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支援級と普通級:どちらが我が子にとってのベターか?~私の決断とポイント~

今回のテーマ:支援級か普通級かの選択

 こんにちは。前回は発達検査で軽度知的~境界域と指摘をされている娘の療育などの利用や進学先小学校決定までの経過などをまとめました。

 今回は、この1年の重要テーマだった娘の進学問題「支援級(特別支援学級)か普通級(通常学級)のいずれかを選択するか」について、私の最終的な判断とそこに至ったポイントをまとめます。

 娘が保育園年長となったこの1年、娘にとって支援級か普通級のどちらがベターなのか、最後まで悩みに悩みました。
 「ベター」という表現になったのは、支援級、普通級どちらを選択しても、重要な部分での不安や懸念要素はあり、どちらも娘に完全にフィットするとはいえない中で、「ベスト」というより「ベター」だと考える方を選択したと感じているからです。


 普通級に行けば、

・学習に適応ができないかもしれない
・様々な場面での理解力の低さ、言葉の表現の拙さなどから、周囲についていけず自信を失ったり、友達にばかにされたり、傷つくかもしれない 
 
 という大きな不安はある。
 その理解力に応じた個別学習の必要性も否定できない。

 一方、支援級に行くことについては、

・定型発達の子を含めた様々な友達から刺激を受け、成長発達する機会が大幅に減ってしまう
・知的発達の遅れは軽度で、運動、集団生活含め出来ることも多いのに、学校生活の大半を普通級と分けて活動する必要があるのか
・友達と過ごすことが好きで、活発な定型発達の子たちから刺激を受けて、何事も意欲的に取組んできた娘の性格が支援級の雰囲気と合うか
・保育園の友達みんなが進学する学区の小学校に行きたいという娘の気持ちをどう受け止めるか
・支援級だけで能力や進路に応じた適切な学習環境として十分か

 など、大きなところで引っかかる点がある。


 そうしたことを考えながら、「どちらが娘の成長発達にとって良いのか」「娘が自分らしさを失わず前に進むには何が必要か」、悩み続けました。

 そして、最終的に、私は、就学相談での知的支援級判定にかかわらず、

①自宅近くにある学区の指定小学校=普通級(支援級の設置無し)に進学する
②学校生活については、学校に娘の発達課題を踏まえた一定の合理的配慮(座席配置、板書情報の提供、宿題量の調整、学校ボランティアによる一定の見守り等)を求め、適応に向けた環境調整を図る
家庭でも学習面のフォロー体制を今まで以上につくる
④やってみて、難しいと判断した時は、支援級への転籍など娘にとって必要な環境選択を改めて行う

 という方針で進むことを決めました。

 正直、今も、正解は分からない、やってみなければ分からないという感覚ですが、まずは自分の決めたこの方針で頑張ってみようと思うに至りました。

前提:娘の進学先の選択肢は、知的支援級か普通級の二択だった

 娘は、発達検査で軽度知的~境界域知能の数値のため、知的発達の遅れがある場合に分類されます。

 知的発達の遅れがあると、普通級に在籍しながら、コミュニケーションや言語機能の課題等に対し、週に1回程度、個別の指導を受ける通級(通級指導教室)は、対象外となります。

 また、知的発達の遅れがあると、特別支援級のうち、普通級と同レベルの授業が行なわれる「自閉・情緒支援学級」も対象外となります。
 
 そうすると、娘の場合、知的発達の遅れが軽度や境界域でも、通級のように普通級に在籍して個別支援を受ける道はなく、①普通級か、②特別支援級の「知的支援学級」か、の二択となります。

 知的支援級は、知的発達の課題等がある子どもたちを対象とする原則8人以下の少人数クラスです。一部の授業等で、普通級の子どもたちと過ごす「交流」「共同」の実施はありますが、基本的に、行事から給食、掃除など含めて学校生活の大半を、普通級とは分離されて活動する学校が多数です。
 
 また、知的支援級における学習は、「生活単元学習」「自立活動」などという、買い物をする、食事をつくるなど、社会で生きる力を身につけることを目的とした教育内容が中心となっています。
 学校教育法等で普通級の子たちには年齢相応の基礎学力習得に主眼を置いた学習指導要領に基づく指導が義務化されているのに対し、その縛りはなく、教育内容の基本的考え方が違います。

 こうした特別支援教育の基本的な制度枠組み理解が判断の前提となりました。

就学相談と支援級判定

 私は、区内の知的支援学級などを見学し、①自宅から遠方だが、比較的普通級の子たちとの授業、行事等での「交流」「共同」が進んでいる特定の小学校の支援級、②学区域の指定小学校(普通級)、に対象を絞りました。
 そして、保育園年長の夏に正式に区の教育委員会に就学相談を申込みました。

