8月7日 遺作

朝から暑い。今日は風がない。夏は苦手なんだ。憂鬱だ。

夏が好きだったことはあまりない。暑いし汗かくし日焼けするし蚊に刺されるしあまりいいことがない。

でも夏野菜は好きだしかき氷も好きだ。いいこともある。

前に付き合っていたひとに花火大会に行きたいといって行こう行こうとなったのに、どちらも別に日程を調べたり具体的な行動を起こすことなく夏が過ぎ、わたしはそのことに腹を立てて喧嘩したことがある。今思えば謎である。自分が行きたいなら自分が調べて決めろよ、と思うけど。でもそういうのってやってくれると嬉しいんだよな、そして何したいとかどこ行きたいとかあまり言わないわたしだったし、そういうのは彼担当みたいになっていて、もしかしたら「調べとくね」くらい言っていたのかもしれない。もう忘れた。

だけど彼が調べて連れて行ってくれた場所はいつもなんかどこかイマイチで、わたしはいつも諸手を挙げて喜んだり楽しんだり出来ず、そしてそのことにちょっと罪悪感も感じたりしていて、そういうのって思い出してもなんかちょっと切ないのだった。わたしはそのひとのことをあまり好きじゃなかった。全然好きじゃなかった。ということには別れてから気付いた。

きのうは一日曲作り。おととい作り始めた鍵盤の曲を午前中いっぱいかけてピアノを弾きながらあれこれ考えた。久しぶりに実家のピアノを弾いた。調律ぐちゃぐちゃかなと思っていたけどちゃんとしていた。母がときどきちゃんと調律を入れてくれているらしい。とてもいい音がした。この音で育ったのだな、と思った。子供の頃家で練習をしていると姉や弟がうるさい、テレビの音が聴こえない、といつも文句を言ってきたことを思い出して、その度にわたしはどんな気持ちだったのだろうかと考えたけどそれは思い出せなかった。彼らの妨害がなければわたしはもう少しピアノを好きだったかもしれない。

カバーをかけているけれどそれでもやっぱり埃を被ってしまっていて、申し訳ない気持ちになりながら拭いた。ピアノでぱっと弾けと言われるとどうしてもCのキー(黒鍵を使わなくていい)になってしまう。♯や♭がいくつもいくつもついた曲もたくさんやったはずなのだけど。途中から楽しくなって曲作りというかただ弾いてる、みたいな感じになってしまいいつまでもやっていても仕方ないので一通り楽しんだあと部屋に戻ってPCに向かってMIDIを弾きながら改めて作業したけど結局うまくまとまらなかった。曲の展開を考えるのがずっとあまり得意ではない。

自分の曲にも取り掛かって(ピアノのは仕事用)、大まかな流れとワンフレーズだけ出来た。どういう歌詞にしようか。

曲を作るという行為は本当に不思議で、毎回違うからやってもやっても不思議で、きのうは思うように進まなかったから(きのうはというか最近ずっとこんなかもしれない)なんかそういうときはもう二度と曲なんて作れないんじゃないかという気持ちに割と本気でなる。そんなことはないそのうち出来る、と思うけど、でも本当にもう二度と一曲も作れない(あるいは作らない)ということだって可能性としてはあるわけだし。

この間帰り道に暗い路地の奥の方を見ながらもしもう二度とリリースしなかったら「あこがれ/Losing My Heart」という作品がわたしの遺作になるのだなということをふと思ったのだった。

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