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「PDCAと対極」の庭づくり。設計図なし、構想なしでなぜできるのか

「跳び箱と長縄、どっちが高い?」

山手線に乗っていたら、モニター越しにヒカキンから出されたクイズ。答えは跳び箱、とぼんやり眺めていたら、モニターにBusiness Insider Japan(BIJ)のロゴが現れました。

首都圏のJR主要10路線とゆりかもめ車内では、今週からBIJの動画番組「今、知りたい世界のこと」が流れています。この4月から始まったJR東日本の「TRAIN TV」の中で、BIJも番組を一つ持つことになったのです。

今回のテーマは「海外と日本の働き方の違い」。60秒、音声なし、見ているのはBIJを知らない人、そしてグローバル展開するメディアならではのテーマで、というなかなか厳しい条件があります。

60秒で海外と日本の違いをすべて語ることはできませんが、思い出したのは昨年秋に読んだ『庭のかたちが生まれるとき』。

著者は庭師であり、美学者でもあります。この本は、京都にある古刹の石庭がつくられていく様子を、著者が足かけ1カ月間毎日現場に通って記録したもの。興味を持ったのは、「設計図がない」まま作業が進むと知ったからでした。

本の初めの方には、著者の率直な感想が書かれています。

「この現場では材料の規格や数量も石の配置もわからないのだったが、どんな庭になるかの大雑把な構想さえほとんど決まっていないということだ」

庭師の長である古川さんの言葉では、こういうことのようです。

「平安時代の難しい本には『こはんにしたかひて』って書いてあるんですわ。それは石が『求めるところにしたがう』ということで——」

心に残ったのは、著者が作庭現場で聞いたという「てみる」という表現でした。古川さんが頻繁に使っていたそうなのです。掘ってみて、置いてみて……。もちろんこれは1000年前ではなく、2020年代に起きていることです。

仕事を進める上では、私たち日本人ももちろんPDCAを回すことを大切にします。読みづらいという感想もある中で心地良い読書体験だったのは、私が日本で生まれ育ったからなのか。私が知らない「世界と日本の違い」がまだたくさんあります。

(2024.5.16)



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