【北方謙三】なぜ男は本を読むべきか、歴史を学ぶべきか ≪イベントレポート≫

こんにちは!
NewsPicksアカデミア アンバサダーの猪狩久子です。

ハード・ボイルド文学界の巨匠である北方謙三氏のトークイベント「なぜ男は本を読むべきか、歴史を学ぶべきか」が、11月21日(火)、株式会社TSUTAYA本社(東京・渋谷)にて開催されました。

NewsPicks編集長・佐々木紀彦氏が聞き手となり、北方氏がこれまでにどのような本を読んできたのか、なぜ歴史を学ぶべきか、そして男の生き方までをもハードボイルドに熱く語ったこの「男っぽいイベント」に女の私が参加!!!
その模様を、女視点のレポートでお届けします!

登壇者プロフィール
■北方 謙三(きたかた けんぞう)
1947(昭和22)年、佐賀県生まれ。中央大学卒業後、1970年に『明るい街へ』でデビュー。1981年の『弔鐘はるかなり』で脚光を浴び、1983年『眠りなき夜』で日本冒険小説協会大賞、吉川英治文学新人賞受賞。1984年に『檻』で日本冒険小説協会大賞、1985年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。1988年から歴史小説にも挑み、1991(平成3)年『破軍の星』で柴田錬三郎賞受賞。2006年、『水滸伝』全19巻で司馬遼太郎賞を受賞。2007年、『独り群せず』で舟橋聖一文学賞を受賞。2010年、日本ミステリー文学大賞受賞。2011年、『楊令伝』全15巻で毎日出版文化賞を受賞。2016年、『水滸伝』『楊令伝』に続く『岳飛伝』全17巻を完結し「大水滸伝シリーズ」全51巻が完成。2017年、新たな大河小説『チンギス紀』の連載を開始した。2000年より、直木賞選考委員も務める。

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ほんとに男ばっかりでファン熱量高めの講義会場

北方謙三氏といえば、言わずと知れた大作家。御年70歳。
今回のイベント参加者は、年配のオールドファンが多いのかと思いきや、意外にも20~40代がメインのようでした。
それにしても、タイトルに「男」と謳われているためか、イベント会場は男子校状態!とはいえ、女性の姿もちらほら見えました。

小説家になるまでの読書体験と不遇の時代

イベント序盤から中盤にかけては、北方謙三氏が小説家になるまでの数々のエピソードが語られました。

『星の王子さま』をはじめ、中学生の時は『次郎物語』、『ロビンソン・クルーソー』、『ハックルベリー・フィンの冒険』に影響を受け、その後『日本文学全集』、『世界文学全集』からドストエフスキー、フォークナー、マーク・トウェイン、ヘミングウェイ等英米文学作品で読書体験を積まれたとのこと。

小説家になるにあたっては、志賀直哉、中島敦、梶井基次郎から学ぼうと、志賀直哉の小説を原稿用紙に書き写したり、とにかく本に埋もれていたとか。

売れなかった時代、仲良しだった中上健次氏が芥川賞受賞、立松和平氏が出版するという悔しい経験を。北方氏は、現役の作家の本はつらくて読みたくなかったが、気になるので心理的に隠れて読み、自分のほうがうまいと思っていたのだそう。決して楽ではないアルバイトをしたり、友人たちからの「侮蔑と憐れみ」を受けたとのですが、それは快感でしかなかったとおっしゃいます。

「人間は惨めなときがある。でも俺は大丈夫と思っていたから平気だった」

自分に自信を持つ。揺らぎない確たる信念。
これぞ男だぜ…女である私は、"男ってこうじゃなくちゃ!”と人生の大先輩に尊敬の念も込めて思うのでした。

そして北方氏はエンターテインメント小説を書き始め、気がつけば「月刊北方」と呼ばれるほど、毎月本を書き上げる小説家へ。物語が次々と浮かび、書くことのつらさはなかったとのこと。「死ぬまで書く」という情熱が、アイデアをふつふつと湧き上がらせるのでしょうか。さすがです!

北方謙三氏から、男たち、女たちへのメッセージ

イベントの終盤はQ&Aタイム。
熱狂的な『水滸伝』シリーズファン、雑誌『Hot-Dog PRESS』で北方氏が連載していた人生相談のファンや、「小説が嫌いです!」「離婚しました!」と、ざわつくしかないさらけ出しをしつつ質問する方から等の尽きない攻勢に、北方氏は熱く真摯に応じていらっしゃいました。

北方氏からの温かくも厳しいメッセージ。ご紹介しましょう!+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

ーー異性を知るための本とは?

「そんなものを本で知ろうと思うのが間違い!!!」
「小説の中にはいい男(いい女)がいる。そのいい男(いい女)と現実の男を比べないように!小説は小説」
「本というのは、生きることの意味を教えてくれるもの」
「(先輩に聞いた話)男と女は誤解して愛し合う、理解して別れる」

ーー良いリーダーになるための本とは?

「良いリーダーになるというのは、自分の人間観を養うことです。とにかく本を読みなさい」
「何かを得ようと思って本を読んでも得られない。えっ!?と思う本が心に入ってくることがある。それが読書の醍醐味」
「物語を読めよ、詩を読めよ。何かある。Something Else--何か独特の」

ーーなぜ歴史をなぜ学ぶべきか?

「歴史は学ぶものではなく、読むものです。面白い歴史小説を読むと人間観、社会観、歴史観が出来てきます」

ーースケールの大きい男とは?

「人間は自分の心だけ。心だけは無限。その無限の中に何か大きなものが見えてくるはず」

ーーどうしたら男の中の男になれるのか?

「いい男になる方法を考えない男がいい男になる」

ーー女性向けの北方謙三本は?

「『水滸伝』、『逃れの町』、『檻』などが支持されている。本は内面に入ってくるもの。自分がいいと思った本が良い本。たくさんの読書をするといい」

ーー北方先生が自信を持ったきっかけは?

「才能があると言われたときは自信を持ったが、書いた小説がまったく載らなかったときに自分は天才じゃない、石ころだと思った。でもその石ころを10年磨いたということが自信になった」

ーー見栄と誇りの違いとは?

「みんな勘違いして生きていたりする。見栄は人に見せるもの、誇りは自分の内側をしっかりさせるためにあるもの」

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最後には北方氏のお好きな音楽の話。Suchmos、BLANKEY JET CITY、吉川晃司等をお聴きになるとは…ちょっと私と好みが似てるし…意外でした!

「世の中には映画がある、音楽がある。本がなかったら信じられない。楽しむことは充実します。時間があったらぼーっとしないこと」

北方氏による、ユーモアたっぷりの叱咤激励。
男たちにとっては、小説同様に心の糧となったのではないでしょうか。
とはいえ女の私でも、人生観、日々の過ごし方や心の持ち方、異性についても気づきが多く、まさに充実した時間に^^

いやほんとに終始熱く盛り上がった男の人生論満載のイベントでした!

とにかく、たくさん本を読もう、歴史小説を読もう!


猪狩久子 Hisako Igari
NewsPicksアカデミア アンバサダー
Webディレクター/編集/ライター
https://newspicks.com/user/510845





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