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タンジーの手記(オクトラ2ネタバレ注意)

オクトラ2をプレイしたことのある旅人の皆さん。おぼえてますか。タンジーの手記の事を。

最終話、エクストラストーリーのフレイムチャーチでの一連のイベント後に拾えるあれです。


筆者のタンジーについて軽くおさらいしましょう。

アグネア編三章に出てくるジゼル座に所属し活躍してる演出家の女性。
ちょっと苦労人な所もありますが、美人で明るくしっかり者で一座の中では演者のことを誰よりも理解していて支えになってる、とても頼りになるみんなのお姉さん。
アグネアともとても仲良くしてくれて、彼女に”大舞踏祭”のことを教えてくれた張本人でもあります。
口癖は「女神様…!」

そんな彼女が、自分の思いの丈を綴ったあの手記。



ハアーーーーーー………………




この手記、個人的にはオクトラ2の中で一番リアルに心にきて悲しかったししんどかった…………

なにがそんなにきついって

・幸せになれた筈の人生が徐々に狂っていく生々しい過程がキャラに文才を付与した文体で綴られてる所
・本人は本当に何も知らないままの所
・二度と取り返しつかなくなった後に全て判明する所
 

これよ。
地獄の縮図。

私はこの手記にかなりの衝撃受けたんですけど、調べてもタンジーに関する考察とか感想とかがほぼ出てこなかったのにすごい驚いた。それぐらいダメージ食らった。

確かにいきなり降って湧いた話に見える(意図的にそう作られてると思う)のでそこまでの掘り下げる感想が出にくいだろうことも分かる。

あまりにヘビーで悲惨な話すぎて、最初はただただ呆然としちゃったけど、時間を置くとだんだんそうだったんだ……しか言えなかった所に自分の中で色々言葉が付いてきたので、衝撃任せにありのまま何か感想残したくて書きました。

※この記事は以前ふせったーにあげてたものを調節して再投稿したものになります。
なんでもないいちオタクの感想ですが、よかったらこの悲痛な心の叫びをどうぞ読んでやって下さい。



タンジーと女神様


アルカネットもといミントは、テメノス編の最後で「ん…?」と思ったけど、タンジーは完全ノーマークだったし、アグネア編の黒幕関係者はジゼル一択と思ってたので(全体的に明るいシンデレラストーリーだったので闇の入り込む余地がメンタルが極端な彼女しかないなと思ってた)手記読んで更に

アルカネット…この女…マジでやってくれたなあ…!!!

になりました。
タンジー個人の人生の詳細はこの手記でしか語られてないけど、文章だけなのに個人的にはかなり心に来た。

ジゼルのメンタル不安定な所はアグネアや一座の皆の良い所を見せてくれる大事な要素だったと同時に、タンジーに注意を向けさせない「まさか同じ要素を別のキャラが比じゃないレベルで利用されてるとは思わんやろ」という目眩ましだったのかもしれんと思った。

アグネア編やってた時は、最初に書いた通り明るくてしっかり者でちょっと苦労人だけど、それでも一座の皆と楽しくやってる良きお姉さんぐらいにしか思ってなかったからガチで一切気付かなかった。まんまとしてやられて上手いことスルーさせられてました。

後から考えると、舞台の仕事をしてるタンジーは八柱の舞踏姫を「女神様」として崇拝しててもおかしくないけど、オクトラの世界だと神の力を頼る時はちゃんと「舞踏姫シルティージよ」みたいにフルネームで言う敬意の文化?があるみたいだから、名前も言わずに女神様連呼してた所は不自然ではある。
彼女が困った時、あまりに口癖みたいに繰り返すから、ただちょっと信心深い人なんだなぐらいの印象だった。
それ以外は不自然な所がない(最初はこれが不自然かすらも分からんかった)ので、他の黒幕関係者と比べてもダントツで途中で関係者と気付ける要素が極端に少ない人だと思う。

だからこそ、最後の最後で一気に全部理解してこれでもかと丁寧に胸糞を味わう様に作られてるのが、アルカネット筆頭に暗黒勢へのヘイト爆上げ構図に拍車かけてて天才だし上手すぎるなと思った。
そこかしこに引っかかる点を散りばめる伏線とはまた味の違う徹底された「気づきにくい」丁寧、浴びさせて頂きました。
ゾッとしたわ。

全部分かってもアルカネットもすでに倒した後のイベントだったので、仇は取ってる筈なのにどうしようもないやるせなさが半端なくて、すごい落ち込んだしなんなら悪夢も見た。

オドネルの死


彼女の人生が狂う最初のきっかけだったオドネルの病死。
あれは長年の積み重ねが原因であって、亡くなった時にたまたまタンジーが側に居ただけの最悪な不幸だった「だけ」なんですよね…本当に。

