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支援付き住宅の全国展開 NPO法人ワンファミリー仙台の状況


「コロナ緊急|家や仕事を失う人をひとりにしない支援を」から始まり、その後もコロナ緊急事業から生活困窮者全般への支援と発展していった「支援付き住宅の全国展開」。各地で担っていくパートナー団体の一つであり、宮城県仙台市で活動をする NPO法人ワンファミリー仙台の佐藤さんにお話を伺いました。


ーそれではまずワンファミリー仙台がどのような支援事業をしていらっしゃるか教えていただけますか?


佐藤:ホームレスの自立をめざしてワンファミリー仙台が結成されたのは2002年です。ちょうどホームレスの増加が社会問題としてクローズアップされはじめた頃、路上生活者からの「朝食を得ることで一日の生命線が保たれる」という多くの声に応えるために始めた「ワンファミリー仙台 クリーンボランティア530(ゴミゼロ)」事業から活動がスタートしました。現在は炊き出しやシェルター運営など複数の事業に取り組んでいます。現在仙台市、宮城県、その他含めて26部屋の個室シェルターを確保しています。さらにシェルター以外にも無料低額宿泊所にて88名、日常生活支援住居施設にて24名、障害のグループホームにて17名、計129名の方をサポートしております。

ー無料低額宿泊所、日常生活支援住居施設とシェルターにどのような違いがあるのでしょうか?

佐藤:まずシェルターは急を要する方に衣食住を整えた状態で受け入れられる施設ですので、利用料の負担などはご本人に求めるものではなく、県や市町村さんからいただいています。現在コロナ禍なので個室のお部屋をご用意しております。シェルターの残念なところは住民票を移して住む住宅ではなく、あくまで緊急時の一時的な住居で、体勢を立て直しつつその後はしかるべき次の居住先を一緒に探さなければなりません。
対して無低(無料低額宿泊所)というのは保証人・敷金を求めない福祉施設の一つで、家賃と生活支援費等をご本人さんに負担していただいて住まうことができる居住施設です。無低は施設自体が住所・居所として認められるので、住民票を移し市民権を得て保険証を作ることができて生活保護申請することができますので、そこから再起を図ることができる施設です。
最後に日住(日常生活支援住居施設)はちょっと違って、職員が24時間常駐して通院同行支援や、食事の提供(3食)などの生活のケアをします。単身では生活することが難しい方が、生活保護のケースワーカーと相談した上で生活保護・ご本人の負担の2階層の支払いの構造で生活できる居住施設です。

ーどのような状況の方が住居支援の相談に来られるのでしょうか?またここ3年のコロナ禍の影響によって変わったことはありましたか?

 佐藤: 年齢層は40代50代の層が一番多く若年層はかなり少ない時期が長らく続いていたのですが、コロナ禍になり男女問わず10代、20代の若年層の方々が増えていて、現在住宅を支援している方の約9%の方が10代20代で、これは今までで一番高い割合です。
ただこれは一概にコロナの影響とも言い切れません。むしろ時代の流れで日本社会が抱えてきた問題があらわになったせいなのか、生活に困窮してしまい路上生活に行き着くより前の段階でSOSを出す方が増加しています。勿論コロナ禍の影響で生活に困窮して家がなくなってしまって相談に来られる方も当然おられるんですけれども、どちらかというとコロナ禍によってSOSを出しやすい風潮になってきているから若年層からの相談が増えているのではないかと見ています。また若年層の男女比では9対1〜8対2くらいの割合で女性が以前より増えた印象があります。
例えば発達障害が疑われていたけれど十分な療育がなされないまま大人になってしまったというケースの方をはじめ、最近「大人の発達障害」という言葉がネットニュースなどを中心に叫ばれる時代になってきた中で、もしかすると自分も発達障害かもと疑いを持ってSOSを出される方など一定数おられると感じています。
ほかにはつい最近まで順風満帆だった方がコロナ禍の影響で職を失ったり、もしくは家庭内のトラブルが原因で1人になってしまい精神的に参ってしまった方などスムーズに再起を図れる状況にない方も多く見受けられます。

ー若年層の相談が増加する中、今現在何部屋の支援付き住宅を運営されてますか?