 その結果、特別支援教育相談委員会から、「支援級(知的障害・固定)」相当という判定結果と理由のフィードバックを受けました。

 委員会から説明された判定理由の大きな点は、
〇指示理解が不十分な点があり、集団の口頭指示を基本に進む普通級ではついてけない懸念。
〇苦手なことへの自信のなさが見られ、普通級では自己肯定感が下がる懸念がある。
 とのことでした。

 なお、担当者から、娘については、人への親和性や意欲の高さも認められ、委員会でも、支援級、普通級で意見が分かれ、悩んだと言われました。

普通級を選択した理由とポイント

 最後まで悩み、支援級判定も受けましたが、最終的には、
 ⇒普通級進学+学校の合理的配慮と家庭での学習フォローによる環境調整
という結論になったことは冒頭述べたとおりです。

 その判断過程で考えたのは以下のようなことでした。

①成長発達の機会と定型発達の子たちとの分離をどう考えるか

 知的支援級へ進む1番の懸念は、定形発達の子も含めた様々な子どもたちと一緒に学校生活を送り様々な経験を重ねることで成長発達する機会が大幅に減ることでした。

 娘の場合、保育園で当番、給食、運動会などの行事等全て集団生活の中で対応できており、給食、掃除、行事などを含む学校生活の大半を普通級の子たちと分かれる必要性があると思いませんでした。

 また、娘は、保育園で友達と一緒に過ごすことが大好きで、娘と比べ何でも容易に出来る定型発達の友達から刺激を受け、「自分もやってみたい」と意欲的に挑戦することで、出来るようになったことがたくさんありました。

 もちろん、療育や知的・発達障害のある子向けの習い事などで、娘と同じように何らかの発達の課題を抱えた友達の中で、自分のペースで穏やかに遊びや勉強に取り組む時間も大事でした。

 それでも、活発でコミュニケーションも豊かな定形発達の子たちからの影響は大きく、娘の成長発達にとって、定型発達の子を含めた様々な友達とともに過ごす中で着実に力をつけ、そのことで自信をつけられたことは、大きくプラスの影響を与えたと感じています。

 教科学習について個別学習の必要性、有用性があるとしても、それ以外の学校生活の大半で、定型発達の子を含めた様々な子たちと切磋琢磨する中で成長発達する機会まで制限する今の基本分離の制度が、娘の特性や性格を踏まえた時にフィットするのかという疑問が私の中で解消できませんでした。

②娘が友達と一緒に進学したいという意思を明確に示したこと

 もう一つ普通級に気持ちが傾いた大きな要因に、娘自身が、学区の小学校に行きたいという明確な気持ちを示していたこともあります。

 私は、支援級選択も視野に入れていたため、娘が見通しをもてるよう、勉強などを丁寧に見てくれる学校の方が楽しく、新しい友達も沢山できると思うこと、皆と同じ小学校には行けないかもしれないことなどを要所要所で伝えていました。

 これに対し、娘は「絶対に〇〇小学校に行く」「〇〇小学校以外は、無理だから!」と言い続け、その理由を聞くと「みんなと会いたいから」「お友達と一緒にお勉強したいから」と言いました。

 保育園の先生にも「私は〇〇小学校に行けないの?」と聞いていたそうです。

 支援級か普通級かという重要な選択について、私は娘本人の気持ちより、親が客観的に娘の状況を見て決めるものと思っていました。
 
 しかし、娘自身が、友達との関係の中で出来ることを増やし、自信をつけてきた様子があり、保育園の友達と一緒に学区の小学校に行きたいと強い意思を述べている状況を考えると、その気持ちを受け止めることは、娘の今後の意欲を維持するために必要ではないかと感じました。

 仕事で関わりのある教職の方たちや同じように発達に課題のある子を育てている保護者の方などから、「そこまで娘さんが学区の小学校に行きたいと言っているなら、まずは挑戦させてあげたら」と助言されたことも、自分の判断の後押しとなりました。

 そのようなことから、将来仮に支援級に移籍することがあるとしても、まずは、普通級に進学して、娘本人が実際に経験して、普通級は辛いというSOSを出した時など本人の納得を経て、支援級への転籍など他の選択肢を進むという過程を経ることも必要ではないかと考えました。