だからタンジーが思うように彼女のせいなんて事はないし、その証拠に周りも誰もオドネルの死の事でタンジーを責めた事実もない。
あったとしたら多分手記に書いてただろう。というか嫌でも書かずに居られなかったと思う。
状況的に人一倍その声には敏感になるだろうし、本当の事を吐露できるのが紙の上しかないなら尚更。

勿論本人は罪悪感を感じないなんてことは無理でしょう。そして無理もないとはいえ、誰がどう思うかでなくタンジーにとっては「私のせいで好きな人が死んだ」が全てで唯一の事実になってしまったのが悲しすぎる。

誰に見せるわけでもないただの日記にすら滲み出てる文才といい、きっと自覚する余裕もなかっただろうけど、彼女には投げ出さずに向き合って努力できるセンスと、登場人物の感情や場の動きを繊細かつドラマチックに表現できる脚本や演出の才能が確実にあったと感じた。

それに本人が気づけて、少しでも自分を認めてあげられてたなら。
オドネルと掴むはずだった幸せとは違うけど、持ち前の才能でいい本を書いたり、一座のみんなの公演や旅を心の底から満喫できたり、違う角度から救いと幸せを見出して生きていける可能性は十分にあったよね……

少なくともあんな結末だけは迎えなかったと思う。

実際、そう思いたかったという願望の面もあったのかもしれないけど、アルカネットという目的がどうあれ、寄り添ってくれた人と出会ってから「罪悪感やオドネルへの想いが溶けて無くなった」と手記に書いてたし。

ジゼル座と夢


ジゼル座のメンバーも、本当の意味で彼女の味方で仲間になってくれただろう人達だった。
一座のスローガンの「世界の隅々まで笑わせる」は当然客だけでなく自分たち自身も入ってるだろうし、アグネアも「許しあえる仲間」「笑顔の大切さ」「目指すべき目標」という言葉を座長であるジゼルから感じ取ってたぐらいだからそれは間違いなかった筈で。

だから、ただの一度でよかったんですよね~~~~…相談できてれば………

仲間とはいえ、他人に打ち明けるには相当な勇気がいる話だし、こういう話はたらればを言ったってやるせなくなるだけですが、アルカネットしか見えない状態にされてなかったらなあ………まあ、うん……アルカネットには何もかも話してたんだろうけど………そいつじゃない……
その女じゃないんだタンジー……

アルカネットがそういう立ち回りが「異常に上手い」のもあったけど、オドネルの件でトラウマになって下手をすれば筆を折ってもおかしくなかったのに、彼女は辛くても舞台の世界に関わり続けたんですよね。
「聖火を見つける」という旅の目的を考えると、別に旅一座の一員でなきゃ駄目って訳でもなかったのに。

フットワークの軽さが都合よかった面もあるのかもしれないけど、心のどこかで夢や、ずっと好きだった執筆にしがみつき続けられていた前向きなエネルギーはずっと根底にあったと思う。無自覚でも。
ただ、一番救いが必要だった時に出会ったのがアルカネットだったのが致命的だった。より正確に言うならアルカネットに見つかってしまったのが駄目だった。第二の不幸の脅威が大きすぎた。

アルカネットという女


話がちょっと逸れますが、そもそもアルカネットが消したいはずの聖火を信仰してる教会に居て都合よくタンジーの前に現れた理由。

あえて敵の本丸で監視して脅威をあぶり出して効率よく消す為とか(教皇、ロイ、アルパテス、クリック君、テメノスさんなど)夜の書の事とか、わかりやすい目的で考えてたけど、
タンジーの件が判明して、テメノスさんとの最後の会話を加味すると
あーこの女

タンジーみたいな弱ってて、事情を説明しなくても操りやすい人間を手っ取り早く探して無限に調達する為に教会に居たんだな

と確信しました。
それなりに危険もあるのに居続けてた理由は間違いなくそれだと思う。
あと基本的に他人、ひいては人間というものをナメてる節があるので「どうせ気付けるわけないでしょ」と高を括ってた感じ。

教義や宗教団体が悪意で利用される事自体は、残念ながらそう珍しくないし…事実、アルカネットは昔その手口で歴史的虐殺もやった。
大人しく典型的な神官らしいことをしていれば、疑われにくい善人の皮も被れるから一石n鳥
書き出してみると改めて最悪すぎるな……

