見出し画像

支援付き住宅の全国展開 抱樸からのご報告

抱樸は2017年から「生活支援付き安心居住事業」を開始、今回のコロナ対策での「支援付き住宅」のモデルケースとなる住宅運営を既に北九州市において行っていました。初のクラウドファンディングに挑戦した「コロナ緊急|家や仕事を失う人をひとりにしない支援」の中心事業「支援付き住宅の全国展開」において、支援付き住宅事業を始めた経緯、そして現在の北九州市の状況を山田よりご報告します。


抱樸はホームレス支援のボランティア活動から始まり、1990年代はボランティアによる炊き出しボランティアを中心の活動をしていました。しかし炊き出しだけでは人の命を救えない、やはり路上から脱出するためには住居・仕事や生活保護が必要と考え、2000年にNPO法人化したことを機に本格的に自立支援を考えていくようになりました。
2001年から今のサブリースの原型となる事業を始めましたが、当時は法人で生活保護基準額の家賃の物件を借り上げ、生活保護基準でお貸していたので収益(支援に充当できる収入)は一切ありませんでした。
また現在のような中長期的な居住を想定したものではなく、野宿の方に支援付き住宅に入ってもらい生活保護を申請して、6ヶ月後には一般住宅に転居してもらうという中間支援の事業で、有給スタッフも当時はほとんどおらず、ボランティアスタッフを中心に利用者さんの6ヶ月間をサポートしていくという体制でした。
2002年にホームレス自立支援特別措置法というこれまでの公園などからホームレスを排除するのではなく、自立の政策を講じなさいという法律だったことを受け、2003年くらいから東京や大阪のホームレスが多い大都市に6ヶ月間利用できて食事が無償で提供される自立支援センターという施設が作られました。北九州市にも自立支援センターができ、2004年の9月に北九州から相談事業を受託する形で始まりました。それからは年間100名近い方に自立支援を行うようになったので、専従スタッフを配置していきました。
就労支援が中心だった自立支援センターは利用期限が6ヶ月です。入所者はその後アパートを借りて転居していくのが前提なのですが、やはり様々な課題をお持ちの方、具体的には軽度の知的・精神障がいのある方が非常に多く、そういった方たちが自立生活を送っていくためには、単純に就労支援だけでなく、障害手帳を取ったり、生活保護を申請したり、その後の生活のサポートも必要だということで、自立支援センターや自立支援住宅を出られた方にアフターケアをやっていく部署もつくりました。
2008年にリーマンショックが起きて生活困窮者と呼ばれる人たちが可視化されるようになり、ホームレスになる若い人も増えました。また、ホームレスになってないけれど困窮してる人たちが実は世の中たくさんいるということがわかり、2010年代以降抱樸はそういった生活困窮者の就労支援もやるようになりました。
2018年の3月にはホームレスに限らず家を確保できなくて困ってる人たちに安心・安全な物件を提供するべく、マンションのオーナーと交渉して、低額でお借りし、生活保護の家賃基準でお貸しする(サブリース家賃差益を支援経費とする)形の支援付き住宅のモデルをプラザ抱樸という名称で開始しました。


現在プラザ抱樸には、私達が本体と呼んでいる非制度のサブリース差益を支援経費とし、支援する支援付き住宅の部分、障がいのグループホーム、そして行政から支援費の一部として委託費が出る日常生活支援住居施設(無料低額宿泊施設)という三つの仕組みが入っています。非制度の支援付き住宅だけでなく、グループホームや日常生活支援住居施設という制度事業を組み込むことで、十分な数の支援員を確保できる仕組みとしています。
コロナ禍において、この支援付き住宅のモデルを全国に増やすために今回のクラウドファンディングを活用させていただきました。寄付していただいたお金で最初に全国10団体に助成させていただいて、北九州もその一部をいただいたことで、家具家電を揃えてそのまま入れるお部屋を25室増やすことができました。
この25部屋を利用された方は38名で、上は7、80代から下は10代まで年齢層はバラバラで男女問わずご利用されています。障がいのある方が多いのも特徴です。コロナの影響で仕事や住む場所を失くした方だけではなく、高齢で軽度認知症のため家が見つからない方など状況は様々です。



支援付き住宅の入居者は、それぞれの団体の出自(主たる支援対象者など)や事業内容(機能)によって、相談や紹介される方たちの属性が異なるので、単純にコロナで家を失った人たちだけでなく、ホームレス状態の方も一定数いらっしゃいます。更生保護の事業を行っている団体からの紹介で、刑務所出所者が一定数おられるパートナー団体もあります。
また当初想定してたよりも、日常的な支援が必要となる方が多くなったと感じます。
プラザ抱樸の場合は一棟に支援付き住宅を固めているので、スケールメリットがありますが、他の団体は分散している場合が多く、見守りのために支援付き住宅が入っている物件を周るだけで時間がかかり、ケアを含めなかなか大変だと思います。
支援付き住宅が他の救護施設や障がい系の施設の対象にならない、もしくはうまく適応できないなど、行き場のない方などの受け皿になることにものすごく大きな意義があると思っています。しかし持続可能性の観点で考えた場合、支援に見合う収益(支援経費)が得られているか言われるとなかなかしんどいのが実情です。
パートナー団体も、今回のクラウドファンディングで支援付き住宅事業を始める費用の助成が受けられてよかったとおっしゃってくれるのですが、収益性(持続可能性)がまだまだ低いので、ソーシャルビジネスとして成立させるにはまだ課題がたくさんあります。



支援付き住宅事業を始めて、多様な年齢・性別・属性の人たちが支援を必要としていることがわかりました。いわゆるホームレスならばほぼ男性ばかりなのに、居住支援という概念で見た場合には男性だけでなく女性や母子も含めて多様な方々が支援を必要としているということがよくわかりました。
そういう意味で今回のクラウドファンディングで皆さんよりご寄附いただいたことによって、生活を始めるのに必要な家具・家電・什器等を充当させていただき、入居者が速やかに支援付き住宅に入れるようになりましたし、全国にこのモデルを拡げることができたことで助かった人たちがたくさんいらっしゃいます。
そしてなにより地域にはホームレス状態じゃないけれど支援を必要とする人たちがいるということが改めて可視化できたことが今後の政策提言などをすることにおいて重要です。
重ね重ね皆さまの温かい善意に感謝申し上げ、ご報告とさせていただきます。引き続き本プロジェクトへのお力添えを宜しくお願い申し上げます。


いただきましたサポートはNPO法人抱樸の活動資金にさせていただきます。