M活

2日前から、出来るだけサングラスをかけて生活している。
それを私は自分で勝手に、みうらじゅんに少しでも近づくための精神的活動、略して「M活」と称している。
決してSMプレイの練習を普段からしているという意味ではない。

みうらじゅんの魅力に気がついてから早数週間が経った。
その期間で私は、本屋で彼の作品を見つけると迷わずに即買いし、彼が原作になった映画を観、YouTubeにあがっているすべてのみうらじゅん関連の動画を見漁り
挙げ句の果てには、男に尻を撫でられている時でも、みうらじゅんのYouTubeを熱心に聞いている始末だった。
私が熱心にみうらじゅんのことを語れば語るほど、男は白けて夜の暗闇も白けていった。

MJ(みうらじゅん)を知る前の私だったら、当然その恥戯に付き合っていただろう。
だけども、彼の事を考えていると、
女子校時代の処女まっしぐらな頃の自分に戻るのだ。

気持ちは処女に戻っていながら、現実は処女の概念と全く反対の事が行われている、よくわからない矛盾な瞬間でも…
とにかくみうらじゅんが勝つのだ。

この時に私の中の、みうらじゅんへの愛は本物だと強く自覚した。

本気で、彼と一緒になりたい(変な意味じゃなく)
本気で彼になりたい
本気で彼のような生き方をしたい。。。

じゃあ今のちっぽけな自分に何が出来るか?

それは彼と全く同じサングラスをつけることだ。

そういうわけで先日初めて眼鏡屋さんに行った。

私は元々目が少しも悪くないので、眼鏡屋さんに入る時かなり緊張した。
しかも普通のメガネを探しているわけでは無く、みうらじゅんが掛けてるサングラスを探しに来ているわけだから、どういう風に店員さんに声をかけるべきかだいぶ迷った。

高2の時に初めてできた彼氏は、私が梅田のNU茶屋町で声をかけたことがきっかけで付き合う事になったのだが
不覚な事に、その眼鏡屋さんもNU茶屋町にあった。

NU茶屋町で突然に…
思い切って何かに踏み込むとき、私はいつもNU茶屋町にいる。

当然店員さんは、私が眼鏡を物色している間、「いつでもなんでも聞いてくださいね。」と声をかけてくれた。

本当になんでも聞くよ?

気づいたら私は、「氷の微笑」のシャロン・ストーンくらい挑戦的な目つきになっていた。
唯一の違いは、シャロンは刑事の男の前でスカートの中を見えるか見えないかくらいの絶妙な塩梅で脚を大胆に組み替えること。
私は「みうらじゅんが掛けてるサングラスと全く同じものをください」という一言をクソ真面目に伝えること。

時は来た。(Time has come)

私「あの…みうらじゅん が掛けてるサングラスはどれですか?」
店員「…はい?」
私「あ、えっと、みうらじゅん がいつも掛けてる横長のメガネが欲しいんです。調べたらここの店のものだと書いていたので…」

もうどうにでもなれ!
私は全てを言い切った後、軽く目を閉じた。
もう普通の女には戻らないと決めたから…

店員さんは優しかった。
この言葉を聞いた途端、彼はiPadでみうらじゅんを画像検索して、店中のメガネの形を比較しながらあーでもないこーでもないと言ってくれた。

そうやってやっと理想のサングラスが出来上がった。
色々カスタマイズが必要なこともあり、今日中には渡せないとのことだった。

まさかのオーダーメイド。そしてそのお値段ざっと四万円。

私からしたらちっとも高くなかった。
試着した時の胸の高鳴り------------。

初めて男の子となんばパークスでキスをした時よりもドキドキした。
だって、掛けただけで一気にMJに近づけてるような錯覚を起こすくらい、全くおなじサングラスだったから。

それから何度も掛けてははずし、掛けてははずしを繰り返して、私の顔にフィットするよう調節していただき、やっと私の手元にMJグラサンが…

嬉しくて嬉しくて、すぐ何人かの友達に見せに行った。
「それGENTLE MONSTER?イケてるやん!」

結局は、今流行りのメガネを掛けてるファッション野郎と間違われる始末だった。

まだまだこの活動に意義があるかどうかは相当な眉唾物だが、私は今のところこれで満足している。

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