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支援付き住宅の全国展開 NPO生活困窮・ホームレス自立支援ガンバの会の状況



「コロナ緊急|家や仕事を失う人をひとりにしない支援を」から始まり、その後もコロナ緊急事業から生活困窮者全般への支援と発展していった「支援付き住宅の全国展開」。各地で担っていくパートナー団体の一つであり、千葉県市川市を中心に活動する NPO生活困窮・ホームレス自立支援ガンバの会 (ガンバの会)の副田一朗理事長にお話を伺いました。

ーそれではまずガンバの会がどのような活動をしていらっしゃるか教えていただけますか?


副田:ガンバの会は千葉県市川市でホームレス(路上生活者)や生活困窮といった社会的孤立状態にある人々を支援している団体です。1997年に設立され現在26年目です。最初はボランティア活動的にホームレス支援を始めました。2003年にNPO法人化して雇用が始まり、活動の2年目くらいから住居支援を開始しました。もちろんアパートに入れてしまえばそこで終わりではないので、交流支援や通院などのサポート、高齢化に向けたヘルパー事業、障害を持った方への支援事業など様々な伴走型支援を行っています。
最高期で市川市内には大体250人くらいホームレスの方いらっしゃったのですが現在は20人程に減りましたので、最近はホームレスの方以外の生活困窮者支援が中心になってきています。


ー現在何部屋の生活支援付き住宅を運営していますか?


副田:前回のクラウドファンディングで10部屋分けていただいき、現在は32部屋になっています。来月さらに2部屋増える予定です。毎回支援付き住宅を借り上げるとすぐに新しい入居者さんが決まってしまう状況でして、現在ほぼ満室で稼働しています。年末年始にかなりの数の相談をいただきましたが、満室のため一旦シェルター利用の申込という形でご案内しています。


ーどのような状況の方が生活支援付き住宅入居の相談に来られますか?


副田:ネットカフェで生活してたけれども仕事が失くなってお金も尽きたというのが典型的な事例ですけれども、持病や障害をお持ちの方、また元々働いたけど事故や病気がわかって生活していくのが難しくなってしまった方、傷病手当をもらっていたけれどもそれが切れてしまった方などおられます。また精神疾患があると診断を受けた方もおられます。
年齢的には大体60代あたりの中年〜高齢の方が多かったのですが、この一年は20代〜40代の比較的若い年齢層の方からの相談が特に多かったという印象があります。


ー他のパートナー団体さんもコロナ以降10代から30代・40代のこれまで相談に来なかったもしくは繋がっていなかった方からの相談が増えたと伺っています。全国的な傾向として若年化しているようですね。


副田:そうですね、相談者の若年化はうちの団体で言えば2009年あたりのリーマンショック以降からその傾向があるのですが、この一年は特に高齢者が少なかった印象があります。昔だといわゆる日雇い労働者の方や高齢の男性がホームレスになってしまうケースが多かったのですが、今は全世代的になっていて女性の方も増えていますし、日本社会の中で家族関係が崩壊しつつある傾向を明確に感じています。高齢化も手伝って今後大変大きな問題になるんじゃないかなという予感がしています。
ホームレスで路上からアパートに入られる方は最近多くても年2、3人なんです。ほとんどの方はもう路上ではなくて家賃を滞納してしまってアパートを追い出されたとか、ネットカフェや会社の寮にいたというような方でしたり、家族間のトラブルから出て行けと言われた方や、親から暴力を振るわれて子供の方がもう親から離れたいといったような相談が増加しています。そういった方の特徴として周りに頼れる人がいないことが多いですね。若年層の方は友達の家に居候させてもらっていたけど、経済的な面で友達の方が先に限界を迎えてしまって、もう何とかして出て行って欲しいと言われて相談に来られる方もいらっしゃいます。