佐藤:前回のクラウドファンディングで抱樸さんから分配していただき現在19部屋中、18部屋が稼働しています。先月自立されて東京へ移住された方が出られるまでは満室で稼働しておりました。2023年1月の時点で延べ32名の方をご案内しており、現在20代〜60代の幅広い年齢層の方にご利用いただいております。以前のように70代80代の方が中心ではなくなってきました。



ー支援付き住宅事業を始めて感じたことや気づいたこと、苦労したことなどあれば教えてください。


佐藤:実は支援付き住宅事業を始めた当初に想定していたトラブルや苦労はそれほどなかったんです。勿論大変なことは大変ですが、我々の範疇内に収まっています。これは利用者さんに何かあった時にスタッフが迅速に問題に介入していける仕組みがしっかり機能しているからだと思います。
例えばワンファミリーでは毎日のシェルター訪問、週3回の無料低額宿泊所の訪問をやっています(コロナ前は毎日の訪問。現在はコロナ感染対策として1日おきの訪問)。一件あたり1分を想定した巡回ですが、1分以内に収めないといけないわけではなく、世間話をしてもいいですし、もしご相談事項ある方はそのままお話をしていただくことですぐにアクションを起こすことができます。利用者の皆さんも訪問を毎回楽しみにしてくださっていて、仕事や用事でおられない場合電話で点呼をとったり、代わりに土日や休みの日に訪問して直接お会いするようにしています。訪問日の午前中は皆さん必ず部屋にいてくださってます。毎回逼迫した相談をするというわけでもないんですが、1日おきでも我々に会って少しでも話すことが利用者さんの生活の安心材料に繋がっているのではないかと感じます。
またお借りしている物件のひとつに無低を4部屋開設したんですけれども、この4部屋間でコミュニティを形成し相互に助け合うようになったということもあります。シェルターに入る前にアルコール依存症や薬物依存症などを抱えていて、シェルターにしかご案内できなかった頃はやっぱり職員とトラブルになってしまう方もいたのですが、無低はよりご自身が納得した状態で利用されている印象がありますので、トラブルが以前に比べて減ったかなと感じます。勿論トラブルや失敗は起こりますが、問題を抱えている人が支援付き住宅で生活し、他の利用者さんと繋がることでお互い助け合ったり相談し合えるようになることもあるので、この事業を始めてよかったと感じています。
私は福祉の学校を出ていまして、現在まで福祉1本でずっとここまで来てるんですね。この法人に勤めて今9年目ですが、改めて福祉の源流って何だったかなっていうことを考えさせられます。学校で勉強していくと高齢者福祉だったら高齢者の方のサポート、障害者福祉だったら障害者のサポートっていうふうに福祉もどんどん細分化されていくのですが、やっぱり生活困窮者支援っていうものがそもそもの福祉の源流だということをワンファミリーに勤めてから改めて気付かされました。

ー生活困窮者支援に福祉の全てが詰まっていると。そしてただ単なる一時的な居住場所ではなく、互いに助け合う場になる。本当に素晴らしいと思います。信頼関係ができてその結果問題が深刻化する前に、トラブルが解決するようになっているので、それも日常的にしっかり支援してるからっていうことですよね。


佐藤:そうですね。ただシェルターでも無低でも入居後即生活できる空間が整っていなければならず、どうしてもお金がかかるので、前回のクラウドファンディングで分けていただいたお金をふとんセットや防炎カーテン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、炊飯器、IHのクッキングヒーターとIH対応の調理器具一式や食器一式などの設備投資に短期間で有効活用させていただくことができて本当に感謝しています。
コロナの影響もあって様々なバックグラウンドを持つ方々の相談が増加傾向にありますし、この混沌とした世の中だからこそ、少し腰を据えて次の人生を考える体制を整えることができるような施設にしたいと日々頑張っています。


ーコロナに加えて円安や物価高も叫ばれていますが、利用者の方にどのような影響がありますか?

佐藤:物価高で皆さんの家計のやりくりが厳しくなっていると耳にします。やはり電気代・ガス代は上がってますし、灯油代も大幅に高騰しています。こちらは東北ですし、この大寒波で石油ストーブを使われている方も多く、節約しようにも寒くて節約できないという相談がありました。
さらに来年度増税されれば食糧や日用品、嗜好品なども値段が上がるでしょうからさらに生活が逼迫していくのではと見ています。


ー寄付者に向けて何か呼びかけたいことやメッセージがありましたらお願いします。


佐藤:関連団体の皆様も同じ思いでおられると思いますが、私どもの団体としてもこの大きな変化の中で時代に即したサポートができるように私達も変化・変革しようと意識しながら活動しています。私達支援団体はこれからも時代のニーズに対応できるよう変革し続ける団体でありたいと思っております。コロナが終わったから終わりではなく、その先のまた新たな課題にも対応できるような団体であり続けたいと思うので、引き続き抱樸さまをはじめ皆様の本プロジェクトへのお力添えをお願い申し上げます。皆さまの温かい善意に感謝申し上げ、ご報告とさせていただきます。


ー本日はお忙しい中、貴重なお話どうもありがとうございました。


いただきましたサポートはNPO法人抱樸の活動資金にさせていただきます。