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まさかの心筋梗塞その14

入院生活12日目。 朝は曇っていて朝日が見えなかった。 残念だなあ、と思っていた午前6時。 回診です~、採血しますね。 って、朝6時から血を抜かれる人はなかなかいないよね~と思いつつ、ほぼ毎日のように血を抜かれておるな、と気が付いた。 まあ、入院患者なのでそんなもんかな、とも思う。
朝食前に顔を洗いに洗面台へ行ったら、天使の階段が掛かっていたので、すかさず写真を撮る。 7階の窓から撮ると空と地面のバランスが違う写真が撮れた。
9時半にN先生の回診。 血液の値が落ち着いていること、リハビリでの心臓の状態も安定していることから判断して、明日の午後に退院にしましょう。 退院後の生活や栄養に関しての指導は明日実施するので、時間と場所は明日指示しますね、との事。 明日退院なので、今日から全フロア一人で歩いて良いですよ、と許可が下りる。 さっそく歩き回ろうかと思ったが、午前中は特に予定がなく、本を読んでいたら薬剤師の先生がやってきた。 退院後の薬の話かと思ったらまさかの世間話。 自分の職場の事をよくご存知のようで、しばらく話をする。 酒の話になったので飲んでもいいのか聞くと、ビールなら350缶1本、日本酒なら1合くらいなら問題ないんじゃないかな、という答え。 以前の自分なら、おおそれは少なすぎる・・・と泣くところだが、今の自分では自分の体に自信を無くしているので、飲めるだけラッキー、と思えた。 これが退院後のひとつ大事な指針となる。
話が終わって先生が帰った後は面談室で読書の続き。 星新一のショートショート「おのぞみの結末」面白かった。
昼食中に知り合いの方からメッセージ。 1階の整形外科を受診して会計待ちなんだけど会える?もちろんです、降りて行きます、と返事をした。 入院後初めて一人でエレベーターに乗る。 1階の受付の所でしばらく話をする。 自分よりかなり年上の方だが、一緒に街づくりのボランティアをやったりする仲なので、話ができて嬉しい。 あんなに元気だったのに心筋梗塞になるなんて信じられない!と心底心配していただいている気持ちが伝わってくる。 仲間のみんなに連絡したらみんな心配していたよ、しっかり治してね、といわれ嬉しくて涙が出そうだった。 
14時30分からリハビリ開始。 明日退院が決まったようなので、今日はのんびりやりましょう、と全てにおいてゆっくりのんびりだった。 リハビリの後も本を読んだり、クロスワードをやったりして過ごした。
18時半にカミさんが来て、明日の退院のスケジュールを相談して、持って来て欲しいものを伝える。 20時15分にカミさんは帰った。

 今日の昼に話をして自分の気持ちを外から見ることができた。 ずっと病室にいて気が付いていなかったけど、自分の気持ちはかなり落ち込んでいたんだ。 今までそこそこ頑丈だった自分の体の中心部でもある心臓が止まりそうになってしまった事に、身体のダメージ以上の心のダメージを負っている、という事に気が付いた。 ものすごく辛い思いをした時は心が壊れないように鈍感になる、と何かで読んだ記憶があったが、これがそうなんだ、とその時実感した。 まずい、このままでは立ち直るのに時間がかかりすぎる、とも思った。 こうなったらケツをまくって受け入れるしかない。 開き直るしかないぞ。 この心臓はもう元通りにはならないと言われた。 それもショックだった。 でも仕方ない。 なっちゃったものはしょうがない。 今までと同じにならないなら、違う方法で楽しみを見つけないと。 これまでと同じ生き方をしていたら同じ症状になって次は助からないかもしれない。 それなら違う生き方に変えるしかない。 結論が出た。 そうしよう。 嫌な事は避けられるなら避けよう。 楽しい事を多く見つけよう。 多くのものは欲しがらないようにしよう。 シンプルに。 単純にいこう。 退院後の目標が見えたとたんに、明日が待ち遠しくなった。 退院して生きていこうと思った。 朝見た「天使の階段」を思い出していた。

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