10月17日

江國香織の、あれは落下する夕方だったか、部屋の鉢植えに紅茶をあげる女性がいて、わたしはそのことを、コーヒーなどを飲みながら部屋のみどりたちが目に入ると思い出すのであって、いま飲んでいるマグに入ったこの濁った飲みものを植木鉢にそそいだらどうなるのだろうと陽に透ける茶色い葉の静脈を想像する。

ただでさえ眠れないところにカフェインを投入しても仕方がないと思い、最近は穀物コーヒーを飲んでいる。今朝方その粉を瓶に詰め替えていて残り少しになったところで紙のパックをさらに傾けたら雪崩がおき、シンクが粉だらけになった。少し前までだったらこの手のことにわたしはひどく動揺し苛立っていたけれど、今朝は小さなため息をひとつついたかつかないか、淡々と布巾で拭いて片付けた。

今朝のスコーンはクリームチーズとイチジクとクルミ、シナモンとラム。慣れないクリームチーズの扱いのイメージがつかないまま混ぜたらなんかどうしたら良いかよくわからなくなって、成形に失敗したかなと思ったけれどそうでもなかった。おいしい。

なぜ家にクリームチーズがあるかといえば、数日前女子たちがわらわらと我が家にやってきてわたしはせっせと料理をしたからであって、お客人がくるときくらいチーズくらい買ったって良かろう、という、そういうあれの、残りなのだった(結局クリームチーズはほぼ出番がなかったのだけど)。この間おいしかったきのこのパテをもう一回作って、もう一種類くらいあったら楽しいかなと思ってじゃがいもとごぼうのパテ、それから生野菜は何がいいかと考えて柿の季節だから柿のサラダがいいなと思って春菊と合わせた。ドレッシングはナッツのオイルをはじめて作ってみたけどおいしかった。せっかくだからおいしい春菊がいいと思って、春菊だけ自然食品のお店で無農薬のものを買ってきた。それからかぼちゃのマッシュしたのをカマンベールチーズと一緒に焼いたやつと、ナスとキノコを野菜をたくさん入れたトマトソースとホワイトソースで挟んでチーズをたっぷり乗せてオーブンで焼いたグラタン的なもの。基にしたレシピには「ベジタブルムスカ」と書いてあった。レシピの本の完成量というのは概して多いのであって、何人家族、いつの時代、と常々思うのだけど、ホワイトソースはどう考えても多過ぎるから半量で作ろうと思っていたのにうっかり分量通りに作り始めてしまい仕方がないので全量作ったら案の定ミルクパンいっぱいの破壊的な量のホワイトソースができてしまい、黙って半分冷凍した。わたしは食べものを冷凍するのがあまり好きではないのに。

そんなわけで例によって作り過ぎたなぁと思っていたけれど、彼女たちはいちいちおいしいおいしい何が入ってるのどうやって作るの春菊っておいしいんだねなどと言いながら綺麗に食べ切って終電間際になって慌てて帰っていった。わたしはみんなが帰ったらすぐ眠れるように先にシャワーを済ませていたので、洗いものと歯磨きをさっさと済ませて、ベッドに入った。

目の前に積み上がっているあれこれを少しも減らすことが出来ないまま日々がずるずると過ぎている。焦る気持ちもぼんやり薄れてきた。どうにかなるとわかっているけれど、気持ちが冷めないうちに進めたいことがある、だけどしかしそれらというのは実務的な事柄や締切といった類のものの後回しにどうしてもされがちで、進歩のないまま繰り返されるジレンマ。

雨だねぇ




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