魂の森


小さな森があって、例えると
それがあなただとする
例えなくても森はあなたなのだが

雑木林は高い木も低い木も生えている

広葉樹、針葉樹のそばを歩くと清々しい

北側の薄暗い崖には湿った場所を好む植物
そこに生きる生き物もいる
ちょっと見た目が嫌?

でもたいてい、そんな場所から清水が湧き出している

あなたは一本の曲がった貧弱な木に目をとめた

自分の森にはふさわしく無い気がして切りたいと思った

つた植物は高い木に寄生して繁茂していた

よく見ると虫こぶだらけの樹もある

美しく無いそれらばかりを見つめていたら、次第にこの森はダメだと頭を振るようになった

桜が一斉に咲く桜の森が良かったろうか
あるいはりんご園、オリーブの林、
葡萄畑、桃源郷が理想だったろうか

そして、あなたは
あなたの小さな雑木林は
価値が無いと思うかもしれない

あなた以外は何者もそうは思ったことが無いのにも関わらず

ひねくれた老木も、寄生植物に取り憑かれて苦しそうな樹も、
あるにはあるが、森全体は尊く、そして機能している

森は四季折々、呼吸し、水を吸い上げて泉を作り、生命を養い、
密かに生存競争をしてはいるが、
世界と調和している

だからナントカ光線ビームとやらで貧弱な木を消滅させなくていいし
誰かの目を気にしなくてもいいし

全部引っこ抜いて桜の園にしたいだなんて
無理なことを考えてエネルギーを枯らすよりも

あなたの森の清らかな湧き水を
ひとすくい

飲んでみよう

天使も妖精も妖怪も精霊も龍も
住んでいるその森に

あなたにはその森を護る大切な役目を
預かっていることを忘れたのか

森の奥には山桜も生えている
春に咲く木蓮も、秋に狐も食べに来るあんずも
森林の花の蜜だけを取りに来る蜜蜂も

なんと豊かで美しい森だろうか

あなたは
ただ静かに
そっと森の入り口に立って、
これは私の森ですと
微笑むだけでいいのではないだろうか


#鎮守の社
#自分とは何か
#生存の思い出し方

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