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【特別寄稿:あなたがいる わたしがいる なんとかなる③後藤正文】



「特別寄稿:わたしがいる、あなたがいる、なんとかなる③」

クラファンのラストスパートとして、抱樸とさまざまな形で関わる皆様に、抱樸にまつわるテーマから、自由な形式でご寄稿いただく企画。第3回はASIANKUNG-FU GENERATIONのボーカル&ギターの後藤正文さんです。ぜひお読みください!

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 北九州の困窮孤立者を支援する団体に支援するときの難しさは、その距離の遠さと、近さなのではないかと思う。

端的に言って自分の町のことではない、と考える人もいるだろうし、あるいは、遠くパレスチナやウクライナで行われている大きな非道と比較して、小さな問題だと考える人もあるのかもしれない。

大きな視点と小さな視点を行ったり来たりしているうちに、どの問題から取り組めばいいのか分からなくなってしまう。そんなことよりも待ったなしで押し寄せてくる人生や生活上の問題で精一杯になってしまう。僕にもそういう経験がたくさんある。

 そういう時には、カリフラワーやブロッコリーという野菜を思い浮かべてみる。よく見ると全体のかたちと細部のかたちがよく似ていることがわかる。一番小さな、かなり近寄ってみないと分からないような先っぽの形が反復するようにして小さなまとまりになり、それらが中くらいのまとまりになり、そうしたいくつものまとまりが集まってできた野菜だということがわかる。人間の細胞や組織にも似たようなところがあるらしい(例えば、肺胞)。

 僕らの社会はこれと似たようなところがあるのではないかと思う。私たちの人間らしい愚かさの繰り返しによって、戦争や紛争が担保されているように感じる。反対に、社会や世界全体を覆う問題が、家庭にも教室にも職場にも同じような顔をして転がっていると思う。

 抱樸の取り組みは、確かに遠い町に暮らす僕やあなたの生活を直接的に、また瞬時に変えることはないと思う。ただ、僕はブロッコリーやカリフラワーや自分の肺胞のかたちを思い浮かべながら、繰り返されるかたちのどこかひとつが変化して、それが全体に行き渡る場面を想像する。

 今、あなたや僕が誰かのために投げ出した温かい何かが、全体のなかで反復する。微力だとしても全体性に作用する。北九州で起こった「希望のまち」の精神が、その在り方が、施設そのものが、いろいろな町で反復する。そんな日を想像する。そうやって社会や世界は、少しずつ前進するほかないのだと思う。

 そこにあなたが存在していいのだと、奥田さんは言った。こんなに心強い言葉が他にあるだろうか。僕はこの思いが、社会全体に、あらゆる地域に、あるいは自分自身の生き方のなかに、繰り返すように響いてほしいと願う。自ら響かせたい言葉だと思う。そういう社会のほうが、人生のほうが、僕は幸せな気持ちで生きられると思う。

 どうか「希望のまち」が実現しますように。それは僕の希望でもある。




後藤正文 / Gotch

1976年静岡県生まれ。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル&ギター。新しい時代とこれからの社会を考える新聞『THE FUTURE TIMES』の編集長を務める。インディーズレーベル『only in dreams』主宰。

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