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ヘブライズムと超越論的世界観(2)

間が空きましたが、ヘブライズムにおいて「主観」の側を説明する世界観である「超越論的世界観」について記事を書いています。

「超越論的世界観」とは一言で説明すれば、今ある状況を自明視するのではなく一歩引いたところから見ることです。その主観を支える世界観からは、

1.素朴実在論の否定

2.人間の「主観性」の尊重

3.相対主義

という3つの態度が生まれることをお話しました。今回は1点目の素朴実在論の否定について説明します。

素朴実在論とは、実在論の一種で「この世界は、自分の眼に見えたままに存在している」とする考え方のことです。例えば、木の葉を見て、緑色の葉が実在していると思うことが挙げられます。

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それに対して、以前に説明した機械論的世界観と超越論的世界観が普及して科学が発展した現代では、色盲や視覚障害によって「この世界は、自分の眼に見えたままに存在している」わけではないことはすでに知られています。

「超越論的世界観」とは、今ある状況を自明視するのではなく一歩引いたところから見ることですが、それが素朴実在論の否定につながったわけです。

その現れとして、機械論的世界観の時にも挙げましたが、中世の普遍論争につながっています。つまり、実在論と唯名論の議論にも超越論的世界観は影響を与えたわけで、それがそのまま素朴実在論の否定に繋がりました。

暗黒の中世というと、素朴に神の実在が信じられていて、神の権威を笠に着る法皇が人々を抑圧していたというイメージがありますが、実は神学には「否定神学」というモチーフがありました。

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普遍論争に見られるように、実在論を否定してくる唯名論に対して論破するためにこそ、神学という大聖堂が構築されてきたわけで、実に活発な論争が繰り広げられてきました。その点は、日本でも近年『異端の時代-正統のかたちを求めて』という書籍でも論じられました。

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その活発な論争の中で、機械論的世界観や超越論的世界観が浸透してきて、その結果として近代の人間中心主義(ヒューマニズム)が発展して、科学技術と民主主義の伸長につながったわけです。

その点について、次回以降説明していきます。

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