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#18 【入院12日目】 開頭

カイトウって打っても一発で変換されない。
回答、解答、解凍、快投、怪盗。
当たり前か。開頭なんて頻繁にするもんじゃない。


それを、する。


落ち着かない気分の朝、別の緊急手術が入ったとの報せ。
時間が来たらコールします、と言われる。また、待つしかない。

でも、ある意味そこまで緊急性がないのであれば、私の容体はまだ安定しているのだ、と思う事にする。

いつになるかわからないというのは落ち着かない。

時間をつぶす為に漫画を読もうとしたが入り込めなかった。

イヤホンをつけて音楽を聴くことだけは出来た。

繰り返される「血が泣いているんだよ」というフレーズ。
そう、泣いている。正に今それなんだよと、実感した。「人生の終わり」という曲を人生が終わるかもしれないときに聴けることも、そうそうない。


オペ看の女性に「何か不安なことはありますか?」と尋ねられたので、遠慮なく言った。

「麻酔から覚める時に誰でもいいので手を握っていて欲しいんです。予備手術の時にすごく、不安だったので」

「判りました、そうしますね。そういう方、結構いらっしゃいますよ。」


ああ、良かった。第一関門突破。
後からお願いしておけば良かった、とまた思いたくはない。不安を消すためにやれることなら何でも。

全身麻酔は胃カメラで経験があった。スッと目の前の景色が消えていき次に目覚めるのは手術が終わった時なのだろう。ある意味、局所麻酔で記憶も感触もあった予備手術よりは苦しくないかもしれない。


ようやく手術の順番が回ってくる。


怖い。

怖いと感じられることは幸せなのだ。と思いながら。

目が覚めて、私は何を思うのだろうか。思えるのだろうか。

……そうじゃない場合の事は、考えないようにしていた。


麻酔が溶けていった。

#髄膜種 #入院記録 #2021髄膜種入院記録 #開頭手術 #全身麻酔

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