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経営者は決断を求められるが、その評価はすぐにはでない

昨日、朝のニュースで積水ハウスが国立市で建設した地上10階建て、全18戸の分譲マンションを解体すると、メディアが報じていた。
積水ハウスは、東京都国立市で手掛ける新築マンションを、引き渡しの目前という異例のタイミングで解体することを決めたが、その理由として、積水ハウス広報室は「建物周辺への影響について、検討が不十分だったため」と説明し、さらに建築基準法などへの違反があったわけではないとしている。

異例の対応だろうが、社会性を踏まえて決断したのだろう。
いわゆる損切ができる企業だ。
多くの企業では、損切することができず、ずるずると事業を引っ張ることが多く、やがて大きな損失を出す。
今回のケースでは、近隣住民から計画変更が出されているなど、着工時から課題があったマンション建設だった。
なんどかテレビで報じられていたが、その後報道を目にしたことはなかったように思う。
しかし、地元住民からは建設中止などの要望が継続されていたようだ。

このような状況になると、建築基準法に違反等がなく販売されたとしても、入居者にも不安が残るのが現代社会だ。
販売後に問題が継続されるようなことがあれば、積水ハウスのブランドイメージは、それだけ棄損する。
法的に問題ない建設であっても、住民がもつ景観に対する意識は高いものがある。
私でも毎年みている田んぼの景色は大切だ。
少し状況が変わっただけですぐにわかる。
それほど意識して田んぼを眺めているわけでなく、自分では何気なく散策しているだけなのだが。。。
不思議だ。
人がもつそのような意識(無意識)は、とても大切なことではないか、と私は感じている。

メディアのキャスターやコメンテーターは、否定的なコメントをしている人もいたが、法律というものは、社会の最低限のルールでしかない。
損切でいえば、価格を引き下げて販売することも可能だっただろうが、社会性という観点からであれば、解体は、勇気ある撤退だろう。
ハウスメーカーとして戸建て住宅におけるブランド力がある企業が、販売を進めて社会問題化すれば、メディアはその騒動を報じていくだろう。
環境問題が叫ばれる現代社会は、法律違反がなくとも悪評が流れれば、ハウスメーカーとしては相応のリスクがある。
これからのビジネスでは、企業が法律を超えた社会性の判断を前提として、建設や販売が進むことになるだろう。
積水ハウスの決定は、会社の将来の礎、あるいは日本の企業社会に一石を投じる意味でも、英断(決断)となるだろうか。
その評価は、今後を待つほかない。

企業活動では、損切できる企業は強いし成長する。
私が在籍した2社はそのような企業だった。
とにかく、事業の途中で課題や問題があり、継続すればさらに問題や利益を悪化させると思えば、直ちに中止した。
勿論、そこまでのコストはかかっているのだが、将来の見えないコストに対しては、社会性まで見ていた。
だから、すぐに損切できる。
経営者の決断だ。
間違っても判断ではない。
理由は、法的問題がなければ、その時点で正解がないからだ。
私がみた経営者は、自ら責任を取る覚悟で決定していた。
私の記憶の奥に突き刺さった。

その反対の企業は、言うに及ばずだ。




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