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支援付き住宅の全国展開 特定非営利活動法人あきた結いネットの状況


「コロナ緊急|家や仕事を失う人をひとりにしない支援を」から始まり、その後もコロナ緊急事業から生活困窮者全般への支援と発展していった「支援付き住宅の全国展開」。各地で担っていくパートナー団体の一つであり、秋田県を中心に活動する、特定非営利活動法人あきた結いネットの坂下理事にお話しをお伺いしました。



ーそれではまずあきた結いネットがどのような支援事業をしていらっしゃるか教えていただけますか?


坂下:あきた結いネットは地域を巻き込んだいろんな支援活動をメインに2013年の10月に法人化しました。立ち上げ以前に私は4年ほど秋田県地域生活定着支援センターの相談員をしていたことがあり、当時秋田県にはシェルターや、罪を犯した方の受け入れをする団体が少なかったので秋田県にも作っていく目的の下、立ち上がった組織です。

最初は出所者の方たちを受け入れる自立準備ホームからスタートし、サブリースの原型になる相談支援付き住宅という名称の事業を2014年に始めました。その物件に入られる方たちが自分たちでアパートを借りられるように身元保証の事業も2015年にスタートしています。また、受け入れる方々の中に障がいのある方たちがいらっしゃることがわかり、グループホームの設立・就労支援の事業というような形で支援の幅も広がりました。

法人のミッションとして「地域にある資源を最大限に生かして、無いものは創る!」ということを掲げているので、できる限り地域資源を活用しながら、それでも隙間になるものは熱い想いで創り上げる努力をしてきました。秋田県になかったホームレス支援団体としての活動や身元保証の事業などを展開しています。
事業の主軸として「断らないよろず相談窓口」を法人設立時から取り組んでおります。その中で相談が多いのは不安定居住の方からです。やはり住む場所の問題は全国各地で起きているのだと改めて感じています。
また1年ほど前から秋田市の繁華街に大きな2階建ての建物を借り上げて、障がいのある方たちが作った商品や作品をセレクトして販売するショップや、就労継続支援B型としての訓練スペース、地域の方に無料で貸し出しをしているオープンスペース(厨房、ミニホール、ワーキングスペースなど)の運営にも取り組んでいます。


ー現在何部屋の生活支援付き住宅を運営していますか?またどのような方が利用されていますか?また事業を通して感じたことや気づいたことなどあれば教えてください。


坂下:サブリース物件は3部屋分の予算をいただきましたので、秋田市の八橋(やばせ)に2部屋、こちらの物件は市役所から徒歩5分で隣にはコンビニがあり利便性が良いです。秋田市山王にも市役所からすごく近いメインの地域に1部屋あり、計3部屋運営しています。家賃は2万9000円で借りているものを、秋田県の生活保護の家賃扶助の基準の3万2000円に設定し、その差額をいただいてます。
入居者の概要としては、全ての物件に男性が入居されています。年代は30代40代50代とバラバラです。収入源についても生活保護の方もいれば、フルタイム就労されている方もいらっしゃいます。精神疾患がある方も利用されていますし、それぞれ特色の違う3名が利用しています。
これは以前からずっとそうなんですが、精神疾患がある方に物件を貸したくないオーナーさんは一定数いらっしゃって、そこを開示するかしないかはご本人の選択ではあるんですが、やはり福祉サービスの利用も考えるとある程度その不動産会社さんやオーナーさんにもご理解いただいて、契約に結び付けたいと私達は考えています。福祉サービスがサポートしていることを伝えても物件の確保が難しく、本来であれば一人暮らしが目指せる方たちがそこから漏れてしまう。そういった理由で障害をお持ちの方はグループホームをはじめとした住居に住み続けなければならないという実態もあって、秋田の場合は特にそういう精神疾患のある方たちにこういったサブリースの物件を提供していく重要性を感じています。また秋田県ではサブリース事業の前例がなかったため、物件のオーナーさんや不動産会社さんからの理解を得ることも大変で、家と大家さんとの間に加えて入居される方との間にも賃貸保証の契約を入れてほしいと言われ現場が混乱してしまったというような実態がありました。最終的には二重保証とはならずに契約できましたが。

あきた結いネットとしましては、家賃収入の差額で安定的な収入が得られることで、金額的にはすごく大きいものではないですが入居者がいる間は数千円が毎月入ってくるという安心感があります。ただ、秋田市の生活保護の家賃扶助基準以下で物件を探すのは大変でした。入居される方に関しては、入居時に保証人が不要で、家具・家電・什器がすでに揃っていることで負担が軽減できるため、次のステップアップに繋がりやすく非常に意義があると感じています。
地域性にも依るのでしょうが、このようにプラスの部分と実際やってみてなかなか難しい部分と両方ありました。


ーそもそもなぜ支援付き住宅のような取り組みが必要なのか、一般の人にもわかりやすく御説明をいただいてもいいでしょうか?


坂下:一般的には身内が連帯保証しなくても賃貸保証をする会社を使って、民間の住居を借りるのでしょうけれども、そこをクリアできない方もいらっしゃいます。また経済的に家具・家電・什器布団を揃えることが難しい方はやっぱり一定数いらっしゃって、そこを事業として準備することによって一人暮らしができる能力のある方たちがいち早く地域での安定した生活に移行できるというメリットがあると感じています。
今までは私達が全部持ち出しでやってきていましたが、それはそれで限界があるので、やはり何かしら補助金があることによってより多くの不安定居住をされてる方たちをサポートできるメリットがあると感じています。


ー最後に支援活動を通じて何かを伝えたいことや、寄付者の方へ向けてメッセージがありましたらお願いします。


坂下:厚労省の調査では秋田県のホームレス数はずっとゼロなんです。では私達は一体何の活動をずっとしているんだろうなっていつも思うんですけど(笑)。その調査の仕方がどうかという議論もありますが、多くの人がホームレス(不安定居住にある人)の存在を知ってるはずなのに無いものにしてしまっているこの現状はなんだろう、どうすればそれを自分のことの様に考えるようになってもらえるのだろうか模索し続けた10年でした。
「不安定居住の方がいますよ」と話をしても興味がある人のアンテナにしか引っかからないものを、セレクトショップを運営したりオープンスペースを地域に無料で貸し出す取り組みの中で地域の人たちと交流することで今まで出会わなかった人たちと繋がることが出来ています。
生活困窮者支援をする団体はもっといろんな見せ方をしてもいいなと思っていて、例えばセレクトショップに来られる方はホームレス支援団体が運営すると思わなかったとおっしゃってくれて、地元のタウン情報誌にも「おしゃれ雑貨店」として載せてもらっているので、そういったストレートな伝え方だけじゃなくても入り口が増える、より多くの人に知ってもらう努力を自分たちの団体としてやっていくことで、もっと私たちの支援を必要としている方に支援を届けることができるようになると思っています。
引き続き抱樸さんをはじめ居住支援に取り組む全国の団体へのお力添えをお願い申し上げます。


ー本日はお忙しい中、貴重なお話どうもありがとうございました。

いただきましたサポートはNPO法人抱樸の活動資金にさせていただきます。