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支援付き住宅の全国展開 特定非営利活動法人 知多地域権利擁護支援センターの状況

「コロナ緊急|家や仕事を失う人をひとりにしない支援を」から始まり、その後もコロナ緊急事業から生活困窮者全般への支援と発展していった「支援付き住宅の全国展開」。各地で担っていくパートナー団体の一つであり、愛知県知多半島を中心に活動する、特定非営利活動法人 知多地域権利擁護支援センターの今井さんにお話しをお伺いしました。

ーそれではまず特定非営利活動法人 知多地域権利擁護支援センターがどのような支援事業をしていらっしゃるか教えていただけますか?


今井:地域権利擁護支援センターで理事長をしております今井と申します。私たちの主な事業は、愛知県の知多半島4市5町の行政から委託料をいただいて成年後見人の事業をやっておりして、今年で15年目になります。「成年後見制度」とは、精神上の障がいによって判断能力が十分でない方(認知症高齢者、知的障がい者、精神障がい者など)が不利益を被らないように、預貯金の管理(財産管理)や日常生活のさまざまな契約行為(身上監護)などを本人に代わって行ったり、援助をしたりして個人の権利を守る制度で、本人の判断できる状態に応じて成年後見人・保佐人・補助人の3つの類型に分かれ、支援の内容も類型によって変わります。
本来、ご本人さんの代わりに通帳やお金を預かり管理して支払いをしたり、働くときのときの契約の代理行などが主な役割ですが、私達の場合は例えば施設に入られる方が飼ってた犬の貰い手を探したり、家を処分しなければならない方の家を代行で売ったり、引っ越しの手伝いをしたり、正直申し上げて通常の成年後見人が行う支援の範囲を超えたこともやっております。


ー支援付き住宅事業はどのような経緯で始められたのでしょうか?


今井:私たちは成年後見以外に「ライフエンディング」という身寄りのない方の身元保証・死後事務・住まいに関する生活全般のことに関わる取り組みをしていまして、その中で判断能力が低下していらしたり、お金もなかったり、人付き合いがうまくないような方の家探しは本当に大変で、大きな課題だと感じていました。そこで私たちの理想を実現する家を作るべく抱樸さんのパートナー団体のひとつとして手を挙げさせていただき、支援付き住宅の事業を始めました。


ー「令和3年度福祉医療機構社会福祉振興助成事業 『空き家活用型の支援付サブリース住宅拡充と事業継続性を確保する事業』」として昨年2022年に選出されて現在どのように運営されていますか?


今井:まだ今年始めたばかりでうまく運用が進んでいないのが現状ではありますが、一件の入居の契約が済んでいて、現在ご本人と入居のタイミングを伺っています。他にも私がNPOの中間支援をしていた頃に出会った市役所の生涯学習課の課長さんを経由して相談が入り話を進めておりまして、これからまさにその2件の支援付き住宅の運用が始まっていく、という状況です。
私たちが支援付き住宅を通して支援していきたいターゲット層は、成年後見人や生活保護の制度から漏れてしまった人たちでして、例えばご家庭で問題を抱えていらっしゃって身動きが取れなくて困ってらっしゃる方でしたり、生活保護受給者ではなく判断能力も全くないわけでもないけれども、うまく生活ができなかったり、お金のやりくりができない、そんな今までの支援の文脈にかからなかった方たちの受け皿になればと思っています。

愛知県には自動車工場やそれに関連する複数の会社があるので、日本全国からたくさんの方が働きに来られます。そこでうまく働ける方や家族ができた方はいいのですが、仕事がうまくできずに会社との契約を切られて寮から追い出された独り身の方は途端に逼迫した状況に陥ってしまいます。
例えば抱樸さんはホームレスの方中心に、NPO法人つながる鹿児島さんは生活保護の方を中心に互助会をやられていますが、私たちは、ホームレスでもなくて、生活保護でなくても、一人で心細い人たちに向けて互助会をやっていて、おしるこ会といっておしるこを食べながら今後のことを話したり、ペット問題のことを話したり、また「知多半島ろう(老・law)スクール」といって葬式や離婚のことなどを学校形式で学ぶ場を7,8年やっていまして、それをベースに他の活動と並行して互助会作りに励んでいます。互助会に参加することで、今まで他人のことに無関心だった人が進んで人のことをするようになったり、助け合う関係性の中で存在意義を感じてもらえたらいいなと思っております。支援付き住宅と合わせていろいろな事業をやっていくことで一人ぼっちで生きている人に的確に支援を届けられればと思っています。



ー最後にこれからの時代で知多地域権利擁護支援センターが取り組んでいる後見人事業と支援付き住宅事業をやっていくことにどのような意義があるとお考えですか?


今井:本来人は自分一人だけで生きていくことは不可能で、周りの人たちと関わって助け合いながら生きていかなければ仕方がないと思っています。それは自分は困ってないと思って暮らしている人に対しても言えることです。しかし自己責任論というのは、例えば私たちの団体で受け入れるインターン生など子供たちや若い子たちにも根深く浸透していて、なんだか絶対に失敗できない、間違ったことが言えないと思っている子がとても多いです。
60歳くらいになる私やプロの現場で働く職員から言わせると、若い子たちの失敗なんて失敗の内に入らないくらいの小さなことなんですが、それでも彼らは失敗をとても恐れていますし、ちゃんとしなきゃいけないと聞かされて育てられてることも原因なのか、自己責任論が社会に蔓延しているからか、生き難さを感じている子は多いのではないかと思います。
間違ったり失敗することは誰にでもあるのだから、それを許さないのではなく、間違いを犯してしまっても生きていける、そんな赦しあえる社会になればいいなと思っています。
私たちの職場では家にひきこもっていた過去がある人や、精神障害でフルタイムで働けないような方がたくさん働いています。別に週5日で1日8時間も働かなくていいんです。これからの社会では、そういう人たちと私たちのようなフルタイムで働ける人たちがうまく協力し合って社会を創っていかなければならないと感じています。フルタイム勤務出来る人以外は雇わないのではなく、そうじゃない人たちもちゃんと働けるような仕組みを作るのが企業や会社の本来の形ではないかと思っています。多様な人たちを組み合わせながらどうやって会社が動くようになるか、どうすれば人が豊かに暮らせるか考えてほしいと思います。また支援付き住宅事業も一般社会や支援の隙間からこぼれ落ちた人たちの受け皿になる重大な役割がありますので、今後とも本プロジェクトや私たちを含むそれぞれの団体さんの活動をサポートしていただければと思っております。


ー本日はお忙しい中、貴重なお話どうもありがとうございました。


いただきましたサポートはNPO法人抱樸の活動資金にさせていただきます。