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のざわの小説

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のざわが投稿した娯楽系小説(主に短編)、そして振り返り記事をまとめました。逆噴射小説大賞などに参加しております。遅筆のため稀にしか投稿しておりません。
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#創作

「迦陵頻伽の仔と墓標」

 黒羽を翻す禿鷲が、曇天を切り裂いて大地に舞い降りた。その光景に相対する時、高原を征く旅…

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「近視の戦士は夢想する」

「こちら、最新式の魔力増強仕様となっております。色も大きさも豊富に取り揃えておりますので…

のざわあらし
1か月前
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「迦陵頻伽の仔の憧憬」

 闇に包まれた石窟の奥で二柱の燭台に炎が灯されると、上品下生印を結んだ阿弥陀如来の立像が…

のざわあらし
3か月前
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「白い弾丸、頬を染めて」 #シロクマ文芸部(雪化粧)

 雪化粧に染まった山薗市民球場に、無数の歪な白球が飛び交う。  前日の降雪が嘘のように晴…

のざわあらし
4か月前
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「迦陵頻伽の仔は西へ【完全版】」 #パルプアドベントカレンダー2023

 入唐後の二年半で良嗣が集めた衆目は数知れない。外套で覆われた七尺半の巨躯もさる事ながら…

のざわあらし
5か月前
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「逆噴射小説大賞2023」 ライナーノーツ 前編(青き憤怒)

⚫︎はじめに  「逆噴射小説大賞2023」。娯楽小説の冒頭800文字を競う奇祭に、俺は以下の2…

のざわあらし
7か月前
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「迦陵頻伽(かりょうびんが)の仔は西へ」

 身の丈七尺の大柄。左肩の上には塵避けの外套を纏った少女。入唐後の二年半で良嗣が集めた衆目は数知れず、今も四人の男の視線を浴びている。  左肩でオトが呟いた。 「別に辞めなくたって」  二人は商隊と共に砂漠を征き、西域を目指していた。昨晩オトの寝具を捲った商人に、良嗣が鉄拳を振るうまでは。 「奴らは信用できん」 「割符はどうすんの」  陽関の関所を通る術が無ければ、敦煌からの──否、海をも越えた旅路が水泡に帰す。状況は深刻だった。  口論が白熱する最中、遂に視線の主達は姿

「青き憤怒 赤き慈悲」

 柔い背に刺棒を挿れる度、琉の華奢な身体は悶え、施術台を微かに揺らす。  額の汗を拭い、…

のざわあらし
7か月前
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「さらば愛しの有也屋」 #AKBDC2023

「鰻重を」  店主の挨拶すら待たずに注文をした俺は、過剰に気が急いている。  差し出され…

のざわあらし
9か月前
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「おやすみ、ナナセ」 (下)

⑤ 再会  “日払い可 権利金・保証人不要”  アパート……いや、簡易宿所と呼ぶべきだ…

のざわあらし
10か月前
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「おやすみ、ナナセ」 (上)

⓪ 誕生  燃ゆる星。滴る朝露。空風の嘶き。輝く砂粒。そして、無数の命。発生したばかり…

のざわあらし
11か月前
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落選の、その先へ

●「ジャンププラス原作大賞」結果発表  先日、「ジャンププラス原作大賞」なるコンテストが…

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「鳴砂山の彷徨人」

 きゅ。  踏み締めた砂が鳴く。聞いているのは俺しかいない。灼熱の太陽から目を背け、足元…

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「私たちは不器用なジャグラー」 【本編】

 5つの球が宙を駆け、セーラー服と長い黒髪が風を纏う。  遊具も人気も無い、ベンチが一脚置かれただけの簡素な公園。そこを彩るのは夕暮れ間近の秋空と、白河奈月が繰り出す5ボールカスケード。  ──その完全なる調和は、突然迫ってきた佐和田陽菜の大声で崩壊した。 「お、お願いします!お手玉、わたしに教えて下さい!」 「……ジャグリングって呼んで貰えます?」  ─  押しの強い元気な子……それが奈月から陽菜への第一印象。無理もない。練習中に他人に話し掛けられたのも教えを請われた