4月5日
信じられないことに文化庁の継続支援事業の二度目の申請について未だにあれしろこれしろという指示が度々来ており、もはやうんざりする気持ちも通り越して無の境地で指示通りマイページにログインし書類を添付し再申請のボタンを押す。
朝はいつもフルーツとヨーグルトと決まっているが今朝はなんだかしょっぱいものが食べたくなり、残っていたにんじんとひよこ豆のポタージュを食べた。ポタージュは冷たいままでもおいしいからいい。
おとといは仕事が終わったあと渋谷まで出て打ち合わせ。コンビニに寄ってビールを一本だけ買って少し遅れて事務所に着くとテーブルには大量のタイ料理が並んでおり、みんなすでに飲んでいた。大体の話がまとまってもみんなのんびりしていそうだったので、ひとり先に出て下北へ向かう。タクシーに乗ってしまおうかとも思ったけれどいやいやと思い直し井の頭線に乗り込むと車内は空いていた。久しぶりの土曜の夜、渋谷も下北もコロナなんて嘘なんじゃないかと思うほどの人と音だった。早足でその間を縫うようにして目を伏せて歩き、サーカスに着くといくつかの馴染みの顔ととても懐かしい顔がカウンター付近で和やかに飲んでいた。
カトゥーさんと話したいことがあり、でもみんなと話しているうちにあっという間に終電時間が迫ってきてしまったので(店に着いた時点ですでに11時近かった)早々に加藤家に泊めてもらうことを決め、安心して店であれこれの話をした。閉店後にカトゥーさんと一緒に帰ったらいいかと思ったけれど、店はまだ遅くまで開いていそうだったので1時頃だっただろうか、先にひとりでお店を出た。みんなに手を振ったあとすぐに駅向かおうとした足の方向をきゅっと変えてルルドに寄った。静まり返った夜の中庭で十字架とマリア様に向かって手を合わせて「どうか見守ってください」と声に出して祈った。
コンビニでコンタクトレンズの洗浄液とチョコレートのクッキーを買って、食べながら15分ほど歩いて家に着くとべべちゃんが起きて待っていてくれた。暖かいお茶を入れてくれて、ふたりですすりながら明け方近くまで話をした。正確にはべべちゃんが話すのをずっと聞いていた。べべちゃんはとても穏やかでいつも通りだった。ベッドや部屋着の世話をしてもらい、少し寝て、朝キッチンで音がし始めたのに合わせて起きていくと朝からべべちゃんがピザを焼き、フルーツを切り、野菜のスープを作って、コーヒーを淹れてくれた。そうしてまたゆっくり話をして、昼前になると成も起き出してきて、一緒に朝ごはんを食べたりおもちゃを見せてくれたりした。カメラを持っていればよかったなぁと思いながらスマホで何枚か二人の写真とチワワのピーターの写真を撮った。
きのうはそうして前日の服にすっぴんのまま寝不足のぼんやりした頭で仕事に行った。天気も悪く客足はまばらだったので本当はそんなのだめだけれどきのうのわたしにはありがたかった。途中お世話になっているギャラリーの榎本ご夫妻が来てくれ、今日の夜はおいしいポルトガルワインが飲めるイベントをやってるからよかったら寄って、と言ってくれ、仕事を終えてまっすぐ帰って家にひとりでいてもますますどうしようもなくなるだけだというのがわかっていたので、体は疲れていたけれどほとんど迷わず「じゃぁ顔出します」と返事をした。夜になりひとりめそめそしながら店でPC作業をしていると、ライブを終えた根津さんからサーカス歌って泣いちゃったよと連絡が入った。
店を閉めてギャラリーに着いてみればイベントは完全予約制でコース料理をみんな揃って順番に食べるという内容だったので面食らったけれど、榎本ご夫妻と主催の方達のご好意で快く飛び入りを受け入れてもらい、ワインを2杯と料理もアラカルトにしてもらって少しいただいた。魚介と柑橘のセビチェ、タコのリゾット。とても美味しかった。
榎本さんたちと知り合ってもう1年半近く経つけれど、わたしはふたりのことがとても好きで、それほどゆっくり話したこともないけれどなんというかとても安心するし信頼している。そういうひとたちっている。そういうわけでふたりの隣に小さなテーブルをくっつけて一緒に座らせてもらってはじめてお酒を飲みながらゆっくり話をした。ふたりを見かけるときは大体いつもふたり一緒なので「おふたりはいつも一緒ですよね」というと、「9:1で一緒かな」と榎本さんが言い、その嬉しそうな笑顔がとても可愛くて愛に溢れていてあぁいいなぁと思った。ノゾミちゃんはどうなの、と聞かれ、この何年かは恋愛にまったく積極的ではなかったこと、だけど本当に久しぶりにいま少し気になるひとがいることなどを素直に話すといくこさんにパートナーっていいよ、特にあなたみたいな考え過ぎちゃう真面目なひとには、と言われた。よく見てくれているんだなぁと思いながら頷く。そうしてやっぱりこのひとたちのことが好きだなぁと思う。帰りは雨が降っていて、霧のような細かい雨がさーっと街灯の明かりに透けているのがやけに綺麗で、やぶれかぶれの尖った自分の気持ちとのあまりの乖離に戸惑いながら部屋に駆け込み、出かけたままの状態になっていたキッチンを片付け、着替えてすぐにベッドに入って目を閉じた。
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