自分が紡ぐことばで、自分がつくられる
会話はキャッチボールである。
会話のキャッチボールで返すボールに、自分らしさが宿る。
相手に求められていることを感じて、自分にできる(答えられる)方法を考える。
答えた内容がどんな形で影響を与えるかは、相手の置かれている状況や背景などで変わってくる。
すべて良いボールを返せているかは、わからない。
しかし相手を想って投げたボールは、相手との信頼の貯金になる。
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前職ではアパレルの販売員をしていた。
来店する人の目的は様々だが、共通するのは洋服を見たいという点だ。
販売員時代は、とにかく言葉のキャッチボールを絶えず交わす。
ボールが投げっぱなしになることも、しばしば。
それでも少しずつ心を開いてくれて、会話が弾む人もいる。
仕事をしている時は、「洋服を売る」より「人と話す」ことに重きを置いていた。
その中では、まず会話を始めて相手を知っていくことが必要である。
相手を知るためにも、安心して話せる相手だと認識してもらう必要がある。
だからこそ、相手を想いつつ会話を広げていけるよう心掛けていた。
日常の些細な雑談から始める。
時間帯によっては仕事帰りなのか、
日中であれば買い物のついでに寄っているのか、など会話のきっかけを探しつつ話していく。
もちろん一人で見たい人には、そっとしておく。
日常の会話から、目的の洋服があれば聞く。
例えば「ワンピースで」と言われる。
探している着丈や袖丈、色、シチュエーションなど細かく聞いて、自分がイメージを持てるようにする。
そこから、ようやく仕事らしい仕事になってくる。
「結婚式で、明るめで、膝と肩が隠れるデザイン」との情報を聞く。
更にイメージを膨らませる。
相手の印象、好みを想定しつつ、結婚式での特別な場であることを踏まえて、提案していく。
販売員の役割としては、その提案のタイミングにどれだけ付加価値を生めるかだと思う。
相手が求めていたワンピース(想像していたワンピース)よりも、相手の心を掴むような魅力的なワンピースを提案する。
そして求めていたワンピースだけでなく、合わせて靴やバックも見せることでよりイメージが湧きやすくなる。
もちろん提案したものが、相手の求めているモノでないこともある。
それは仕方がないので、他のモノを提案をしたり、他の店を勧めることもある。
店内にある物の中から、相手の探しているアイテムを魅力的に伝えていく。
相手を想う、プラスαの提案に、付加価値が生まれる。
そのボールの受け手との間に、信頼関係も築かれていく。
目的のモノに出会うことができれば、あとは少しリラックスしつつ相手との会話を楽しむ。
相手を知りつつ、自分の知らない世界のことを楽しんで聞く。
一度、信頼関係が築けると、次にもつながる。
自分に会いに来てくれる顧客がいることは、自分の自信にもなる。
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アパレルの販売員として働いていたのは、20代の頃。
販売員として働いてきた時の積み重ねで、「相手の求めることは何か」を考えるアンテナを高く持てるようになった。
「相手の求めること」を理解する。
その上で「自分のできること」を相手に返していく。
信頼をつないでいく。
大きくは"話を聞く"
というスキルなのだけど、"話を聞く"のは言葉で聞くほど、簡単ではない。
自分のフィルターが強くかかりすぎると、相手の意図を汲み取れなくなる。
相手のフィルターが強くかかりすぎると、相手に合わせるばかりで、自分が返すモノがなくなる。
話の聞き方にも、バランスが大切である。
バランスを保ちつつ、良き聞き手、返し手であり続ける。
そのことを大切にしつつ、どんな環境であっても、自分らしく持てる力を発揮して、信頼関係を築いていこうと想う。
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