10月4日

何日か前、友人ふたりが家に遊びに来た。ひとりはワインを二本、もうひとりはフルーツをチーズを持って。わたしは半日かけてあれこれの料理を作った。食材をたくさん買ったから、その残りでまだ冷蔵庫がいっぱい。きのこのパテをはじめて作ったのだけどとてもおいしかった。いまその最後の残りをキュウリにつけてぽりぽり食べ終わったところ。

きのうは知り合いのバンドマンがひょっこりお店に来てくれた。彼は一度わたしのライブに来てくれたことがあり、とても礼儀正しくて感じが良くて、SNSを見ているとわたしと興味関心の方向が似ているような気もしていて、だからそのうちゆっくり話したいなと思っていたひとだった。友人の展示を見に行き図書館と本屋に行った帰りだというので、どういう本を読むのと訊くと、本でぱんぱんになったリュックからあれこれ出して見せてくれたのだった。会うのが二回目でちゃんと話すのはほぼ初めてなのにわたしはとてもリラックスしていた。彼の人柄がそうさせるのだなと思って、関心した。制作の話をして、チームで話をしてやっぱり作品作らないと、ということになったと彼が言い、そうだよね、とわたしが言い、そうして彼は「のぞみさんのリリースも待ってます」と言った。そのすぐあとに「ああでもプレッシャーになっちゃいますよね」と彼は打ち消したけれど、そんなことを言ってくれるひとがこの世の中にいるのかと思ってわたしはちょっとびっくりして、そしてこっそり感動した。バンドメンバーの誕生日プレゼントにといって靴下を買っていってくれた。フジロックの配信観てたよと言いえばよかった、そう言うことを思い浮かばなかった自分を悔いた。

きのうは夜になりなんだかお腹が空いて、夜中に甘いものをもしゃもしゃ食べながら残りもののワインを飲みながら調べものや諸連絡など細々。少し酔って、読書灯が来てますます素敵になったわたしの部屋の写真とともにその嬉しかった出来事のことを書いてインスタのストーリーに限定公開でアップしたら「わたしもリリース待ってます」と言ってくれるひとたちが何人かと、「こんな素敵な部屋に住んでるの」と言ってくれるひとたちが何人かいた。部屋は本当にあと本棚だけが揃えば完成な気がする。大変に居心地がいい。

リリースについて、こんなに作品を作りたい気持ちがあるのにどうしてわたしが二の足を踏んでいるかといえば、歌はひとりでも歌えるし曲もひとりでも書けるけれど、音楽はひとりでは作れないし鳴らせない、といまは思っているからで、つまりこれまでとは違う方法で次の作品を作りたいと考えているからなのだった。そうしてその方法がどうにもこうにも、で、ずっとぐるぐる考えてはもどかしく思っていたのだけど、今日少し進展があった。じっと待っていた連絡がついぞこないので起き抜けにえいっと催促の連絡をしてみればすぐに返事が来たのだった。ちょっと軽くガッツポーズをした。うまくいくといい。

そうしてわたしは久しぶりにちょっと浮かれた気持ちになったけど、つぎに具体的なこと、つまり予算について考え始めたらすぐにたいそう憂鬱な気持ちになった。リリースの度に銀行の口座がほぼ空っぽになり、そしてそれは返ってくることのないお金だった。また同じことをするのだろうか。進歩がない。こういうのって本当につまらない。どうしようかなぁと、ぼんやり考えるがどうもこうもしようがない。頑張って働くしか。だけど働いて、そのお金で音楽を作って、出ていくばっかりで、それというのは一体なんなんだろうという気持ちにやっぱりなるのだった。un/baredもいまはみんな好意で協力してくれているけれど、わたしも持ち出しであれこれを払っているけれど、いつまでもずっとそんな風にしているわけにはいかないし、なにかしら方法を考えなくてはいけない。お金のことは、本当にわたしを憂鬱にさせる。だから「売れる」ということがある意味では重要だというのはとてもよくわかる。

しかし作品を作れることはとてもとてもとても嬉しい。新しいこれまでとは違うなにかを見られるかもしれないし見せられるかもしれない。そういう純粋な心の高鳴りを、それ以外のあれこれの憂鬱に犯されないように、そのために、どうしたらいいのだろうか。堂々巡りだな。

なんにちか前、「歌い続けるためにはどうしたらいいのだろうか」ということを初めて考えた。必要なことはわかる。なんとなくだけどわりとはっきりと。だけどそのために自分になにができるのかはまだちょっとよくわからない。いつだってやれるだけやるだけ。

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