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AV新法の「1ヶ月4ヶ月ルール」と刑事罰

「1ヶ月4ヶ月ルール」違反は刑事罰に問えないように見える

AV新法については、当初「契約から撮影まで1ヶ月、撮影から公表(販売)まで4ヶ月」という規制(AV新法7条1項、9条。以下「1ヶ月4ヶ月ルール」とします。)がメインと考えられていました。

しかし実は「1ヶ月4ヶ月ルール」より、①契約書と説明書面を交付すること(AV新法6条、5条1項)、および②契約書と説明書面の内容に虚偽がないこと(AV新法21条2号、1号)の2点の方が重要なようです。

なぜなら上記①②が守られていれば、「1ヶ月4ヶ月ルール」に違反しても、法律の文言上、刑事罰には問えないように見えるからです。

すなわち、例えば「契約当日に撮影、1週間後に販売」というスケジュールであっても、その旨を記載した契約書、および法の一般的な定めを正確に記載した説明書面を交付していれば、AV新法違反ではあるものの罰則はなく、条文上刑事事件にはならないと思われます。

「単純売春は違法だけど不可罰」とする売春防止法に似た構造です。

「1ヶ月4ヶ月ルール」に違反すると5年間解除可

「1ヶ月4ヶ月ルール」を守らないとどのようなリスクを負うのでしょうか?

AV新法の規制を守ってアダルトビデオが制作された場合、出演者は、公表から1年間(2024年6月22日までに締結された契約については2年。AV新法附則3条1項)に限り、任意に、出演契約を解除できます(AV新法13条1項)。

しかし「1ヶ月4ヶ月ルール」に違反があると、1年の期間制限がある解除に加えて、解除権を行使することができることを知った時から時効によって消滅するまでの5年間、無催告で、出演契約を解除できることになります(AV新法12条1項1号、3号、5条1項2号、民法166条1項1号)。

メーカーは、5年間、いつ解除されても文句を言えなくなるのです。

「1ヶ月4ヶ月ルール」に違反して解除された場合、メーカーは損害賠償請求をすることはできません(AV新法12条2項)。そのため、得られるはずだった売上見込みの金額や撮影のために支出した実費を女優さんに請求することは不可です。

もっとも、解除に伴う原状回復義務はあるので(AV新法14条)、女優さんに支払済みのギャラについては、返金請求をしても構いません。

まとめ

「1ヶ月4ヶ月ルール」に違反した場合、刑事罰には問われないように見えますが、民事上は長期間、解除のリスクを負います。

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