夢の話をする人

気づけば毎月大量の本を買っている。
ただでさえ、本が積み上がりすぎて家がちょっとした文豪の部屋みたいになってるのにも関わらず
それでもまた友達から本を借りる仕末

読まなきゃいけない本、いわゆる本の借金が重すぎて逆に身動きがとれなくなってしまった。
本の多重債務者になっている。

この、水原一平ばりの本の負債をどうにかしなければと思って、昨日はビールでも飲みながら一冊読もうと、一人で近所の居酒屋に行った。

すると着席するやいなや、隣の席に座っていた男二人組に声をかけられた。

一人は大谷翔平の球団のニューエラを被った男と、もう一人はやたらKOHHに顔が似ている細身の男だった。

どちらも浅黒いのでなんとなく建設業関係の人たちかな、と思った。

「ひとりできたんですか?」
「ひとりできて瓶ビールかっこいいですね!」
「肌綺麗ですね」
「なぁ、ナツナ(あの夏菜じゃなくてただのこいつらの友達)に似てへん?!」

など色々な事を短時間でたくさんのたまってきた。
これはいわゆるナンパと呼ばれるやつかもしれないな、とおもって一度話を聞いてみることにした。

大谷翔平帽子の男がやたらと喋りかけてくる。
そしてその態度は卓球の球のように軽い

昔つきあっていた彼氏とかなり似たような軽さの男だった。
経験上わたしはこの手のタイプの男と全く気が合わない。
気が合わないけども、その軽々しさを俯瞰で見て鼻で笑うという見方でなら、付き合いはできるので、一度会話をしてみた。

建設業関係と思いきやなんとラッパーをしているらしい。
吹き出しそうになるのを抑えながら、引き続き会話を続けた。

私のことを割と懐が広いやつと見たのかしらないが、さっきまで色々敬語で褒めてきたのに、突然
「変子やなぁー!」だの
「学校にこーゆう、興味湧く先生おったわぁ!」
「先生っぽい!」
だの、普通に失礼なことを言い出した。

この失礼な感じは、最近色んなところで感じていて、私はただ会話してるだけなのに
「女っぽくない」
「思ってたテンションと違う」
と言われることが爆裂に増えた。
どうしようもないことなので落ち込んでいる。

話を戻すけど、とにかくこの大谷翔平帽子、喋れども喋れども本当にラッパーなのか疑わしいくらい浅い
ラッパーってのは、見た目はチャラいけど色々考えてる人のことを指すと私は思ってる
でもこいつは見た目も中身もチャラっチャラ。
ただその薄っぺらさは、バカ女達から適度にモテそうではある。

一方でKOHHに似てる方は落ち着いていて思慮深い感じだった。
「あんたの方がラッパー向いてるんちゃう?」と言いたかった。
見た目も中身もかなりKOHHだった。
でもKOHHは、音楽と全く関係ない運送業をしているらしい。

才能のなさそうな大谷翔平ラッパーは、名前が
「sir(サー)」というらしい。

、、、

sir(サー)?!?!?!

爆笑

福原愛かよ!

でも相手はいたって真剣だ。
しまいには
「sir kid(サーキッド)っていう名前に変えようか迷ってる。だって俺、めっちゃkid(キッド)って感じやろ?!」
と言い出した。

爆笑

「鈴鹿サーキットから営業の依頼きそうでええやん」と言う私の返事は綺麗にスルーされた。

失礼な発言が無ければもっと真摯に話を聞いてやったが、この大谷翔平帽子あらためsir(サー)の言う事はまるで聞いてられなかった。

「にんげんって、どこからはじまったんやとおもう?」
「おれは、細胞やとおもう」

sir(サー)、もうお前その細胞に戻って死んどけ!
二度とラッパーですなんて言葉口にするんじゃねえ。

今日こそは本を読むぞ。




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