『ブラック・フォン』感想

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コロラド州デンバーのとある町。子供の行方不明が頻発していて、〝グラバー〟と呼ばれる誘拐犯の噂が広がっていた。主人公のフィニーはある日学校の帰りにマジシャンだという男に声をかけられる。その男こそ、連続誘拐犯グラバーだった。捕まってしまったフィニーはどこかの地下室に監禁されてしまう。すぐにフィニーを殺そうとはしないグラバーの目的がわからないまま時間が経ったある時、地下室にある繋がっていないはずの黒電話が鳴りだす。電話の主はこれまでに連れ去られた子供たちだった。


子どもの頃「口裂け女」や「赤マント」などの都市伝説を聞いて恐怖した経験を持つ人は少なくないと思います。『ブラック・フォン』はそんな子供の頃の恐怖心を思い出させる映画。
イーサン・ホーク演じる誘拐犯グラバーは、青白い顔面にシルクハットとサングラスという特徴的な出で立ちであらわれ、黒い風船と共に真っ黒のワゴン車で子供をさらっていく。さらに捕まえてすぐに殺すということはせずにあえて監禁場所の鍵を開けておき、子供がグラバーのスキを盗んで逃げだそうとするのをまるでゲームを仕掛けているかのように待ち構えている。
「口裂け女」や「赤マント」はマスクや仮面といった特徴的な装飾品を身にまとい、独自のルールのようなものに則って人々を襲います。本作のグラバーもそういった〝都市伝説の怪人〟のツボをおさえたキャラクターとして創られているからこそ、この映画は子供の頃の恐怖心を思い出させる映画になっているのではないでしょうか。

監督はスコット・デリクソン。ホラーやサスペンスを多数手がけていて、キャリアの初期にはそのものズバリの都市伝説をテーマにした映画を手掛けているので、今回の都市伝説の「本当にありそう」と思わせる説得力があるのにも納得。
原作がスティーブン・キングの息子のジョー・ヒルによって書かれたということもあり、「スタンド・バイ・ミー」や「IT」を思い起こさせる少年少女の冒険要素を持ったホラーになっている。
個人的にはラストで、これまでグラバーに殺された少年たちの霊の手助けがことごとく失敗に終わったにも関わらず、それらが偶然にもフィニーがグラバーに打ち勝つ手助けになったというところが最高。(例えば、電話線や窓の鉄格子、そして冷蔵庫の肉!)恐ろしい誘拐犯グラバーに天罰が下ったようにも見えるそのシーンは、フィニーの成長を感じさせ、兄の無事を願い続けた妹の祈りが通じ、殺された少年たちの無念が晴らされるという何重にもカタルシスが得られるラストでした。






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