爪を噛むのをやめた話
私は物心ついたころから30年以上深爪だった。爪を噛む癖が治らず、伸びても爪を噛んで引きちぎっていたからだ。今日はそんな私が爪を噛むことをやめて伸ばした経験談の話。写真で見た方が早いので写真を載せまくるが汚い時が本当にぐろいのて注意してほしい。
爪もないし指も汚いので深爪が酷かった頃の写真はほぼない。写真に残すのが本当に嫌だった。でも伸ばすために比較対象として欲しかったのでなんとか見つけてきた。
親指は所謂まむし指と呼ばれる遺伝型の指をしているのだが、噛みすぎてこうなっていた。
そして今、爪を噛むことをやめてちゃんとプロにネイルしてもらった現在がこれだ。
今の爪を自分で見て「これは本当に私の爪なのか」と思ってしまう。
休職中の職場の同僚に本職がネイリストの友人がいる。前々から「ネイルは同僚価格でやってあげるよ」と言われていたが正直私には関係のないと思っていた。
よく爪を噛む理由で「ストレス」とか「親からの愛情不足」とか「欲求不満」とか言われているが、私が爪を噛んでいた理由は特にない。爪が伸びてきて白い部分が気になるから噛んでちぎっていた。別にストレスとかなんでもなくて、ただそこに爪があるから噛んでいただけだ。
数年前に「深爪を育てたらこんなに綺麗になった」とバズったツイートを見たことがあるのだが、それを見ても何もしなかった。
昔親から「あんたは爪を噛みすぎて一生爪が伸びなくなった」と言われたのを信じていたのだ。
何の根拠もなく、親からするとそんなこと言ったっけ?ってくらいだと思うが私は35歳になるまでずっとそれを信じていて、一生爪は伸びないと思っていた。
だから育爪とか深爪矯正サロンとかも一切興味がなかった。一生爪が伸びないという思い込みは相当根強く爪に関して人生を諦めていた。
周りの友達がネイルを楽しんでいるのが羨ましいなとは思っていたが、羨ましくて悔しいまで至らなかった。だって私爪伸びないし。
2022年10月、20年以上前から大好きで9年間活動休止していたバンドの復活ライブが予定されていた。もちろんチケットを取ってすごく楽しみにしていた。バンドのイメージカラーは青だ。歌の中でも青が沢山出てくるし、ファンクラブ名もブルーなくらい青だ。
私は極端なくらい髪の色を派手にするのが大好きなのでもちろんライブには青髪で行くと決めていた。髪色を決めた時にふと、ネイリストの友人が安くでネイルをしてくれる話を思い出した。
爪も青にしたら絶対に可愛い。
が、私には爪がない。
爪がないとは言え、人間なので爪は伸びる。それを噛みちぎっていただけなのでそれさえ我慢すれば何とかなるんじゃないか。詳しいことは全部プロに丸投げして、とりあえず爪を噛むことをやめよう。
そう思って爪を噛むことを我慢することにした。9月くらいの話だ。
目標があるというのは分かりやすく頑張れる。とは言えただ爪を噛むのをやめて、伸ばすだけなので今考えると甘皮びっしりでささくれも酷く爪は扇形に横に伸びていた。
でもどうすればいいかわからなかったし、友人が何とかするやろって感じでとにかく爪を噛むことだけはやめようといった一ヶ月だった。
ライブの二日前、ネイリストの友人に個人的にネイルをやってもらった。
本当はネイルサロンに行ってみたかったが今まで爪がなかった人からするとあまりにハードルが高い。
その点、友人は私が深爪なのもまむし指なのも知っていたので気が楽だった。特に何のケアもしたことがない私のネイルはまず色を塗り始める前の爪の形を形成するのに一時間近くかかった。
どういうものか見ていたのだが、びっしりだった余分な皮をきれいに削ぎ落として爪やすりで扇形に伸びた爪を整えて、多分他にも沢山のことをしてくれていたのだが素人すぎて何も分からなかった。
塗り始める前に「見て、爪ができたよ!」と言われた。人生で初めて爪というものが綺麗にできあがっており、その時点でめちゃくちゃ感動した。
今見るとまだまだ小さくて短い爪なのだが今の今までがあれだったせいで「うわ!爪だ!」と思ってしまった。
その日は青のワンカラーに、バンドのモチーフのひまわりを入れてもらった。
ライブ後もしばらく「爪!可愛い!」と思っていたし、何よりライブの楽しい思い出を思い出せるのが嬉しかった。
しばらく経って、妙なことに気づいた。私は爪とは指先の白い部分がただ伸びるだけと思っていたのだが、なんか根本のピンクが見えている。別にしてネイルが浮いたりしているわけでもなく、ピンクの部分(ネイルベッドというらしい)が伸びている……これは爪を育てることができるのでは?と生まれて初めて思った。
三週間後、青のネイルをオフした日に「爪を育ててみよう」と思いまず最初にやったのは必要なアイテムを揃えることと、爪育成アカウントを作ることだった。
爪は一ヶ月で3ミリしか伸びないらしい、個人差もあると思うがそんな微妙な変化は毎日記録でも取ってない限り気づかないだろうし、SNS廃人の私には爪のアカウントを作るのは最適解だ。
