母が片麻痺になり、世界が色褪せた。1

どうにも気持ちが沈みがちなので、ここに記録として残す事とする。

先週、母が具合を悪くして救急車で運ばれたと実家の父から電話があった。結婚して実家を出て、良好とは言えないながらもなんとか日々の生活を送る中、頻度の低い父からの電話はそうして私の元へとやってきた。

それから何度かけても繋がらず、ようやく夕方、着信があった。

「ちょっと脳の血管が切れたみたいで、左側があまり動かない」

瞬間、

父からの電話が、どこか別の世界の音のように聞こえた。

“あまり”という表現から、またしてもどこかで「動きは悪いけれど、まだ回復する兆しのある状態なんだろう」と、ポジティブに捉えながら「なにかあったらすぐ駆けつけるから」なんて簡単に考えていた。

コロナもあって面会は父しか出来ないと言われ、面会も連日は許されなかったらしい父が病院からの電話を待っているさなか、悪い予感ばかりが頭を占めた。(正確には家族一人につき許可証一枚らしいので、許可証をもらえれば面会は許されたはず)なんとなく現実を直視したくなかった私は父の言うがまま、「なにかあったら」「出来ることがあれば」と仕事と子育てに逃げて父に任せきりにしていた。

何度かLINEを送りはしたものの既読が付かず、五日後初めて母からLINEが来た。

「車椅子に座りました。頑張ります!」


会話が出来る。文字が打てる。

一気に安堵したのを覚えている。

けれど車椅子に座る、という単語が、不安の種を大きくした。




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