③自己肯定感の低下などの懸念について

 就学相談では、普通級では娘の自己肯定感が低下してしまうという懸念を伝えられました。

 また、様々な子どもと学校生活を送ることによる成長発達の機会の重要性という考えに対し、「学校の生活の大半は学習である」、「学校は「楽しい」だけではやれない」、「支援級の対象になる子は普通級では疲れてしまう。支援級が休息の場になる」、などの意見ももらいました。

 定形発達の子のペースに合わせた普通級の現状からはそのような懸念はあると思っており、今後の娘の様子を見ていくうえでも頭に入れておかなければならないことだと思っています。

 しかし、では、今、娘が友達と一緒に地元の小学校に進みたいという気持ちと意欲をもち様々頑張っている中で、それでも娘だけ友達と同じ地元の小学校に入れず、かつ、少人数での支援級中心の学校生活の中で、学校の大多数を占める普通級の子どもたちが、活発に遊び、勉強、行事等で活躍する姿を、「自分もあの中に入りたい」「でも自分は入れないのだ」という思いを抱えて眺めている姿を想像すると、心が痛みました。

 そして、果たして、その環境で、本当に娘の自己肯定感が保持できるといえるのだろうか、と思いました。

 そもそも、本来、発達課題や障害の有無にかかわらず、多くの子どもが、その成長発達の過程で、友達と一緒にいたい、自分も友達と同じようにやりたい、出来るようになりたい、という気持ちを抱くことはごく自然なことでもあるはずです。

 知的発達に課題があるだけで、一律に分離を基本とし、そのような自然な思いや欲求を阻害してしまう制度が、蔑ろにしている子どもの気持ちもあると感じました。

④学習面の課題への対応

 知的支援級を視野に入れた1番の原因は、娘の場合、視覚認知と手の巧緻性の苦手さが顕著で、読み書き等の板書能力に懸念があったため、理解力に関わらず全ての学習が困難ではないかとの懸念がありました。

 主治医からは、知的発達の課題がある子の場合、文字の読み書きや数字の構成など基礎学力をどの程度習得できるかが将来の進路選択に与える影響が大きいと言われたこともあり、境界域の娘の場合は、基礎学力習得に向けた学習フォローは大事だと思っていました。

 そうしたことから、娘の理解力に合わせた個別学習の必要性という点でも、勉強に全くついていけないと、学校に行くのが辛くなる可能性もあり、やはり知的支援級に進むべきかと悩みました。

 ただ、知的支援級での学習環境について、仕事で関わりのある教育委員会管理職や支援級の教員など教職の方たち等にも話を聞いたところ、
〇生活単元学習が基本であり、年齢相応の学力習得に向けた指導を行う普通級とは根本的に、学習の目的、教育課程が異なること
〇学習指導要領に基づく授業内容の縛りが無い制度上、学習内容は担任の裁量が大きく、その力量・意欲次第で学習指導の充実度に差が出る
 などの状況を聞きました。

 また、知的支援級で良い先生に恵まれたという保護者の方もいれば、普通級への移籍を選択した保護者の方から、「少人数指導で手厚いと言われたが、クラスの子の障害や特性の内容は個々異なるため、大人しく手がかからない子は、毎日一人で机上で単純な同じ課題を繰り返していた」という話を聞くこともありました。

 個別の事情もあり一概には言えませんが、私自身は、様々な人に話を聞いて、支援級に行けば、その子の能力や状況に応じた「適切な」個別学習の機会がしっかり保障されると単純には言えない実情もあると感じました。

 また、支援級の教職をされている方に紹介された以下の本を読み、特別支援が必要な子の将来の進路の選択肢としてある普通高校、通信制高校、高等特別支援学校、特別支援学校など、それぞれ受験に必要な要件や具体的な学力(小学校高学年レベル、英語の有無等)などが異なることを知りました。

 そうすると、子どもの発達課題、障害・特性等の状況に応じ、将来目指す進路に備えて逆算的に、習得が必要な基礎学力のレベル、いつまでに習得が必要かということを想定する必要があり、支援級、普通級の選択もその延長線上で考える必要があると感じました。

 これらのことから、支援級を選択した場合も、家庭でしっかり学習面のサポートをしながら、学校に対しその子の能力や希望する進路に合わせた学習指導等をこまめに求めていく必要があると感じました。

 そうすると、結局、支援級、普通級いずれを選択しても、軽度知的から境界域の指摘のある娘の場合、学校との間における学習環境の調整や将来の進路選択に向けて学習面の課題へのフォロー体制を家庭で築いていく必要性は同じであると感じました。

⑤ではどうすれば良いのか?ー私の結論ー

 主に以上のことを色々考えた結果、私は、冒頭のように
 まずは、娘の希望どおり、地元の普通級に進学したうえで、学校との環境調整、家庭での学習フォロー等により、学習等の遅れに対するフォローをしていく、
 という形で、まずは進んでみよう、という結論に達しました。

