女王蜂の針に貫かれている日々のこと
あれは10年近く前のことだと思う。
普段テレビなんてみないんだけど、その時はたまたま深夜にリビングにあるテレビをなんとなく流していた。
その時に何を見ていたかなんて覚えていないけど、CMで流れたこの映像が強烈でずっと脳裏に焼き付いていた。
サムネイルからも漂うこの狂っている感じ
これがなんなのかわからないまま、これは幻覚かなにかなんじゃないかと思ったりもした。
これが女王蜂というバンドのMVだと知ったのはもう少しあとになってからだった。
その当時まだサブスクなんてなくて、わたしが音楽を聴くにはTSUTAYAでアルバムをレンタルして、パソコンのiTunesにいれて、iPodで聴くしかなかった。
当時近所のTSUTAYAがアルバム1枚250円のところ、5枚にすると1000円になるというキャンペーンをずっとやっていて、わたしは5枚のアルバムを借りては返して、また借りては返してということを繰り返していた。
1週間に1000円の出費で成り立つ趣味は大学生にちょうど良かった。
わたしはテレビをほとんど見ないのは先述の通りで、ドラマは見ないし、映画も見ない。
アニメをインターネットで見るのがたまにあるくらいで、1番人と話せるジャンルは邦楽かなと思う。
好きになったアーティストは全曲聞きたいタイプなので、気に入ったアーティストがいると5枚セットレンタルを全て同じアーティストにすることがしばしばあった。
椎名林檎、スガシカオ、ゲスの極み乙女、サカナクション、amazarashi…。
音楽が好きだから、カラオケも好きだった。
友達とカラオケに行くことはもちろん、1人で行くのも好きだった。
ある日のカラオケの曲探しの合間に流れるカラオケ会社が流れる映像(DAMだったらDAMチャンネル)で、本人映像の宣伝が流れた。
天国なんて行きたくない 君がいないと始まらない
禁断の恋は報われない? やってみないとわからない
この映像とフレーズがぶっ刺さり、衝撃が走った。
この時わたしは女王蜂に2度目の針を刺された。
アナフィラキシーショックとしてこの沼に落ちた。
急いでTSUTAYAに行った。
昔のアルバムも含めて全部借りた。
失楽園が入っているQも借りた。
単純にかっこいいと思える曲と、不可解な曲が両立していた。
美しさと毒を兼ね備えたとんでもねぇバンド。
ボーカルが1人だということに気づいた時は頭が爆発しそうになった。
アヴちゃんの魅力はビジュアル、曲、歌声だけに留まらない。
インタビューでの言葉、ネット番組での言葉…。
当時amazarashiや椎名林檎など、自分の心から溢れたものを歌詞にするアーティストにハマっていたわたしには余りに刺さりすぎた。
ユースケ・サンタマリアといとうせいこうが司会進行する「オトナの!」という番組に大森靖子と出た時、番組の最後で「あなたにとってオトナとは?」と聞かれたアヴちゃんが
「大人なんていない。いるのは人だけ」
とビシッと返した時、わたしはボロボロと泣いてしまった。
2017年当時、23歳で大学を卒業し、大人になるべきなのにまともに就職ができず悩んでいた時だったと思う。
アヴちゃんの言葉に刺され、心の血液として涙が溢れてしまった。
アヴちゃん自身も学生時代きっと悩んできたのだと思う。
ベースのやしちゃんとは学生時代から一緒らしいけど、
「ポテチみたいにさ、今日はうすしお、今日はのり塩って性別も今日はこれ、明日はこれって決めれたらいいのにね」
って言われたことを話していた。
アヴちゃんの性別不明が今はかっこよく見えるけど、学生時代に性別不明で生きていくことがどれだけ難しいかは想像にかたくない。
自分の血と汗と涙をそのまま曲として流してくれるのが女王蜂の魅力だと思う。
女王蜂、もっと色んな人に知って欲しいってずっと思い続けてて、タイアップも少しづつされはじめ、YouTubeやTikTokで曲が流行り始めた頃、メフィストが推しの子のEDに採用された。
友達に「かっこいいアクアのキャラソンみたいなやつ」って言われて、そうなのよ!!!女王蜂のタイアップいいのよ!!!オシャレなのよ!!!ってめっちゃ主張してしまった。
今わたしはこの記事を、アヴちゃんの誕生日ライブの行きの電車で書いている。
コロナ禍でライブに行けなかったり、わたし自身の体調の問題もあってなかなか動けなかったので、4年振りとかになる女王蜂のライブ。
前に女王蜂のライブに行くって言ったら、そういうのあるんだー。みたいな反応しか貰えなかった中「女王蜂って推しの子の?いいなー」ってなるのが嬉しい。
また1歩鋭さの増した女王蜂に蜂の巣にされに行ってきます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?