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林原倒産事件の教訓から学ぶ

以前、岡山に林原という企業があった。
上場してはいなかったが、地方企業としては大きな企業だった。
倒産当時、約800億円の売上規模となっており、甘味料などに用いられる糖質トレハロースを製造販売するなど、ファミリー企業としては日本でも有数の企業だった。
そんななか粉飾決算により会社更生法を申請し、現在では、長瀬産業が経営に参加、ナガセヴィータ株式会社として事業が継続され業績は堅調だ。

林原倒産事件について、当時の社長の林原氏が自らの著書で経営体制について、次のように語ったところが印象的だ。

経営には必ず中立で第三者的な立場の人が必要である。例えば、弁護士や公認会計士などの専門家を社外役員として意見をいつも聞ける体制にする。当然、その社外役員は会社の真の味方で、企業の存続を強く願っている人でなけばならない。

私は、この点が非常に重要なところだ、と考えている。

次に企業経営には落度があってはならない。最近は特に法令やコンプライアンスの遵守が強く叫ばれている。確かに粉飾は会社法違反行為である。マスコミは徹底的に粉飾を非難した。今回の倒産は、この落度の隙を突かれたと言ってもよい。
最後に、ヴィクトル・ユーゴ―の名作「レ・ミゼラブル」の主人公ジャン・バルジャンは飢えからパン一切れを盗んで一生追われる身になった。たとえパン一切れでも隙を見せてはならない。「ああ無情」命取りになる

元経営者の立場から経営者のあるべき姿勢について本音を確信的に語っておられる。
株式公開しようが、ファミリー企業であろうが、社会的ポジションが明確な企業を目指すのであれば、林原氏が語った内容は、原理原則だ。
経営者が決して忘れてはならない教訓だろう。

それと同時に銀行との取引や付き合い方には、十分な注意が必要だ。
銀行は、多くお客さ様から預金を預かり、企業に貸し付けて運用している。
そもそも保守的だ。
そのような銀行が、粉飾決算だと知れば、手のひらを反すことは、当然といえば当然だ。
厳しい言い方だが、経営者として甘いのだ。

だからこそ、日頃から会計について適正な処理が必要になる。
また、開発投資などで資金需要が増えるよう環境にあるのであれば、上場などを検討し、ファミリー企業からパブリックカンパニーにしていくことも検討しておくべきだ。
ファミリー企業は心地よいところだろう。
だが、一つ間違えば林原のようになる。

しかし、今の時代のように国内を中心に活動する企業では成長がむずかしくなってきている。
このような企業は、上場企業よりもファミリー企業、あるいは非公開企業のほうがよいだろう、と思われる。
企業の成長性が低くなり、多くの株主に支払う配当もおこないたくないだろう。
増資なども必要ない。
上場の維持のための大きなコストと高い手数料などを考えれば、未上場化は必然だろう。
今後も未上場化は増えると思われる。
ただし、未上場化で経営の自由度があがるが、会計処理や資金繰り、そして銀行取引には十分な注意を払うことが必要になるだろう。
林原の教訓が生かされるのかみておくことが重要だ。
人間とは、権力をもつといろいろな点で甘さがでるものだ。

あるいはファンドが経営にはいる場合、厳しさが必要だ。
ファンドの狙いは、原則再上場か、売却だからだ。
覚悟がいる。

私は、林原はグローバルカンパニーになることができた企業だ、と思っていた。
大学時代の友人から優秀な企業だと聞いていた。
有能な人材がたくさんいただろう。
林原は、上場を目指しておくべき企業だった、と私は、今でも思っている。
いろいろな食品で「トレハロース」をみるたびに、林原を思い出す。
トレハロースに限らず、良い製品を生み出す力をもっていた企業だ。

ソニーのように世界へ挑戦する企業であってほしかった。
また、違った未来があっただろう。。。

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