英トラス政権はなぜ失敗したのか？MMTは機能しない？
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では、ここから本題です。
英トラス政権が就任からわずか1か月半で撤退しました。
理由は、経済政策の失敗により、健全な政権運営をできなくなってしまったためです。
経済政策の失敗とは具体的に何でしょうか？
トラス政権の主な公約はこれ。
大規模減税
エネルギー価格高騰対策としての補助金
トラス氏は首相就任後、すぐさま公約を実行しました。
しかし、この政策が発表されるやいなや英ポンド、英国債が大暴落！！
ポンドドル
英10年債価格
各種メディアではこの暴落の原因を「英政府の財政不安」と説明。
確かに、政策実行のための財源は全て国債となっいました。
この市場混乱を背景に、世論や政党内から猛バッシングを受け、トラス政権はわずか1か月半で退陣に追い込まれたのです。
ここまでがトラス政権撤退の顛末です。
これを見て私は少し疑問を持ちました。
それは、国債や通貨暴落の理由が「英政府の財政不安」となっている点。
なぜなら、イギリスは通貨発行権があるため、自国通貨建て国債のデフォルトリスクはないためです。
仮に財政不安を理由に、国債が暴落するのであれば、日本国債はとっくに暴落しているはずです。
以下は日本とイギリスのGDP対比の政府総債務残高です。
つまり、財政不安を言うのであれば、日本の方が財政は悪いのです。
ところが、日本の国債は暴落していません。
日本円は米金利上昇によってかなり円安になってますが、米金利上昇前に「円が暴落」という状況にはありませんでした。
すると「財政不安」というのは、国債及び通貨暴落の理由とはならなそうです。
では英国債、英ポンド暴落のほんとの原因は何でしょうか？
それはまさしく「インフレの悪化」だと思います。
以下は英国のコアCPIの前年対比の推移です。
世界各国と同様、今のイギリスも高インフレに苦しんでいます。
こんな中、大規模な減税と、大規模な補助金を出したら、インフレは更に加速します。
但し、ここでこんな疑問がわいてくることでしょう？
「米国の場合、インフレ悪化は金利上昇を誘発させるため、史上まれに見るドル高になっている。なぜ、英国のインフレ悪化はポンド安になるのか？」
と。
確かになぜイギリスの場合、インフレ悪化がポンド安につながってしまったのでしょうか？
これは「インフレ率を抑制する姿勢の違い」だと考えられます。
米国の場合、中央銀行も財務省もインフレ抑制をコミットしています。
米国でも今夏、巨額財政政策が成立しましたが、そこではしっかり増税などによる国債以外の財源が確保されており、インフレに配慮がされています。
一方、イギリスは高インフレ下において財源を用意しない巨額財政政策を実行しようとしてしまい、これは単純にインフレを促進してしまいます。
高インフレが続くと、当然通貨価値は下がります。
つまり、英国政府はマーケットに向かって「ポンドの通貨価値を守る意思がない」ことを宣言してしまったのです。
よって英ポンドの大暴落が起こってしまったのです。
これが英国債及び英ポンド暴落の原因と考えられます。
じゃあ日本はどうか。
日本でも昨今、一部野党を中心に財務省の緊縮財政が問題視されており、日本経済復興のためには減税や財政支出拡大が必要！と叫ばれています。
これは、日本は長らくデフレ・低インフレ（1%以下）が続いてきたからなんです。つまり需要が足りないデフレギャップがあったのです。
このような状況で財政支出をしても通貨価値は保てます。
ところが、日本でも最新（2022年9月分）のコアコアCPIは+1.8%となりました。日銀が目標としてる2%の水準まであと少しとなってきました。
主因は円安による輸入物価の上昇とはいえ、ここで大規模な減税などを行って、インフレを加速させるようなことがあると、イギリスの二の舞になる可能性もありえるかもしれません。
このような時は財政政策はきちんと規律をもって対応していく必要があり層です。（但し、デフレ下ではもっと財政拡大をしてほしいものですが）
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