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児童の最善の利益とは?(その1)

 自国で生まれた子どもたちはその実親が自分たちでは育てられないという時、できるだけ自国でその子どもを育てようという意識は、世界的な潮流であり日本でも強くなっているように思う。

2018年に施行された「民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律」でも、「民間あっせん機関による養子縁組のあっせんは、可能な限り日本国内において児童が養育されることとなるよう、行わなければならない。」と定められている。

では、日本でルーツが他国の実親から生まれた子どもが、もしその実親が自分たちでは育てられない、特別養子に託したい、となった時、どうしたらいいのだろう。一番良いのはその実親さんの母国の養親さんにお願いすることである。その実親さんが海外との養子縁組を長く行ってきたISSJ(日本国際社会事業団)を知って、ぜひ子どもを母国の養親さんに育ててほしいと頼んだらそのことは可能となるかもしれない。あるいは、その実親さんが自分はしばらく日本に滞在するし、子どもは日本の養親さんたちに託したいと希望してもらえたら、国内で子どものルーツを大切に思い、子どもの成長と共に子どもの実親の母国に思いを馳せることのできる養親さんに託すことになる。


私は特別養子縁組の仕事に関わるまで、自分のルーツを意識したことがなかった。自分の母子関係につては、50年以上様々に考えてきたのに「ルーツ」という言葉を私は使わなかった。特別養子縁組の支援をするようになって、ルーツ、出自が人として生きていくための基本なのだと遅まきながら自覚した。養親希望者研修の中に「子どものルーツ」は重要項目として入っており、民間あっせん機関・児童相談所・フォスタリング機関は研修内容を充実させるために趣向を凝らしていることと思う。


 話は変わる。一年前許可申請を取り下げたベビーライフの資料等引き継いだ東京都が積極的に養親・養子・実親さんのサポートを始めた。国内は勿論、海外に渡った子どもたちの不利にならないよう、その子どもたちがルーツを知りたい時に彼らが困らないように必要に応じて養親・養子さんたちと連絡を取れるよう様々な準備をしている。そして都内にある民間あっせん機関も海外・国内の養親・養子・実親さん支援を始めるべく計画をしていると聞く。ベビーライフで縁組した養親さんに限らず、すべての養親さんが安心して子どもを育てられるようにハピネストもいくつかの企画を考えている。特別養子縁組がかなり一般に知られるようになりその数も右肩上がりになっている。とはいえ現在その数は年間700組ぐらいである。1年に700組というと出生児童数は90万弱だから、同じ年の子どもが1300人集まるとやっと一人、特別養子縁組で託された子どもというぐらいの、まだまだ稀少な子どもである。養親も、子育てひろば等で特別養子縁組の親御さんと出会うことはまずない。だからこそ、同じ環境で子どもを育てている仲間、同じ環境で育っている子どもたちの仲間が必要である。都市部ではフォスタリング機関・養子縁組機関や養親の会主催の里親養親の会がいくつかあるが、地方では特別養子縁組でお子さんを迎えた養親さんの数も少なく仲間づくりが容易でないと思う。全国の地方都市に養親・養子グループができ、児相・民間で縁組した養親・養子さんが集えるように、少しづつ計画を進めていきたい。

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