意味は下記のとおりです。

第4 接待について(法第2条第3項関係)
1 接待の定義
接待とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」をいう。
この意味は、営業者、従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため営業者側の積極的な行為として相手を特定して3の各号に掲げるような興趣を添える会話やサービス等を行うことをいう。言い換えれば、特定の客又は客のグループに対して単なる飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為等を行うことである。
2 接待の主体
通常の場合、接待を行うのは、営業者やその雇用している者が多いが、それに限らず、料理店で芸者が接待する場合、旅館・ホテル等でバンケットクラブのホステスが接待する場合、営業者との明示又は黙示の契約・了解の下に客を装った者が接待する場合等を含み、女給、仲居、接待婦等その名称のいかんを問うものではない。
また、接待は、通常は異性によることが多いが、それに限られるものではない。
3 接待の判断基準
(1) 談笑・お酌等
特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲
食物を提供したりする行為は接待に当たる。
これに対して、お酌をしたり水割りを作るが速やかにその場を立ち去る行為、客の後方で待機し、又はカウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為及びこれらに付随して社交儀礼上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為は、接待に当たらない。

(2)~(5)略

(6) その他
客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為は、接待に当
たる。ただし、社交儀礼上の握手、酔客の介抱のために必要な限度での接触等は、接待に当たらない。
また、客の口許まで飲食物を差出し、客に飲食させる行為も接待に当たる。
これに対して、単に飲食物を運搬し、又は食器を片付ける行為、客の荷物、
コート等を預かる行為等は、接待に当たらない。

出典:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について(通達)(令和4年4月1日)

本件では、飲食店において女性従業員が客の横に座って談笑し、それが接待とみなされた可能性があります。

接待と風営法の許可

設備を設けて客の「接待」をして客に飲食をさせる営業は「風俗営業」(風営法2条1項1号)です。

風俗営業を営もうとする者は、都道府県公安委員会の許可を受けなければなりません(風営法3条1項)。

本件では、都公安委員会の許可を得ないで接待をしていたので、無許可で風俗営業を営んでおり、風営法3条1項違反になります。

刑事罰

無許可で風俗営業を営むと刑事罰に処せられます。法定刑は「2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」(風営法49条)であり、風営法で一番重い刑となっています。

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