ーいろいろなパターンがあるわけですね。生活支援付き住宅事業を通して感じたことや気づいたこと、苦労したことなどあれば教えてください。


副田:サブリースの物件は先のクラウドファンディングで分けていただいた資金で新しい家具什器を一式揃えさせていただいたので、選択肢の一つとしてこういったアパートを持っていることで助かる方がたくさんいらっしゃいます。例えばまだ元気ではあるんだけれども80歳超えでどこに行っても保証会社が通らない単身高齢の方やブラックリストに載っていて保証会社が通らない方、生活保護の方など財産を何も持ってない方にとって初期費用が抑えられるという点でサブリースを選ばれる方が多いです。若い方は傾向として駅近の物件を条件に挙げる方が多いですが、駅近くで生活保護基準内の物件はそうそうないので、やはり駅からの距離を犠牲にしてでも単身ですぐに生活を始められるサブリース物件を希望される方が多いです。
しかし支援付きですから支援をする人材が必要ですので、収益という部分で我々としては何とか人件費を捻出したい思いがあるわけです。市川の生活保護の住宅基準で家賃は4万6000円と設定されているのでそこを基準に物件を安く借り上げてその差額を人件費に何とか確保したいのですが、都心から程近い市川市では安い物件がなかなか見つからないので、一件あたり収益が4000〜6000円ほど取れたらいい方で、32部屋でも20万くらいしか収益を得られないんです。もし空室が出たら勿論家賃を払い続けなければなりませんのでそのリスクもありますし、物件数をさらに増やして尚且つ常に満室状態でなければ人件費を捻出できないのでそういった部分で苦労があります。
また利用者さんがサブリースのアパートで亡くなられることもあります。日常的に訪問していますので死後何週間も経って見つかるようなことはあまりないのですが、亡くなって見つかると必ず警察が介入しますし、荷物の処分や場合によっては特殊清掃を入れたりリフォームが必要だったりと費用がかかります。また我々の支援がないと自立して生活していくのが難しい方に向けての事業なので、持病や障害をお持ちだったり、通常の生活支援以外の物件管理といいましょうか、騒音問題やトラブルの対応なども必要で大変なことは多いです。
しかしサブリースに限りませんが、被支援者の方が再出発して生き生きとされていくところを見るとやってて良かったと思いますし、それが支援する側にとって一番の幸せですね。以前も60代で成田空港で寝泊りしていた方が警察のお世話になってうちに来られたんですが、お姉さんのサポートもあって回復された方もいますし、我々としてはそういった実績をとても大切にしています。


ー経営面や利用者さんのサポートと大変な中、心掛けていることなどありますか?


やはり被支援者の方に「人は孤立の中で生きていけないので、ここで再出発するんだったらガンバの会の職員含めて人間関係を大切にしましょう。」といつもお伝えするようにしています。アパートに入っている方との食事会・交流会など企画して人と出会いながら繋がりを作るお手伝いをしています。ただこれがコロナの影響で集まることが許されなくなって年1回の温泉旅行も3年間全て中止している状況です。昨年やっとボーリング大会が1回再開できたくらいで、そういう意味でいうとコロナの問題は大きいですね。
またアパートを契約する方にひとつだけ、月1回は我々に元気な顔を見せることを約束してもらっているんです。ほとんどの人が毎月顔を見せてくれますし、来られない方はこちらから訪問したり、入院している方も把握しているので何かあった場合は病院からの連絡がすぐこちらに来るようにしています。そういった家族的な支援をしないと駄目なんです。路上からにしろ、家からにしろ大きな病院で救急にかかる場合、従来から通院してる方でない限り病院側がなかなか受け入れてくれないんです。でも我々が支援している方なら入院にならなかった場合でもすぐに引き取りに駆けつけることができるので救急隊員さんも病院側も安心してくれるんです。こういったことまでしっかりやっていかないと人の命は守っていけないという現実があるんです。


ー最後に寄付者の皆様へ向けて何か呼びかけたいことやメッセージがありましたらお願いします。


副田:今回のクラウドファンディング、ガンバの会にも沢山の寄付が集まりまして皆様の温かい善意に感謝しております。最近は子供をテーマにした子供食堂等の支援をする団体も増えていまして、限られた助成金で全ての団体の活動を賄うことは非常に難しく、活動継続するためには収益事業も考えていかなければいけない状況です。引き続き抱樸をはじめ我々へのお力添えをお願い申し上げます。


ー本日はお忙しい中、貴重なお話どうもありがとうございました。


いただきましたサポートはNPO法人抱樸の活動資金にさせていただきます。