4月6日

クソみたいなことを言うようだけど、わたしはもう頑張るということをすっかり忘れてしまった。頑張り方がわからない。

原稿を書いているときの自分の集中力のなさに愕然とする。書こうと思い椅子に座り、キーボードに手をかけて書きかけの原稿に目を落とす、数行読んでまた席を立つ。キッチンに行ってナッツをつまんで、席につき、一段落書いて窓の外を走る車の列をぼーっと眺め、また少し書いては消して、読んでは消して、またキッチンに行って今度は温かい飲みものを作り、画面右上の小さな時計に目をやってせめて何時までは頑張ろうと決め、その時間になった瞬間席を立つ。

自分が好きでやりたくて始めたことがいつの間にか何となく気の重い、先延ばし後回しの対象に変わっている。これじゃ音楽と同じじゃないか、結局なにをやってもそうなのではないか、という考えが体の中でどんどん膨らんでいく。それを打ち消すように無心でキャロットケーキを焼く。

忙しく朝も昼も夜も好きな仕事に精を出している友人知人をみて、わたしはいったいなにをやっているんだろうと思う。わたしはいったい何から逃げているんだろう。どこに向かっているんだろう。ばかみたい。まるで進歩がない。

気持ちばかりがあって心がちっとも追いつかない。収録か生配信か決まり次第連絡しますと言われた18日のアースデイのライブ、なんとなく生配信だろうと勝手に思っていたら収録になりましたときのうメールが来た。素材を12日までに送って下さい、と書かれていて、いや一週間しかないんですけど、と心の中で呟く。セットリストもまだ決めていないし、動画で納品するなら編集もミックスもしなくちゃいけないし、そもそもどこでどう撮るか決めなくちゃいけないし、え、という様々な思考が押し寄せてきてはっきりと苛立ちを覚える。まだ返事を返していない。なんていうか、当たり前のように決定事項を提示されると押し付けられているような気がしてその内容に関わらず噛み付いてしまいたい気持ちがいつも湧いて、自分のその未熟さはいつまで経ってもなくならないのだった。

今日も打ち合わせがある。気持ちばかりがあって心がついていかないのに物事はだけど進んでいく、気持ちだけで自分が進めている。心はちゃんとついていくんだろうか。どんどん離れていっているような気がする。不安が少しずつ大きくなっている。4月はなんだかいろんなことが入ってきそうな様相でもってこっちを見ており、最低限の備えをしつつ、だけど集中力にも決断力にも欠けるわたしは読書に逃げている。読みたかった金原ひとみさんのエッセイを読み始めた。すぐに読み切ってしまいそう。

おとといいくこさんに言われたことを頭の中で反芻している。パートナーの話、別に約束なんてなくたっていいんだから、気軽に一緒にいたらいいのよ、とか、そういうこと。そして「一番やりたいことはなんなの」と聞かれてうまく答えられなかったわたし、あれこれを言い訳のように並べて、でも誠実に答えたいと思って「ずっともうよくわからないんです」と正直に言ったこと、そして最後に「でもいつか本を出したいです」という言葉が口をついて出てきたこと。

わたしはひとりでいることを選んでいるつもりだったけれど、それはもしかしたら誰かといることつまり誰かと向き合うことから逃げていただけなのかもしれないと、最近薄々思う。本当のところはわからない。

きのう仕事の前にお花屋さんに行ってひょろひょろした花を3輪買った。紫の大きな真ん中に小さな白い花びらが沢山連なっている丸っこい花を2輪と、白い細長い花びらの先に小さな緑が染まった花を一輪。近所のカフェでやっていた古物市で買った水色の吹きガラスの瓶に飾った。この間キャロットケーキを3切れ食べた。お茶は普段あまり飲まないがキャロットケーキにはコーヒーより紅茶が合う気がして今日はめずらしく紅茶を淹れた。

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