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NIPTをポジティブに受けることが出来た理由

※困難を極めた妊活と、NIPTがメイントピックです。いつか子どもが欲しくなるかもしれない方の参考になったら嬉しく思います。

明日、実家でうなぎを食べる。父の日のプレゼントを持って行くと言ったら、そういう流れになった。30代も後半なのに、いつも甘やかされている。

31で結婚してから、結婚生活の2/3近くを不妊治療に費やしてきた。メジャーな検査を一通り終えても、はっきりした原因は分からない。いわゆる「原因不明不妊」だった。

34で会社員を辞めた。体外受精に挑むなら体調管理が重要と考えたからだ。片道1.5時間強の通勤でグッタリしながら、大枚を叩く勇気がなかったというのも大きい。

不妊治療のクリニックに通い始めてから、twitterに入り浸るようになった。年齢や体質が近そうな人をフォローし、病院選びや治療の進め方の参考にした。リアルな知り合いと情報交換するよりずっと気楽だった。大概の人は1年~1年半で、無事に懐妊する。喜ばしいことだけれど、自分だけ取り残されるようで、苦しさが深まる。結果が出ない周期が重なると、妊活をしていない友人とでさえ会うのが億劫になってしまった。大金を投じているので、遊びにお金を使うことに罪悪感があった。

3年強の通院で、そこそこ良い車が買えるくらいは使ったと思う。体外受精を始めてからは、年に240万くらいだろうか。ほぼ派遣社員時代の年収である。採卵~移植までを1クールと考えた場合、助成金でカバーされるのは1/2~1/3未満だった。誘発剤を多く使うほど薬代がかさむが、助成金の最高額は30万である(1クールあたり@東京都)。

4回の採卵と6回の移植を経て着床に至り、現在18週となった。夫の家族にはなりゆき(生肉を食べられなかった)で伝えているが、実家にはまだ報告していない。
何故か。
その理由は、継続できるか不安であったことがひとつ。もうひとつは、NIPT(出生前診断)の結果を待っていたことだ。

私の親族にダウン症の人がいる。
30代前半だが、重度の自閉症があるため就業はしていない。
平日はデイサービスに通い、残りの時間は母親と過ごしている。

NIPTが盛んな国で、ダウン症児の出生率が極端に下がったと聞いたことがある。
障害を持つ子供も、家族にとって大切な存在であることに変わりはない。
幼い頃、ダウン症の親戚親子を間近に見た経験から、それは間違いないと思う。

でも、生む前に障害の有無を知りたいという気持ちがあった。
私の場合は実母から、「高齢出産をするなら検査すべき」という刷り込みがされていた。
上述の親戚親子は、まだ子が小さいうちに私たち家族の近くへ越してきている。法事があっても障害がある子は連れて来るなと言われるほど、実家から拒絶されていたようだ。子が通える学校だって、田舎には恐らくないだろう。(映画館が県内に4つしかないような土地だ。)

遺伝専門医と遺伝カウンセラーの説明を受けて、NIPTは生まれてくる子を守る準備だと感じるようになった。お腹の中にいる間にどんな病気が見つかっても、可能な限りサポートすると言ってもらった。(自院で対応できる範囲と、他の施設を紹介するケースの振り分けも聞いた。)ダウン症の子は心疾患など、合併症を持つ確率が高い。確かに命の選別につながる技術ではあるが、もっと昔からある羊水検査を非難する声は聞こえてこない。

12週時に採血をして、2週間で結果が出た。
結果は陰性だった。
NIPTで調べるのはトリソミー(染色体が3本ある疾患)3種のみである。
生まれてから分かる病気もある。発達に不安を抱える子を持つ人も数多くいる。臨月で流れることもある。
心配は尽きないけれど、どんな子でも大事に育てる。
どーんとした母ちゃんになりたい。

陽性判定が出た夜、布団に横たわって考えたのは「仕事再開できるかな」ということだった。
子供はやがて巣立つものだし、仕事は手放したくない。
稼いだお金で好きなものを買い、好きな人と遊び、好きな場所へ出掛けたい。プレゼントを贈ったり、推しに課金したりしたい。

保活で専業主婦は不利だ。待機児童0と発表しているS区に住む友人に、「羨ましい!」と訴えたら、あれは統計マジックだと教えてくれた。よくよく調べたら、R2年度で350名程度の0歳児が半径2キロ以内に園があっても通えていない状況らしかった。

twitterの不妊アカでは、陽性を妖精という。
クリニックはCL、今周期がダメだった時はリセットなど、この界隈でしか聞かない用語が飛び交う。
皆の共通目標は、一日も早いCL卒業だ。
卒業したら、アカウント自体を乗り換える(マタアカに移動)人もいる。
それは、お花畑(辛い治療のことはすっかり忘れて浮かれた言動をすること)になって、フォロワーが傷つくことを避けるためだ。
3年半ほどの観察期間で、8割以上のフォロー対象が無事に妊娠して不妊アカを去ったように思う。