にしてもアルカネットは年季も入ってて技術とか経験値とかたちの悪さのレベルが桁違いですが…逆に一流の心理学者になれるよ。絶対なっちゃ駄目だけど。

アルカネット役の声優さんが優しげでただ話してるのを聞いてるだけで癒される系の声なのに二面性黒幕演技があまりに上手すぎるので、これは出てこないだけで利用されて人知れず消された人間、絶対ごまんといるな…という確信と説得力が出まくりなのもすごすぎるしキャスティング神すぎるけど怖すぎです。ヒィ…
ヴィーデなんかよりよっぽど邪悪だよ…正直比じゃないと思う。


ファンタジー世界のキャラの事とはいえ、タンジーの身におきた事

大事な人と突然の死別

それで自分を責め続けてしまう

逃避で別のなにかに依存する

正常な判断ができなくなって依存が全てになる

は現実でも誰の身にも起こり得る事で、それを熟知した上で利用してマインドコントロールしてるのがやり方が汚すぎて、不死の絶望がうんたらとか言われたってアルカネットに一切同情の余地を感じないのが、逆に悪として清々しくてお手上げです。

こういう事思うのもよくないと思うけど、アルカネットに対しては犠牲者が多すぎて最終的にそんなに明日が嫌ならどっかで勝手に一人で終わってくれ…とちらっと考えてしまいましたね。おいクロード、お前もだぞ。


タンジーの「情報の力で黒幕側に協力してた」のはオリが似た立ち位置だけど、オリは全部把握した上でパルテティオに「出会わなければよかった」と思うだけの葛藤する時間があって、それ故につらい所もあったけど、逆に言うと彼女は結局死ねなかったし、まだ生きててパルテティオもいるからやり直せる希望はゼロじゃない。

でも、タンジーは本当に何に利用されてたのかも真実も何もわからずに人生と心をすり減らして葛藤する時間すら与えられず、そのへんで拾ってきた適当な薪を何気なく火に焚べたぐらいの感じであっさり焼かれて、死んじゃって、本当の意味で何も取り返しがつかないんですよね…

タンジー本人からしてもマジで「頑張ったご褒美を貰えると思ったらいきなり殺された」以上の情報がない。
鏡で記憶を見た主人公達以外からの視点でも「タンジーはいつのまにか蒸発して行方不明になった」しかない。

唯一教会のNPCが彼女を心配してたけど、加害者のアルカネットももう居ないから当然事実に気付ける余地はない。生死も確かめようがないから弔われることもない。
こんな悲しい事があってたまるかってんですよ……

キャスティ編のラストで多分「本物」の皆がキャスティを見守っていたのを考えると、もしかしたらオクトラ世界には死後世界があるのかもしれないけど、タンジーはあの死に方だからオドネルと同じところに行けた気がしない。
邪神への贄だもんな…せめて死後はオドネルと一緒になれたとか、明日が来ない事を望んでたなら死で救われたとか、どうにかして少しでも都合のいい事を探したいけど、断末魔はただただ苦痛と絶望しか感じてない声だったし、あれを聞くとどうしても何も前向きに捉えられない……

その点、アルカネットは主人公勢に負けて普通に人としてあり得る方法で死ねた上に、ずっと望んでた通りに死で「明日が来ない」を手に入れたのでどうあれ事実上勝ち逃げなんですよね…
世界を暗黒で満たして終わらせる目的の方は長年の仕込みが全部無駄に終わったので、そこだけはざまあみろではあるけど、そんなんじゃ全然足りないし全くすっとしない。
ただただ悔しい。

クロードも別ベクトルで同じぐらいヤバイ奴だったけど、アルカネットは人の痛みを利用して身勝手に操りまくったり、手を汚さず虐殺の限りを尽くしたりをなんの躊躇もなく淡々とやってる点があらゆる創作物の中でもズバ抜けて人間として邪悪で、全方向からヘイト集めるキャラ説あるんじゃないかと思ってる。ゲーム史の吐き気を催す邪悪ランキング上位に名を刻めるまである。

あのタンジーの断末魔は少なくとも数年は耳から離れないと思うし、もう周回する度に明るく楽しく美しく思ってた筈のアグネア編でタンジー見る度にアァ~~……ってなるんだろうな…なんて厄介な爪痕を残してくるゲームなんだ…

最後に


タンジー以外にも語ろうと思いえばいくらでも想像の余地あって語れるエグい要素多かった。
CERO Dの事ちょっとナメてた。
ウェローズ家の女の子とか闇を感じるNPCのプロフィール文とかオリとかカザンもだけど、このゲーム、手記筆頭に読む系の要素が妙に生々しいの多くて、読んでるだけなのに息が詰まりそうになる。

そんな、綺麗な美しい物語だけじゃないオクトラ2が大好きです。
八周します。いや今やってます(現在進行形)

本編の方のガッツリ感想もゆっくり書き進めているので、そのうち公開します。
そちらでまたお会いしましょう。


最後まで読んでくださってありがとうございました。


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