第164回日商簿記検定1級 工業簿記・原価計算 雑感
第164回日商簿記検定1級を受験された皆様、お疲れ様でした。
現在、ネットスクールでは特設サイトにて解答速報や講評動画、解説動画を配信中です。
その中でもいろいろとしゃべっていますが、改めてnoteでも、今回の工業簿記・原価計算の問題で感じたこと、思ったことを簡単に書き記しておきたいと思います。
受験された皆さん、これから日商簿記検定1級を受験予定の皆さんにとって、何か1つでもヒントや気づきがあれば、幸いです。
工業簿記
第1問
1つ目~3つ目の文章の内容をしっかりと対策できている方はほとんどいないのではないかと思います。ただ、( 1 )以外は意外とそのまんまな解答なので、諦めずに空欄を埋めた人で正解できた人は多いのではないでしょうか。
4つ目の文章は、材料の消費量を把握する意味を改めて考えさせる問題でしたね。「消費量」という点から継続記録法と棚卸計算法の対比である点には気付きたいところです。
5つ目の文章で登場する段取時間の取り扱いは、労務費の計算で引っかかりやすいところです。費目別計算の対策ができていた人には解きやすい問題だったでしょう。
第2問
第2問は全部原価計算と直接原価計算の対比に関する問題です。
計算自体は2級で出てもおかしくないくらいの難易度のものが大半で、ボリュームも多くないので、高得点を狙える受験生が多いものと思われます。
その分、勘違いや計算ミスで大きく他の受験生と大きく差を付けられる可能性もあるのが怖いところです。
なお、問3の空欄補充で全部原価計算と直接原価計算の営業利益のどちらがいくら大きいかを計算・判断させる問題が出ていますが、文章をきちんと読むと、かなりのヒントが埋め込まれていました。
例えば、(1)の文章で
と書かれていますが、売上原価が少なくなるということは費用が少なくなる訳ですから、利益は大きくなることが分かります。
こういうヒントをしっかり活用できたかどうかが、合否の分かれ目になるのかもしれません。
原価計算
第1問
原価計算の第1問も理論問題ですが、5つの文章のうち内容が正しいものをすべて選べという問題であり、正しい文章がいくつかも示されていないため、消去法も使えないため、見た目以上に難しい(プレッシャーが強い)問題です。
それぞれの文章の詳細は解説動画内にて説明しているので、気になる方はそちらもご覧ください。
第2問
第2問は総合原価計算の仕損の取り扱いに関する問題です。
正常仕損費の金額を問うていることから、非度外視法による問題であると判断するのが最初のポイントです。
ただ、本問の最大のポイントは正常仕損と異常仕損の両方が発生しているという点であり、この部分の計算が正しくできたかどうかが、合否を分けるポイントになりそうです。
本問では、加工費進捗度/仕損の発生点を比較した上で、正常仕損費を異常仕損にも負担させるよう指示しています。そこは問題文を読めば判断は比較的容易だと思います。
それよりも、先入先出法であるため、完成品の数量から月初仕掛品の数量を差し引くのを忘れなかったかが気になる所です。
また、各所で話題になっている問2の異常仕損費の取り扱いについてですが、解説動画でも話しているとおり、①と②はほぼ間違いなく不正解になると考えられますが、④に関しては、正直なところ、"理由次第では"正解になってもおかしくないというか、"理由次第では"正解にする余地があってもいいのではないかと考えています。
本問のように理由を書かせる問題は全経簿記上級で頻繁に出題されていますが、問題によっては、理由に一定の合理性があれば得点を与えていることを明言しています。
異常な仕損が生じるような機械の整備不良による故障がどういうものかは、生産環境によっても異なることが考えられます。
解説動画内で話忘れてしまいましたが、もしかしたら、実際に製造現場の品質管理やメンテナンスを担当している人にとって身近な例が、解答速報または作問者の意図している模範解答とは異なるということもあるかもしれません。
だからこそ理由を書かせていると考えたいですし、そうであるならば、現実世界のことを踏まえて考えた人が不正解になるようなことは避けて頂きたいと、そう願っています。
かなり走り書きに近い形ではありますが、第164回日商簿記日商簿記1級の工業簿記・原価計算の問題を実際に解いてみて、また、解説動画を撮影してみて感じたことや気づいたこと、できれば受験生の皆さんにお伝えしたいことを書いてみました。
第164回の試験を終え、また次なるステップをお考えの方も多いかと思います。
ネットスクールでは、これから様々な講座の無料説明会を配信予定なので、よろしければぜひご覧下さい。