のざきり菜

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♯08 友達になんと言う?

近しい友達に2人だけLINEする。 脳腫瘍という単語は重すぎる気がして。 「スーパーでめまい起こして実は今入院している」 「懇談会に出席すると返事したけれど、実はしばらく入院することになったから欠席にしておいて」 どんなテンションで言えば良いのか難しい。気を使わせたくないし。なんとなく、伝わってOKなところまで、と。 あとは、事務的なところへの連絡。 在宅ワークの仕事先。ひとつは、締め切りが大分先なので様子見。文章なら入院中にも書けるかもしれないし。 点滴を繋げて

    • #07 入院二日目。検査、検査、検査。

      12/4。 急患用の病棟。「イリエ君…あなた何年目なの?」と説教されている男性の看護師。イリエだったら先生でしょ、とイタキスの読者としては言いたくなってしまった。そういえば、多田かおる先生は…頭を…。普段は考えてもいないことが頭の中を突いてくる。 目まぐるしい環境の変化に、この日のことはあまり覚えていない。 急患の病棟から一般病棟へ移動した。6人部屋だが2床空いている。聞こえてくる会話から、70~80代くらいの方のようだ。 廊下側の端がこれからの私の居場所らしい。カー

      • #06 入院。パワーアップして帰ってくるよ。

        どれくらいの時間が経ったのだろう。眠っていたらしい。 息子が到着していた。夫がNIKEのスニーカーも持ってきてくれた。 救急車で娘と共に病院に運ばれ、夫は会社から駆けつけた。その間に息子は学校から帰宅。夫が自宅に電話をかけ、経緯を説明して留守番しているように話したとのこと。 そして、夫は自宅に戻り息子を迎えに行き、再び病院に来たのが今だ。 息子は家で泣いていたという。神棚に祈っていたそうだ。 うちは無宗教だけど、なんとなく神棚はあり、七五三や初詣のお守りやらお札やら

        • ガン的なもの?

          CTを撮ったあとはMRIの撮影だ。この時は言われるがままで違いはよく解っていない。 時間が長く音もうるさいのだという。検査台に乗せられヘッドホンを付けられる。頭が固定され身体が真っ白い筒のような大きな機械に吸い込まれていく。 天井のパネルには写実的な木々のイラスト。わざとらしいほど明るく爽やかな。ヘッドホンからはオルゴールの音楽が流れる。少しでもリラックスするように…なのだろうけど私は段々冷静になってきていた。 なんだっけ、この曲。ああ、zooのChoo Choo TR

        ♯08 友達になんと言う?

          #04 待ち時間。娘の気持ち。

          病院についてから、意識はあり普通に話が出来ている。点滴を打たれているからなのだろう。 抗てんかん薬だとは、後から知った。 CTを撮ったあとに、「このあと入院になりますが、お子さんもう一人お連れになりますか?一人だけ会えないまま、となると後でかわいそうなので」と言われ、夫は一旦息子を迎えに行った。 娘と二人、長い廊下で待機する。 娘のトイレが気になった。「大丈夫?」と尋ねると行きたい、と。 ナースコールを押し、看護師さんに「娘がトイレに行きたいそうなんです」とお願いし

          #04 待ち時間。娘の気持ち。

          この服で救急車に乗れるか?乗ってみて思ったこと

          遠くから救急車のサイレンが聞こえる。止まる。 意識は、あった。 何人もの人が、「せーの!」「せーの!」と呼吸を合わせながら私の身体をストレッチャーに乗せていく。「ママしんじゃうの?」娘の声もずっと耳元で聞こえる。一緒に乗り込んでいるようだ。 おそらく、スマホはここ、と指で示して取り出してもらったのだろう。電話番号を伝えたのか、履歴から呼び出したのか、救急隊員の方は夫に電話してくれた。 救急車の中で夫と電話した。 倒れちゃったよ、ごめんよ。娘が怖がっているから早く来て

          この服で救急車に乗れるか?乗ってみて思ったこと

          #01 ママ、しんじゃうの?

          頭にホチキスが何十本もぶっ刺さっている。でも、幸せだ。だって生きている。考えて感じたことを言葉に出来る。 *** 入院中、ノートに書き殴ったこと。 あのとき体験したこと、考えたことを残しておこう。そう思えたことは確実に入院中の私を救った。 2021年の年末に、脳腫瘍(髄膜種)で3週間ほど入院した。 家族は、夫と子ども二人、小2と年中。何となく頭痛は続いていたが、市販薬を飲めば収まっていた。まさか、だ。 幼稚園の迎えの帰り、スーパーに寄った。もち米を探して探していた

          #01 ママ、しんじゃうの?

          00 予兆 娘は命の恩人

          今思えば、サインは出ていた。 頭痛持ちではないのに、1週間ほど頭の痛さと重さが続いた。 しゃがんだり、椅子から立ち上がったりするとズン…と響く。変だなとは感じていた。頭が痛くなるのは、PMSの時が主だけど生理は終わったばかり。 12月2日。 木曜日に幼稚園で親のサークルの集まりがあった。娘が「行きたくない」というのにかこつけて熱があると連絡し、自分も休むことにした。行けるテンションじゃなかった。 「病院行くとか、何か前進させなよ」 夫は言うが、頭が痛いってだけでいき

          00 予兆 娘は命の恩人

          助走

          ずっと眠らせていたアカウントで入院記録をまとめようと思い至ったものの、既に三週間ほど経っている。 とりあえず、なんでもよいからテキストを打つ。やる気はやり始めたら出るということ。 *** 一週間前にあまりにも身体の疲れが抜けず、肩がガッチガチだったのでマッサージを予約した。 私にとって、マッサージはちょっとした鬼門である。 髄膜種で倒れた日の朝も、マッサージを受けたからだ。頭痛が続いてどうにかしたいと思い施術を受けたのだった。それが呼び水となったか気になったので主治

          「アンメット〜ある脳外科医の日記〜」脳外科で開頭手術を受けた私が今、夢中なドラマ

          毎週月曜夜10時、ドラマ「アンメット〜ある脳外科医の日記〜」が面白い。 演技派揃いの俳優たち。映画のような質感の映像。セリフや音はリアル、息づかいまでわかりそうな“間”がぜいたくだ。目や手のアップが語りかけてくるので目を離せない。こんなに集中してドラマを見るのは久しぶりだ。 オープニングの「縫い目」が流れ出すと、アンメットの世界に引き込まれる。あまりにも素晴らしい楽曲とOP映像に生まれて初めてYouTubeにコメントを書いてきた。 そう、私の頭にも“縫い目”がある。

          「アンメット〜ある脳外科医の日記〜」脳外科で開頭手術を受けた私が今、夢中なドラマ