投球動作についての覚え書き

 ロッテ・佐々木朗希投手のケガにうろたえたことに始まって、元阪急の山口高志投手のことを教わったり、野球少年のお客さんが久しぶりに来店くださったり、高校野球のクーリングタイムのニュース番組でちょっとした衝撃を受けたりと、なんだか野球尽くしな日々でした。野球少年からの指示もあって投球動作を少しまとめて見る機会があったので、私なりに納得したことをメモしておきます。

 自分が太極拳を少し習っていたこともあって、動きを見る際には〈軸〉の位置を気にします。
 ちょっと整体屋ふうな説明をすると、身体は常に、〈動く側〉と〈支える側〉に役割分担しています。仰向けに寝そべった状態で一般的な腹筋みたく上体を起こそうとすると、上半身が動く側・下半身が支える側。反対に足~おしりを上げるタイプの腹筋をすると、下半身が動く側・上半身が支える側。ふつうの直立姿勢では、上半身が動く側・下半身が支える側。逆立ちとか、鉄棒にぶら下がった姿勢のときは下半身が動く側・上半身が支える側。ざっと分けるとそんな感じです。
 この区分はもっと細かい部分でも生じていて、右手で動作をするときには、左手あるいは右足が支えに入る。また、親指と人差し指で物をつまむときには小指と薬指が支えに入る。そんな関係が生じます。先日公開した「投球動作で肩が痛い」の記事で、右肩痛の原因を左手首に求めたのはこの理解によります。

 で、その〈軸〉の考え方を投球動作に応用すると、ロングアームとかショートアームと言われる投げ方は胸骨・背骨を軸にしているように思えます。左右半身の、片方が動く側・もう片方が支える側という具合に。
 一方で、山口高志投手や佐々木朗希投手の投げ方は上半身を動く側・下半身を支える側という区分で投げているように見えます。このときの軸は山口投手が腰・骨盤で、佐々木投手が横隔膜、っぽい。余談な上にたぶん関西圏の人にしかわからない話で申し訳ないですが、現在放送中のひらかたパークのCMで岡田准一園長が腸腰筋ちょうようきん、腸腰筋言っている筋肉が、それです。腰・骨盤にある腸骨筋ちょうこつきん+みぞおち・腰にある大腰筋だいようきん=腸腰筋。同じ腸腰筋を使いながら、山口投手は腸骨筋優位、佐々木投手は大腰筋優位、なのではないかな、と。

 ところで私のお客さんで、水泳をされているかたがいます。長らく施術させてもらっているのに思うような結果が出せず、困っていたのですが、最近になってようやく事態が進展し始めました。心底ほっとして、何が転機だったのかを訊いてみると、それまではクロール・平泳ぎしかしていなかった練習を、バタフライも始めた、とのことでした。
 クロールの軸は、複雑ではありますが、背骨に近い。左右半身を交互に動かし・支えにする使い方です。平泳ぎは、上下半身を交互に使う要素が強いけれど、動きが複雑な上にお客さんがあまりうまくないそうで練習がはかどらない。バタフライは、難しい泳ぎ方と言われますが、軸の置き方という意味では比較的単純で、上下半身。お客さんも泳ぎやすかったそうです。
 で、バタフライをせっせと練習するうちに、身体の得意・不得意、筋肉の不自由さ具合が明確になって、整体が進展したようなのでした。

 何が言いたいかというと、ひとくちに投球動作と言っても、クロール・平泳ぎ・バタフライの差に近いくらい、実はいろいろな動きなのかもしれない、ということです。ロングアームとショートアームはどちらも背骨・胸骨辺りが軸、という言い方でまとめましたが、たぶんロングアームは胸骨が、ショートアームは背骨が軸です。ロングアームの投げ方そのままで腕の動きを小さくすればショートアームになる、というほど単純なものではなく、そしてショートアームでちゃんと投げるには、会得するのがかなり難しいコツを必要とするように思います。

 素人な私はぼんやり動画を眺めていて、全体的な動きの流れに無理な感じはしないかどうかを感覚するだけ。整体屋な私は、どこに施術したらもっとすんなり動けそうかを感覚するよう努めるだけ。どちらにせよ、難しいことはさっぱりわからずに見ましたが、見えている以上に奥が深いことだけはわかりました。良い勉強になって、おもしろかったです。

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