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「仕事も出産も」を当たり前にしたい!道無き道をつくる 36歳女性経営者のチャレンジ 〈株式会社プラスカラー〉

固定概念を捨て新しい働き方を生み出す。現代女性のロールモデルを目指して

昔に比べて「女性が働きやすい環境は整ってきた」と言われている。
しかし、まだまだ日本社会は男性中心で出産や子育てを経験した女性が働きやすいとはいえない。
世の中で“常識”とされていることに疑問を持ち、子育て中の女性でもやりたいことにチャレンジしながら働き続けられる環境をつくることに勤しむワーキングマザー、株式会社プラスカラーの代表・佐久間映里さん(36)に話をうかがってみた。

「仕事か出産」を選ぶのは女性だけ?「仕事も出産も」できる職場づくり

株式会社プラスカラーは「女性が変われば、社会が変わる」をコーポレートスローガンに掲げ、企業の広報支援を軸に女性活躍を促進する会社だ。プラスカラーでは、多くの働きたい女性がオフィスだけでなく、インターネットを通じて時間や場所にとらわれずに仕事をしている。佐久間さんが今のような会社を作ろうと思ったのは、自身の出産や子育てがきっかけだった。

大学卒業後、大手求人広告の営業に従事した佐久間さん。年間MVPを獲得し、他社からヘッドハンティングされるほど優秀な営業パーソンだった。その後ベンチャー企業への転職も経験し仕事もプライベートも120%こなす“バリキャリ女子”だったが、ある時「子ども産んだらこの働き方は続けられないかもしれない。」と感じたのがきっかけで起業することを決意したそう。

「働くなら正社員」がいいってホント?決まった時間に働くことへの疑問

仕事か出産かどちらか一方を選ぶのではなく“仕事も出産も”したい。そう考えた佐久間さんは、自分で会社を立ち上げることにした。現代の日本社会は週40時間、月160時間働くことを前提に作られている。佐久間さんが疑問に感じたのはそこだった。

「私たちは本当に1日8時間、週40時間という決まった時間に働く必要があるのでしょうか?その働き方が、働きたくても働けない人を作っているのではという気がしています」

次に佐久間さんが疑問に感じたのは、“働くなら正社員”という価値観。

正社員で雇用されれば安心。という価値観はもう古い。終身雇用の維持不可と副業を解禁する企業も増えており、近年はフリーランス化も進んでいる。

「まだ十分に環境が整っているとはいえない中で、業務委託で働く人を守ろうという動きは必要なのかもしれません。でも、その前提には、フリーランスより安定した正社員の方がよいという考え方があると思うんです。終身雇用が当たり前でなくなった現代では正社員=安定の考え方は危険だと感じています」

働く側にも選ぶ権利を。生き方を選べるフリーランスという働き方

現在、プラスカラーには正社員がいない。これまで雇い入れていた人は、業務委託に切り替えたという。プロのビジネスパーソンとしてパフォーマンスの有無に正社員であるか否かの雇用形態は関係ない。むしろ成果を出す方程式さえ知っていれば、時間や場所を拘束されず働いたほうが時間も有効活用できるため生産性高く働ける。

「代表の自分でさえ、安定した存在ではありません。成果が出せなければ役割を交代する可能性だってあります。また、働く側にも仕事や環境を選ぶ権利があると思っています。これからの時代、お互いがWin-Winにならない関係は良い効果をもたらさないはずです」

子育てや介護などで時間的に制約のある人が、そうでない人と同じように働くのは不可能に近い。時間ではなく成果に対して報酬を支払うようにすれば、必ずしも決まった時間に働く必要がなくなるため、働きたい人が働けるようになる。さらに、成果を重視することは、働き手の成長にもつながると佐久間さんは考えている。

従来の雇用制度では、会社が社員の雇用を保証し社員の育成を行う代わりに、会社が社員の働き方、そして生き方を決めてきた。会社のために長時間働く人を評価する風土も、そのような働き方を背景に作られてきたのかもしれない。

「プラスカラーは昭和の価値観を変える存在でありたい、と思っています。これからは人生100年時代といわれています。先が見通せなくなっている世の中を生き抜く手段として、従来の働き方は心もとないと感じています。過去に学ぶことは必要だと思いますが、とわられてはいけないのではないでしょうか」

すでに日本人が競争する相手は、日本国内だけにとどまらなくなっている。そのような厳しい時代では、正社員としての“安定”を探すより「どうすればやりたいことができるのか?」という想いを持って、チャレンジし続ける人の方が生き残っていけるだろう。

「フリーランス契約は、働く人と会社の双方にとってよい関係になれる方法のひとつではないかと考えています」

「女性が変われば、社会が変わる」。仕事も家庭も大事!やりたいことは全部やろう

凛とした眼差しとハキハキと理論立てて話す佐久間さんからは、強い意思とエネルギーを感じる。しかし、そんな佐久間さんも一人の母親であり、子育て真っ盛りというから驚きだ。

佐久間さんには現在4歳の息子がいる。少し前まで、共働き家庭の子どもは保育園に入れるものと思い込んでいたそう。そんな中、「共働き家庭の子どもは保育園に通うって、誰が決めたんだろう?」という疑問が浮かんだ。幼児教育に関心があったため、息子を幼稚園に入れたいと考えていた。ところが、保育園より保育時間が短い幼稚園は、早い時間にお迎えにいかなくてはならない。仕事をするなら保育園。幼稚園に通わせたいなら仕事はできない。そんな固定概念に自らがとらわれていたと気づく。

そこで佐久間さんがとったのは、外国人ベビーシッターを迎え入れるという方法だった。幼稚園が終わる頃にシッターにお迎えをお願いし、そのまま家で英語も教えてもらうことにした。その結果、仕事に集中できる時間が増え、帰宅後は子どもとの時間もしっかりとれるように。朝は夫に息子を幼稚園に送り届けてもらい、帰りを担当するのは佐久間さん。家事も夫と役割分担しているため、ストレスを感じることはほとんどなく、理想の働き方ができていると話してくれた。

“三つ子の魂百まで”ということわざのある日本では、子育ては母親が自ら行うものという考えが根強い。一方、「必ずしもお母さんが一人で頑張る必要はありません」と佐久間さんは言う。

「お母さんはみんな、頑張りすぎています。全てに120%の力を出す必要はないんです。母であり、妻であり、ビジネスマンでもある私たちは仮にそれぞれが70%くらいのパフォーマンスだったとしても、3つ掛け合わせたら210点。要するに2人分です。それで十分」

その考え方は、受け入れられる人とそうでない人がいるだろう。しかし、佐久間さんが実践するのは制約ある働き方への、ひとつの現実的な解決策。女性が変われば、社会が変わる。

「たとえ制約があっても、やりたいことは全部やりたい。そう考えるパワフルな女性にとって、プラスカラーという組織が活躍できる場所になったらいいなと思います。道無き道をつくることは決して容易ではないけれど、現代のロールモデルの一サンプルとなれるようにチャレンジし続けます」

佐久間さんはきっと、新時代における女性の働き方にメスを入れてくれる存在になるだろう。

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