ロシア勢への報復か、P波のなかったトルコ・シリア大地震

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トルコ・シリア大地震1週間 死者3万人超 懸命な救助活動続く

NHK

2023年2月13日 5時29分

トルコ南部のシリア国境近くで大地震が発生してから13日で1週間になります。トルコとシリアの両国では、これまでにあわせて3万3000人以上が死亡し、今も多くの人たちが倒壊した建物の下に取り残されているとみられ、懸命の救助活動が続いています。

「奇跡としか言いようがない」

震源に近いトルコ南部のカフラマンマラシュでは、5000人を超える犠牲者が出ていて、日本の国際緊急援助隊をはじめ、世界各国の救助チームが壊れた建物の下敷きになった人たちの捜索活動を行っています。

12日午後1時ごろ、7階建てのアパートが倒壊した現場で、救助隊のひとりが人の声に気付き、電動ドリルなどをつかってがれきを取り除いていきました。

現場では2次災害を防ぐために重機2台のバケット部分を、救助隊の頭上にあるがれきの斜面に押しつけていました。

そしておよそ2時間後の午後3時すぎ、がれきの中から救出され体温を保つためのシートにくるまれた女の子が担架に乗せられて、救急車へと運ばれました。

見守っていた人たちは、女の子の体調を気遣い、救急車が出発するまでは、声を出さないようにしていましたが、ひとたび救急車が出発すると、拍手と歓声で喜びを分かち合いました。

北マケドニアから救助活動に参加した男性は「彼女が生き延びてくれたことがうれしい。奇跡としか言いようがない」と話していました。

住宅倒壊の危険度を調査

一方で、カフラマンマラシュでは、住宅の被害の程度を確認する調査を地元の市役所が進めています。

12日も職員らが3人1組で倒壊を免れたマンションやアパートを1軒1軒見て回り、外壁や柱、それに、鉄筋の状態などを外から見て確認していました。

この結果をもとに必要に応じて追加調査を行い、倒壊の危険度などを確定させていくということです。

調査に加わった建築の専門家は「建物が危険なら壊さなければならないし、危険が少なければ補強して安全を確保したうえで人々にまた住んでもらえます」と話していました。

この日も、補強すれば住めるようになると判定された建物があった一方で、8階建てのマンションは余震などで倒壊する危険が高いと判定されました。

そして調査にあたった職員がその結果を住民が自分で調べられるように、スマートフォンで読み取れるQRコードを入り口に貼っていました。

このマンションの住人で、今はテントで避難生活を送るムスタファ・アクトゥルクさん(53)は「私たちにとっては唯一の家で、ほかに買ったり借りたりできる家はここにはもうありません。冬のテント暮らしは寒くて厳しく、ほかのまちに移り住むことを考えています」と話していました。

被災地ではボランティアによる炊き出しも

トルコ南部の被災地では、国内各地からボランティアが駆けつけ、温かい食事を被災した人たちに提供する炊き出しが続けられています。

このうちカフラマンマラシュの中心部には、被災者を励ましたいと、700キロ余り離れた西部の町からボランティアおよそ50人がバスとトラックなどに分乗し15時間かけて駆けつけました。

ボランティアたちは倒壊したマンションの捜索現場近くに拠点を設けました。

そしてひき肉でつくられるキョフテと呼ばれるハンバーグに似た料理を炭火焼きで作り、野菜とともにパンに挟んで被災者や捜索活動にあたる人などにふるまっていました。

炊き出しには長蛇の列ができ、1万人分用意したという食事は4時間ほどでなくなったということです。

被災して家を失ったという20代の男性は「私たちは1人ではないことを実感しました。支援に感謝しています」と話していました。

呼びかけ人の男性は「被災者は食事を必要としていると思い、駆けつけました。被害は深刻ですが、被災者が前向きになるための力になれればと思います」と話していました。

日本からも新たな医療チームを派遣

今回の地震では8万人を超えるけが人が出ているほか、病院などの医療機関も多数被害を受けていると報告されています。

こうした中、新たに国際緊急援助隊の医療チームが派遣されることになり、12日夜、羽田空港に医師や看護師、薬剤師など36人が集まりました。

被災地では長時間、がれきの下敷きとなることで体にたまった毒性物質が全身に回り、命を落とすこともある「クラッシュ症候群」の患者が多く見込まれるため、日本の医療チームは救助隊で唯一、救出後に必要になる人工透析の装置を持ち込み、治療にあたるということです。

チームには東日本大震災で被災した経験を持つ人もいて、岩手医科大学の藤原弘之さんは「12年前の被災地と同じような被害が報じられているため、被災者に寄り添った支援を行いたい」と話していました。

医療チームの副団長を務める日本医科大学武蔵小杉病院の井上潤一医師は「今も氷点下の過酷な環境の中、心細い思いで支援を待つ人も多いと思う。少しでもトルコの皆さんの力になれるように活動したい」と話していました。

医療チームはイスタンブールを経由して被災地の病院などに入り、今月24日まで活動を行うことにしています。

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以上