爪育成アカウントを作って、実際やっている人を調べたらビックリするくらい多数の人が爪を伸ばすために努力していた。私は勝手にこんなに深爪なのは自分だけだと思っていたので驚いた。
とにかく保湿が大事!と書かれていたので初めてネイルオイルを買った。ハンドクリームは一応持ってはいたがほぼ使ってなかったので新しく新調した。
ネイルオイルは100均、ハンドクリームはドラッグストアで買った。未だに重宝してるいるので、成分とか調べるといいやつ買った方がいいと思うのだがど素人からするとそれで十分だ。
水に手を晒したらハンドクリームを塗って、家ではネイルオイルを使った。そして毎日爪の写真を撮ってツイートした。
同じような境遇の人だからこそ、世界は優しい。
少しでも伸びたら「伸びましたね!」と褒めてくれるし、折れたり割れたらしたら一緒に悲しんでくれた。
とにかく保湿を頑張りまくって、ネイルオイルは三週間足らずで一瓶なくなったし、ハンドクリームは二週間でなくなった。安価で買ってよかったと本当に思った。
いつの間にか爪を噛むことはもう忘れていた。
起きたら爪が全部なくなっていて落ち込むという悪夢まで見るようになった。
爪を伸ばし始めて、いかに自分が今まで爪を道具にしていたのか知った。仕事で業務用漂白剤で食器を漂白することがあるのだが、そこに素手で手を突っ込んでいたくらいどうでも良かった。
失うものもなければ守るものもなかったので何とも思ってなかった。
外出の際に缶ジュースを開ける時用にアイスクリームスプーンを買って持ち歩いた、今まで指先で何とかしてきたもの(爪はなかったけど)はほぼ道具を使って、なるべく傷つかないよう心がけた。
それでも私は飲食店勤務なので、ようやく伸び始めた弱い爪はめちゃくちゃ折れたし割れた。
爪のことが何も分からないので、割れたり折れたりするたびにネイリストの友人に泣きついた。一ヶ月3ミリ程度の努力を失うのが嫌すぎた。
伸ばし始めて二ヶ月で5本の指の爪が割れたり折れたりしたのだが、なんとかプロの力で修正してもらった。改めてプロってすげ〜!
1月、私が爪を伸ばすきっかけになってくれたバンドの次のライブだった。またネイルをお願いした。というかこの日のために伸ばしたし保湿も頑張ったし爪を守った。先日書いた通り既にこの時点でメンタル的に心は折れていたが爪だけは折らないよう頑張った。
3ヶ月近く、毎日爪の画像を投稿してネイルオイルを塗ってハンドクリームを塗ってやってもらったネイル。
なにがって爪の伸び具合にネイリストがビックリしていた。1月のネイルの目標はバンドのロゴを入れることだったのだが、それも綺麗に入った。モチーフのひまわりも前回より大きく派手目に入れられてとても満足なネイルができた。
この頃くらいから、必死で深爪を隠して生きていた私からすると考えられないくらい自然にネイルの話を他の人とできるようになっていた。そのネイル可愛いねーとか、次はこういうネイルがしたいんだよねーとか、何ヶ月か前の私からすると本当に考えられない。
私は極度に自己肯定感が低く自分のことを頑張ってるとか思えない性格なのだが、爪に関してだけはめちゃくちゃ頑張ったと思う。
そして昨日、ライブのためのネイルをオフして違う色にした。オフした後すぐまたネイルをしたのは、やっぱりジェルネイルしていると爪が折れるだの割れるだのがなかったのがでかい。
3月はまたライブで当然に青にするので、今回は仮面ライダーWのサイクロンジョーカー仕様にしてもらった。
もちろん友人にやってもらったのだが、同僚内でその人にやってもらうと気軽なのと割と安価でやってくれるので職場の人はほぼみんなその人にやってもらっている。
2ヶ月前入ってきた後輩が私がネイルを終わった後、前回のネイルが浮いてきて気になるとかでお直ししてもらっていてなんとなくそれを見ていた。
彼女は深爪気味だった。とは言え爪を噛んでいた全盛期の私ほどではなく爪育成始めて10日経ったくらいには爪はあった。本当に爪がなかったので、あれくらいなら爪はあると私は思っている。私のネイルを見て「それ、本当に自爪ですか?」と聞かれた。爪を褒められ慣れてないので、褒められるとどうすればいいかわからないのだが、私が酷かった時の写真を見せて「爪って伸びるよ!」と言っておいた。
爪噛みをやめて5ヶ月以上、ちゃんとケアし始めて100日近く。でもまだ私の理想型ではない。ネイルベッドをもっと伸ばしたい。そしてもっと可愛いネイルをたくさんしたい。
爪育成はまだまだ続けるし、爪育成アカウントも続行中だ。爪に完成系などないと私は思う。爪育成アカウントでも「もう十分では?」と思う人がまだまだ高みを目指している。
でも今の私なら少し胸を張って言える。
爪は伸びます。
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