 ただ、やみくもに普通級を選択しようと考えたわけではなく、私の中では、板書の基本となる「ひらがなの読み書き」がなかなかできるようにならなかった娘の状況を見て、主治医から普通級入学の最低条件と言われた、

「入学までに、平仮名の読みと自分の名前を書くことが出来ること」

 を基準に最終的判断をすることにしました。

 結果的に、娘は12月頃から急に平仮名が読めるようになり、上手ではありませんが、3月現在名前以外の書きもある程度出来るようになってきました。

 進学後の家庭でのフォロー体制としては、
◎従前から利用している知的・発達障害等がある子ども向けの学習塾の利用
◎平日に学校の宿題を教えてくれる民間学童、放課後デイサービス等の利用
◎自宅学習
 等を考えて、体制を検討しています。

 ただし、私たちは夫婦ともにフルタイムで仕事をしており、これまでも保育園と療育、医療機関、障害児向けの習い事等の付添や送迎手配等の遣り繰りと仕事の両立は非常に苦労してきています。
 そのため、小学校入学後にこれまで以上にフォローが必要になるかと考えると、頭が痛く、仕事が続けられるだろうか‥と考える時もあります。
 ですが、子どもの将来に関わることなので、何とか気持ちを奮い立たせてやれるだけやってみるしかないと思っているところです。

⑥学校に配慮を求めるという選択

 なお、学校への配慮を求めるという点については、進学前に何度か進学先の学校と連絡調整をし、学校への要望として、

〇現在も板書能力獲得に向けて家庭で努力をしているが、入学後も板書能力が不十分であった場合、板書情報の別形態での提供
〇必要に応じて、宿題量の調整(少し減らしてもらうなど)
〇担任の先生から見えやすい場所への座席配置
〇娘と1対1ではなく、クラスにいる課題のある子複数をまとめて見守る形で良いので、区及び学校で登録している「バリアフリーパートナー」(学校ボランティア)の見守り対象児童とし、先生の指示や状況理解が不足している場合は、促し等の支援をいただきたいこと、
〇事前に見通しが持てるよう入学前に、教室やトイレ等の見学

 などをお願いしました。

 これに対して、途中経過では、牽制的なことを言われることもありましたが、学校からは、上記のような要望であれば、基本的に対応できるとの回答をいただき、現に調整してもらっています。

最後に…

 以上のとおり、私は悩みに悩んだ末に、普通級を選択しました。

 この3年間娘の療育等に取組み、親子で頑張りながら、娘の様子や変化を見てきたつもりです。
 また、教育委員会管理職、巡回教員、児童心理職、児童精神科医、似た境遇を経験した保護者、療育や習い事先の先生、保育園など、思いつく範囲の様々な立場の人に意見や話を聞きに行き、勉強もしました。

 就学相談以降は、主治医等にも相談を重ね、教育委員会や学校ともこちらの意見を伝えながら、入学に向けた調整を図ってきました。

 その過程では、現実を受け止めるのに葛藤したり、娘の状況に焦り、気持ちに余裕を無くして落ち込むこともありました。仕事も忙しい中での遣り繰りでもあり、心身ともにとてもとても疲れました…。

 そこまでしても今でもこの判断で良かったのか時々不安に襲われますが、娘の成長発達や将来の可能性に向けて、何が必要かということを出来る限り客観的に考える努力をし、悩み、落ち込み、葛藤しながら、自分に出来る限り熟慮を重ねて判断することはできたとは思っています。

 支援級か普通級かの選択は、現在の特別支援教育の制度が、原則定型発達児と分離になっていて、一部地域で実施されているような課題や障害の有無に関わらず皆が同じ普通級に在籍して障害に応じた配慮を実施するインクルーシブな学校や、個々の子どもの発達課題の内容や性格等に応じた中間的な制度の実施例は非常に少なく、親側の悩みも深くなり、親も子ども本人も心が傷つく過程をたどることも少なくないと感じます。

 発達課題や障害などの内容も千差万別で、親として何を優先したいかという考えが異なるのも当然のことであり、正解はなかなかないと思います。

 失敗だと思ったら、その時に必要な方向転換をする、専門家の意見を参考にしても、最後は親が子どもの様子を見て判断して選択と決断をしながら進むしかないことも少なくない、と感じます。

 大変ですが、皆さんがどうか、子どものために、自分が納得できる判断ができますよう、一つの例として何かの参考にしていただければ嬉しいです。