ソースは忘れてしまったが、31歳までなら採卵は2回ほどで挙児に至るという。(欧米の女性が被験者の研究だったように思う。)
日本では30代後半から高度不妊治療を始める人も多いが、アメリカでは35歳を過ぎたら徐々に卵子提供の比率が上がるそうだ。卵子の老化に比べ、子宮の老化は緩徐であると言われている。50代でも出産するセレブはいるものね。

卵子の老化に対する認識は、日本でも十分根付いていると思う。
年齢を重ねるごとに、正常な卵子が排卵される確率が減って行き、受精率が下がり流産率が上がる。(30代半ばで50%ほどが良くない卵というのが目安だったはず)
ここでPGTA(着床前診断)が注目されるわけだが、日本ではまだ実施できる施設は少数で、条件が厳しい(35歳以上で、3回以上の流産ないし反復着床不全@2020年時点)。しかも1個検査に出すと10万かかり、ダメージが懸念される上、細胞を採る技術レベルに結果が左右される(らしい)。高齢の方には有意義かもしれないが、最後にかかった院ではやっていないと言われた。

お金さえ払えば、不妊治療をすれば、30代前半だし挙児は難しくないのではないか。そう思っていた。実際は、仕事と通院の両立に疲れ果て、巨額の支出に悶々とし、内診・検査・採卵の痛みに怯えながら、治療の止め時を考え続けて3年強を過ごした。

有名なクリニックでも卒業するのは1/3程度だ。自然妊娠する人や、転院して授かる人もいるだろう。でも、1回の移植で陽性が出る確率なんで20~50%程度に過ぎない。(自然妊娠の確率は、年齢にもよるが20%程度)
卵が育たない、数が採れない、質が悪い、胚盤胞まで成長しない、着床しない、着床しても継続しない。壁はいくつもある。現代の科学では原因が分からない部分もまだまだ多い。

男性不妊に気付かず、長い時間を無駄にするケースもあると聞く。
精子は卵子より小さいから、昔は鮮明な画像を撮ることすら難しかったそうだ。今は、AIで動きを解析するクリニックもあれば、元気そうな固体を識別する方法も様々開発されている。ヒアルロン酸にくっつけるトレーとか。

不妊の原因の半分は男性にある。研究が進んでいないだけで、現在もっぱら糾弾される「女性の老化による急激な着床率の低下」は、パートナー要因ではないかという医師もいた。
男性不妊の専門家が、挙児を希望する人にアドバイスするなら、「男女ともに自分より若いパートナーを得ること」と冗談を言っているのも聞いたことがある。若い細胞が補うような役割を果たすらしい。

不妊治療は沼だ。年を重ねることがまるで悪のように感じるようになる。30代前半はまだ若いと言われ、34くらいになると焦らなきゃダメと空気が変わる。私の場合は32歳時点でAMH(卵子の残存数を推測できるホルモン値)が実年齢+10歳で、誘発剤が効きにくい体質だった。AMHが0に近くても妊娠する人はいるし、卵子の質は年齢に依存すると言われても、不安がマシマシになって体外受精を本気で検討するきっかけになった。

これから治療を始める人がいたら、以下を勧めます。
1.ダメな可能性を十分理解してから始める
2.懐妊に至らない場合の将来プランを考える
3.辞めどきを最初に決める

20代で体外受精を繰り返す人もいれば、40代ですぐ結果がでる人もいる。子どもを授かって幸せになりたいとつぶやいている人を見たけれど、その考え方はちょっと怖い気がする。

頑張っても成果は出ないかもしれない。
子どもを授かったからって幸せになれるとは限らない。むしろ、夫婦仲が険悪になったり、子どものことで悩む時間が増えるかもしれない。

不妊治療に必要なのは、辛い時に話せる相手、打ち込める趣味や仕事、子どもがいない未来をどう楽しく生きるかのプランなんじゃないかと思う。
養子縁組についても検討していて、斡旋団体に詳しい方にお話を聞けたのがとても救いになった。ネットを見ているだけじゃ本当に良い団体を見つけるのは難しいと実感した。

不妊は疾患のようなものと思うようになってから、少し気が楽になりました。今苦しんでいる方がいたら、自分を責めないでと言いたいです。

そのうち治療歴を別記事でまとめようと思っています。
子ども望む方が、一人でも多く納得のいく治療を受けて、良い結果が得られますように。
まとまりのない長文ですが、勢いのままに投稿してしまおう。




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